身体障害者福祉法というのは、おそらく元々傷痍軍人の方を救済する目的が大きかったんだろうと思います。
自分がこどもの頃、まぁ昭和40年代には、渋谷駅のガード下あたりに、軍の帽子をかぶり白い服を着た物乞いの人を見かけたものです。戦争で四肢を無くした方などが、戦後も生活に困窮していたのでしょうか。
整形外科では、肢帯不自由という身体障害を認定するための診断書を書く事が多いのですが、傷痍軍人の方のように腕が無い、足が無いというような「全廃」という状態が最も重度の障害と認定されます。
昔、不思議だったのは、人工関節置換術をした場合。たいてい、壊れた骨を切除して代替となる人工の関節を挿入するわけです。そうすると、関節切除することで関節機能は全廃したという扱いになったんです。
ということは、人工関節の手術をした方は、もうそれだけで一番高い1級の東急が取得できる。医療費については100%減免されたりするわけです。
ところが、基本的に術前よりも痛みが無くしっかり歩けていて、術後の状態は大幅に改善している。手術するんですから、そうなるのが当たり前のことではあるわけです。
何とも納得できないところがあったわけですが、その後見直されて等級はある程度下げられましたが、それでも理想的な手術の結果からすると「障害というのはどうなの?」という感じは残っていました。
1998年、和歌山カレー事件があって、一連の疑惑に身体障害者に関する詐欺も含まれていたことが明るみに出てからは、認定に対してはかなり厳しくなりましたが、根本的な認定条件は代わったわけではありません。
最近、この辺をきっちり見直すということが検討されていたようで、今年の春からは術後の状況に見合った等級で認定するということになったという知らせがありました。
場合によっては、身体障害者と認定されても実質的なメリットはほとんど無いということもありうることになります。もっとも、現実の障害から考えれば当たり前と言ってしまえばそれまでのことですが、こういうところにも医療費を減らそうという政策があるんでしょう。