2014年9月9日火曜日

デング熱騒ぎ

医者の立場で言うのも何ですが、世の中にはまだ見た事が無い病気というのは山ほどあるもので、最近何かと話題になるデング熱という病気も、経験したことはありません。

原因は蚊を媒介とするウイルス感染症ですから、いろいろ蚊の棲息地域を消毒したり封鎖したりと関係者はさぞかし大変だろうと思いますが、完全にシャットアウトすることは難しい。

実際、わかっている発症数は近年増加傾向にあるそうで、人の動きがグローバルになって、今まで日本では稀だった病気が増えて、一般的という尺度も変わってきているわけです。

アフリカで注目されているエボラ出血熱ですら、輸入されてくるチャンスが無いとは言えない。

もっとも、リウマチ科や整形外科を専門とする立場ですから、そもそもそれらの病気を発症した患者さんが自分のもとに来院することはまずないわけですが。

それでも、どこで遭遇するかわからないわけで、こういう機会にある程度は勉強しておかないといけないわけです。

例えば、百日咳という病気。これも患者数が予防接種により激減したため、自分たちの世代の医者は直接見る事が少なくなった病気ですが、定期接種から外れた関係で増加傾向。

リウマチ患者さんでは、何かと咳を心配することが多いのですが、実は百日咳だったということが最近はあるんです。このあたりは、頭の隅にでも百日咳という病気がひっかかっていないと、ずっと悩み続けることになってしまいます。

泥などで汚れた傷に対して心配なのが破傷風。これも感染症の一種で昔はポピュラーな病気の一つでしたが、実は自分は医者になってから破傷風が発生したのを見た事も聞いた事も無い。

都会にいると、泥だらけのケガになる機会が減ったというのが、一番大きい理由かもしれませんが、正直もしも発症してもわからない可能性が高いだろうと思います。

 帯状疱疹は、けっこうよくある病気ですが、基本的には純粋に皮膚科のテリトリー。ところが、最初に激しい痛みで患者さんが病院に訪れるので、整形外科に初診する可能性がけっこう高い。

特徴的な湿疹が出現していれば、すぐに皮膚科に行くように説明できますが、そうでないと単なる神経痛として帰していることはけっこうあるかもしれません。

専門性は大事なのですが、少しでも広く浅くでも様々な病気の知識を持っていることは、医者と呼ばれる上で必須条件であることは肝に銘じておかないといけません。