2014年1月2日木曜日

ゼロ・グラビティ Gravity (2013)

年末に公開された映画。監督は、ハリポタ3のアルフォンソ・キュアロン。監督以外に製作・脚本・編集の4役をこなしています。主演女優はサンドラ・ブロック。主演というよりは助演男優に近いのが、ジョージ・クルーニー。

なんと驚くべきことに、出演者はほぼこの二人だけ。あとはスペース・シャトルのクルーが数人いますが、画面に積極的に登場することはありません。なにしろ、舞台は宇宙。そうそう登場人物がいるわけがない。

今までの映画だったらば、ヒューストンの様子と交互に切り替わるところですが、今回の映画では通信も遮断され、宇宙空間・・・無重力の世界にたった二人だけが残されるわけで、ここからのサバイバルが物語りの骨格です。

SFというのは、本来Science Fictionの略ですが、通常映画で扱われる場合は、そのほとんどがScience Fantasyであって、現実味は少ない。この映画は、実際の現代の宇宙で起こりうることを描いているわけで、Science Non-Fictionと呼びたくなる内容です。

スートン(ブロック)とコワルスキー(クルーニー)の二人は、宇宙空間でアンテナの修理を行っていました。その頃、ロシアは老朽化した人工衛星をミサイルで破壊。その破片はものすごい速さで飛び散り、他の人工衛星を巻き込んで、二人の近くに降り注いでくるわけです。

シャトルは破壊され、他のクルーは全滅。宇宙空間に孤立した二人は国際宇宙ステーション(ISS)に向かい、そこにある帰還用の宇宙船で地球に戻ろうとします。しかし、無重力空間では、簡単には移動するスピードや向きを変えることができない。

コワルスキーは、ストーンを助けるために、自らワイヤーを切断し漆黒の宇宙空間に消えていきます。ストーンは、ISSに乗り込むものの、そこもすでに破壊されており、中国の宇宙ステーションへ必死に向かうことになります。

あとはネタバレになりますので、まだ観ていない方は、ここから先は読まずに映画館に直行してください。

職業宇宙飛行士ではない女性が、そこまでできるかという基本的なプロットの疑問はないわけではありませんが、しかし十分に現実味が伝わってくるのは、脚本と演出のうまさからでしょうか。

サンドラ・ブロックは、どちらかというと若い頃はキャピキャピ系で、元気はつらつ的な役柄が多く、あまり演技はという印象は少ない。ここでは、冷静沈着な部分と、死への恐怖に苦しみあがくところ、そして死を覚悟して達観するなど、全編一人芝居とも言える映画を演じきっています。

ラストで、大気圏突入して海(湖?)に落下したあと、ストーンが陸地に立つところで映画は終了します。このあたりは、好き嫌いが出るところかもしれません。せっかく宇宙だけを舞台にして、孤独な空間でのドラマを展開してきたので、地上のシーンは無いほうがよかったのではないかという気がします。

絶望的状況からのサバイバルというシチュエーションは、映画の題材としては珍しいものではありません。特に山岳映画などでは、しばしば密室状態での生死のドラマとしていくつかの名作があります。人が宇宙に進出して、宇宙空間に舞台を移すのは必然なのかもしれません。

アカデミー賞の前哨戦となるゴールデングローブ賞では、作品賞・監督賞・主演女優賞・音楽賞の4部門にノミネート。2013年の映画のひとつとして、歴史に刻まれても不思議が無い出来栄えといっておきたいと思います。

☆☆☆☆☆