テレビ朝日の2時間枠のスペシャル・ドラマ。「あぶない刑事」の大川俊道が脚本、「相棒」シリーズの演出をした和泉聖治が監督です。
警視庁IR分析室は架空の組織で、防犯カメラやGPS追跡などの情報分析を専門に行います。場合によってはハッキングも行い、多くのデジタル・データを解析して捜査に役立たせる捜査一課の「下請け」みたいな位置づけ。
主任の深町(沢村一樹)がのんびり休憩していると、部下の泉本(伊藤歩)、朝倉(小林涼子)らがGPSと防犯カメラで、深町の位置と何をしているのか特定して、早く一課長と連絡を取るように催促します。
一課長に呼び出されたのは、建築会社社長の東金が射殺された事件に関することでした。唯一の目撃者であるタクシー運転手の小田切(宮川一朗太)は、妻を探してくれたら証言するというのですが、その妻千春は3年前に沼津で車ごと埠頭から転落し死亡していたのです。
小田切は東京に出てきていて、最近死んだはずの妻を目撃したと言うのです。千春とよく似た女性を探して、小田切の見間違えを証明するというのが深町への任務でした。小田切千春、旧姓鈴木千春の過去を追うために、沼津、諏訪、滋賀と出かけていくと、小さいころに鈴木千春と仲が良かった若林明日香(前田亜季)という女性を発見します。
明日香の父親は、5年前にベトナムでナイトクラブの女性を殺した疑いが持たれていて、事件の直後に自殺していました。その時の犯人を決定づける証言をしていたのが小田切であり、東金も何らかの関与があったことがわかってきます。
一方。捜査一課はベトナムで亡くなった女性の兄が日本にいて東金のもとで働いていたことをつきとめ、彼が犯人と考えられたため、一課長は深町には依頼した仕事はもう必要ないと言うのでした。しかし、深町は多くの疑惑が出てきた以上、今更手を下ろすわけにはいきません。
そして、小田切と結婚したのは千春になり切った明日香、沼津で事故死したのは本当の鈴木千春だったと考えるのでした。住民票から明日香の現住所を割り出した深町は、直接明日香に会いに行くのです。捜査一課もベトナム人の兄をついに逮捕するのですが、事件はまだ終わっていませんでした。
いわゆる推理ドラマとしては、まぁまぁよくできている内容。約100分の時間の中で、それなりに真犯人を追い詰めていきます。ただし、IR分析というメイン・テーマについては、あまり生かされているとはいえません。
結局、関係者への聞き込みなどにより地道に証拠を集めていくところは、通常の刑事ドラマと大差ない。IR分析は、最初の主任の位置を特定するところで発揮されていますが、それ以外は最近のドラマならどれでも普通に取り入れているところです。
視聴率がよければ、連続ドラマ化も視野にあったかもしれませんが、結局スペシャル一発で終わったところからして、製作サイドもそれほどうまくいったとは思わなかったのかもしれません。