2014年1月8日水曜日

バルカン超特急 (1938)

ふだん、まとまって2時間テレビの前にいることがなく、もちろん映画館に行くこともない、中途半端な映画ファンにとって、年末年始でまとまって休みがあるときは、まとめて気になっていた映画を見るチャンスなのです。

そんなわけで、去年とかは黒澤明監督作品を集中的に見たりしていたのですが、いくら普段よりも時間があるとは言っても、見れる本数には限りがある。なかなか、全部を楽しむわけにはいかないものです。

今年はサスペンスというテーマでいろいろ見たのですが、結局この手の映画ではヒッチコックに原点回帰するしかなく、昔を懐かしむただのおじさんになってしまう自分を発見する毎日なのでした。

ヒッチコック作品は、1920年代から1970年代まで、全部で50本ほどあるわけですが、当然一番古いのは無声映画であり、戦前のものはいかにも古い映画という感じで、作品としては重要といわれていてもなかなか手を出しにくい。

本当は、ヒッチコック自ら作品を語る「映画術」の本を片手に、最初から順番にすべてを見る事ができると楽しいのですが、どうしても円熟の戦後のカラー作品群に目がいきがち。ブルーレイで出ているものも、新しいものだけに限られます。

ただし、多少の低画質にがまんさえすれば、DVDでほとんど作品が揃うというのは、ファンにとっては嬉しいところ。特に古いもので、著作権の消滅したものについては、中には10作品で2000円弱という激安ボックスもあったりします。

そこで、戦前のイギリス時代の代表作を一つと考えると、「暗殺者の家」か「バルカン超特急」のどちらかというところかなと。「暗殺者の家」は、自ら「知り過ぎた男」として後年リメイクしているので、ヒッチコックはもっといいものが撮れると考えていたわけで、ここでは「バルカン超特急」を選びたいと思います。

「バルカン超特急」は、原題は''The Lady Vanished''で、そのまま訳すと「婦人が消えた」というところ。1979年にリメイクされていて、2013年にもイギリスでTVドラマが作られていたりします。邦題に超という文字が入っているのは、新幹線を意識してのことでしょうか。

内容はまさに原題のとおりで、列車の中で乗っていたはずの婦人が忽然と姿を消すというミステリー。主人公の女性が、確かに会話をしたはずなのに、列車に乗っているすべての人が、そんな婦人は見ていないと証言するのです。

列車は密室のバリエーションで、そこから生まれてくるサスペンスに、ロマンスやアクションなどがてんこ盛りになって、90分間見てるものを飽きさせません。ヒッチコックの得意とする映画作りが、一番最初に見事に成功をおさめた作品ではないでしょうか。

リメイクに限らず、その後この手の作品は山ほど登場していますので、今となっては古めかしさを感じるのはしかたがありません。それでも、十分に楽しめる作品であることは間違いなく、一生に一度はみるべき映画の一つに数えたいと思います。

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