警視庁公安部には、公安総務課と公安第一課~第4課、外事第一課~第四課とサイバー攻撃対策センター(公安機動捜査隊)が実在します。外事第一課はロシアと東ヨーロッパ、第二課は主として中国を中心としたアジア、第三課は北朝鮮を中心としたアジアを担当。そして、第四課は国際テロリストと中東のスパイに関連した任務をしている。
このドラマは麻生幾による小説が原作で、多くの作品で定評がある古沢良太が脚本を担当してNHKが実写化しました。警視庁公安部外事第四課が舞台となっていて、第一~第三課を「表」、そして第四課は「裏」という扱いになっていて、特に身分を隠し秘匿性の高い任務に就いています。
政府から日本でテロが起こるはずが無いと思われ、公安の中でも外事はCIAの下請け仕事ばかりをしていると陰口を言われています。しかし日本で「対テロ国際会議」が行われることになり、CIAから「FISH」と呼ばれている謎のテロリストが日本に潜入しているという情報が寄せられました。
所轄刑事の松沢陽菜(尾野真千子)は、突然外事第四課へ研修のため移動辞令を受けます。彼女の教育担当になった住本健司(渡部篤郎)は、平然と冷酷な手段に手を出すような人物。松沢は、外事のやり方にしだいに疑問を感じていくのです。
テロリストと関りある某国外交官が接触したのは、資金繰りに困っている小さな町工場でした。社長の谷田は、爆発物探知機を開発していたのですが、それを手に入れることが目的でした。しかし、取引は阻止したものの、外交官は何者かに殺されてしまいます。
住本は、松沢に下村愛子(石田ゆり子)を協力者とするように命じます。下村は松沢が以前交通事故の処理で関わった女性で、外交官が出入りしていたレストランのイタリア人オーナーが通う理髪店を営んでいました。
愛子に危険を冒してイタリア人から情報を取ってくるように仕向ける住本に、松沢はしだいに人として許せない思いを強くしますが、松沢自身も次第に外事のやり方に知らず知らずのうちに染まっていくのでした。
現実の公安警察がどのような活動をしているのかは、一般人には隠されていてまったくわからない。原作もどこまで知って書かれたかは不明ですが、まったく根も葉もない噂だけではないのかもしれません。そうだとするととても怖い感じがしますが、逆に知らないから我々は呑気に平和を享受できるのかもしれません。
それにしても、ストーリーとしてはよくできていて、住本の協力者に対する思いや、愛子が協力してしまう背景などもしっかり描かれています。当然、政治的な思惑も絡んでくるわけですが、巨大な組織の中で外事警察といえども所詮コマにすぎないというのは辛いところです。
ドラマは好評だったようで、古沢良太の脚本、ドラマにも携わったNHKの堀切園健太郎の監督により2012年には劇場版も制作されています。