元々は小説が原作で、架空の法律に縛られる現代日本が舞台。言ってみれば、いわゆるパラレルワールドを描いた話。実写化した映画版を監督したのは佐藤信介で、今時珍しくテレビ出身ではなく、最近では「GANTZ」の監督で有名になりました。
この映画に入り込めるかどうかは、最初の関門として、このストーリーの根底にある設定を理解できるかにかかっています。小説をじっくりと読むのと違って、約2時間の映画の中で、この部分を理解できなければ、ほぼ荒唐無稽なアクション映画の域を脱することができません。
1988年に、悪質なメディアを規制するためにメディア規正法という法律が可決されます。検閲と言う名の下に、本を代表とするさまざまなメディアが監視され、排除されます。監視をするメディア良化隊は武装し、どんどん強権を発動するのです。
図書館は、メディア規制に反対し、図書隊を組織して対抗するようになります。図書隊は本の収集の目的で、規制対象となった図書も買い取ることができ、図書館内ではあらゆる図書を収集し閲覧の提供を続けるのです。
図書隊も武装して、メディア良化隊に対抗するのですが、図書隊は専守防衛が目的で、武器の使用は原則として図書館の敷地内のみで、殺傷しないことを基本としている。対するメディア良化隊は、目的のためには手段は選ばず、相手を武器によって死ぬこともいとわない。
・・・まぁ、何と言うか、日本のナチス化という発想なんでしょうか。昨年のドタバタの特定秘密法案の問題などを目の当たりにすると、あながちありえない話ではないのかもしれません。また、総理大臣をはじめとする閣僚たちの靖国神社参拝なども、この物語が出てきた下地にあるのかもしれません。
映画では最初の30分間程度までが、この状況と登場人物の説明に費やされるわけですが、こればかりはしかたがない。法律の導入については、多少文字説明を使用し、あとは主人公が図書隊に入隊する過程を使って、比較的だらけずに見せていました。
主人公(榮倉奈々)の成長の物語としてみれば、下手な恋愛ドラマ的な要素はかなり排除されていて、うまくできているように思います。教官の岡田准一のアクションも、相変わらず切れがよく、かっこいい。ただし、全体での戦闘場面のチープさは邦画の限界かもしれません。
観終わって、自分としてはいろいろな大義名分を提示されても、どうも納得いかない。ほぼ完全に軍隊といってよい状態が図書を守る・・・つまり、それは思想・表現の自由を守ることらしいのですが、武力で守るようなことが正当化されていいものか。
一
般人はこのことに無関心であるといわんばかりの表現がでてくるのですが、その無関心を関心に変えていくことが本来必要なことなのではないかと思います。映
画の中では、その役目をしているのは外部の記者の人。彼らですら、最後には「どうせ、すぐ忘れる。だから書き続ける」と・・・
映画と言う枠組みの中では、それだけのことでも考えることができるような作りだったので、及第点を挙げたいところなのですが、やはの基本的な設定に共感しかねるというところでしょうか。
☆☆☆