関節リウマチのレントゲンで確認できる変化は、古典的にすでに分類されており、現在でも大まかには病期を考える上で利用されています。
当然、初めはまったく変化の認めないわけですが、関節炎がある程度持続すると関節内の骨の表面の軟骨が傷んできます。そのため、レントゲン写真では写らない軟骨の厚みが減る事で、関節の隙間が狭く見えるようになります。
中年以降であれば(あるいは、よほど負担をかけて使ってきた関節の場合も)、加齢性に軟骨が磨り減ってくることは普通に起こっていますので、リウマチによるものなのか、加齢によるものなのかを厳密に判別することは難しい。
さらに進むと、関節内の増殖したに滑膜炎が骨の表面を削り始めるため、レントゲン写真では凸凹した感じが確認できるようになります。そして骨内にパンヌスと呼ばれる滑膜炎組織が入り込んでいくため、穴があいたような透けた部分が見えてきます。
これらの部分は、当然構造的に脆弱ですから、ちょっとした負担がかかったときに、卵の殻を壊すように潰れたりしやすいために、最終的に形が崩れてしまうことで変形が進行するわけです。
骨が崩れるということは、ある種の骨折みたいなもので、骨癒合しようとする働きが起こってくると関節が固まっていきます。このような状態を関節の強直(きょうちょく)と呼びますが、動かせなくなるため機能的な障害となる一方、痛みはほとんどありません。
しかし、中には崩れた骨がどんどん細かくなって癒合せずに、むしろ吸収されてしまうことがあり、この場合には関節部分でどんどん骨が無くなり不安定が強くなっていきます。機能傷害も痛みもより高度で、いわゆるムチランス型と呼ばれます。
これらの変化は、複数の関節に同時に起こっているわけですが、どこまで進んでいるかはバラバラで、軽いところもあれば、かなり進行した所も混在していることが普通です。
この時期になると、加齢性変化の場合は増殖性の変化が中心で、むしろよけいな骨の凸凹が増えていることが多かったり、関節表面がむしろ硬化してより白く見えたりするために、直感的にリウマチとは違うことが判断できます。
膝のような大きな関節では、関節単独のレントゲン変化が機能的な評価に直結しますが、手の場合は複数の関節の複合的な動きが機能につながるので、一つ一つの関節の変化よりも、変化のある関節の数のほうが問題になります。
そこで、実際の臨床の現場では、レントゲン変化の程度と、それを認める箇所をカウントして評価するという方法も利用されているわけです。
生物学的製剤が使われるようになって、またメソトレキセートの増量が可能になってからは、病気を押さえ込む事がずいぶんと可能になりました。そうすると、これらのレントゲン上の変化を見る機会は、かなり減少したと言えます。
もちろん、残念ながら治療効果がでない患者さんもいますので、忘れてはいけないことなのですが、大多数の患者さんではレントゲン検査の意義は少なくなったということは間違いありません。
今は、画像検査では、初期の滑膜炎をしかり発見する事が重視されますので、MRI検査や超音波検査の方が、より重要な情報を提供してくれると言えます。レントゲン検査は、むしろ肺などの合併症のチェックなどに便利でしょう。
時代とともに治療学を中心とした臨床リウマチ学が大きく変化した事は、診断にも大きな変化をもたらしたわけで、レントゲン検査の意義もだいぶ変化してきたということです。