年末年始診療 12月29日~1月5日は休診します

年内は12月28日(土)まで、年始は1月6日(月)から通常診療を行います

2024年9月14日土曜日

ダブルフェイス (2012)

香港映画「インファナル・アフェア(2002」を原案とした、TBSとWOWWOWの共同製作によるスペシャル・ドラマで、2回の2時間枠で前編「潜入捜査」、後編「偽装警察」が放送されました。

いわゆる警察物とは一線を画する内容で、「海猿」シリーズの羽住英一郎が監督、「フラガール」の羽原大介が脚本、音楽は「SP 警視庁警備部警護課第四係」の菅野佑悟が担当しました。

森屋純(西島秀俊)は、織田大成(小日向文世)が率いる暴力団織田組の若頭補佐ですが、実は神奈川県警の警部補で、小野寺警視正(角野卓造)の命を受けて6年前から織田組に潜入していました。一方、神奈川県警刑事部の高山亮介警部(香川照之)は、もともと織田に拾われた恩義により織田組に情報を流すために警察官になっていたのです。

織田組の薬物売買の大きな取引で、場所や日時を小野寺に伝える森屋。そして高山は捜査状況を逐一織田に流すことで、取引に失敗した織田と一味を壊滅できなかった小野寺は、それぞれ内部に情報提供者がいることに気がつきます。

森屋は長年の潜入捜査で、警察に戻れるのか、そしていつ正体がばれて抹殺されるのかという不安から、次第に本当の自分の「顔」を失いつつあったのです。そして、偶然知り合った精神科医の西田奈緒子(和久井映見)に、心の不安を相談するようになっていました。

しかし、織田組によって小野寺が惨殺されます。唯一の自分の本来の姿を知っていて、警察官に戻すことができる小野寺を失ったことに森屋は深い絶望を感じるのでした。しかし偶然に、織田組しか知らないはずの書類を高山が持っていることを発見した森屋は、高山こそが警察の裏切り者であることを確信します。

織田は、国会議員の娘で奔放な生活を送る万里(蒼井優)に近づいて薬物中毒にしてこちらの役に立つようにしろと高山に命令します。しかし、万里の面倒を見ているうちに、高山もまた自分の本当の「顔」を失っていることに気がつくのでした。

森屋は高山にすべてを自白させ自分の本当の姿に戻ろうとするのですが、そこに待っていたのは・・・

それぞれが2つの顔を持ち、しだいにどちらが本当の自分なのかわからなくなり苦悩するという内容。そして、結末は・・・まったく救いの無いものなので、見終わっても気持ちが暗くなるだけです。登場人物は、誰一人として幸せにはならないという、かなり割り切った内容です。

それが好きな人はどうぞ、という感じなのですが、やはりどこかにホッとする部分は残してほしかった。どのような立場であっても、潜入者は心的・肉体的な重荷を背負うだけということを言いたいのだと思いますが、見ているものの気持ちに寄り添う部分が少しでも無いと共感は得られにくいように思います。

西島・香川という組み合わせの作品は他にもありますがこれが初共演。どうしてもこの二人が出てくると明るい話にはなりません。ただし、二人ともさすがに名優ですから、暗さは倍増されます。

小日向文世はコミカルな役、まじめな役も実にうまくこなす俳優さんですが、今回のような怖い役も完璧。角野卓三は、ある意味織田と合わせ鏡のような存在の怖い役なのは珍しいかもしれません。