2024年9月6日金曜日

刑事ゆがみ (2017)

いわゆる警察物、あるいは刑事物と呼ばれるストーリーは、どうも単純に映画にするのは難しいのか、映画化されるのはどちらかというとキャラクターが際立つ悪人が主役の事が多いようです。警察を主役にすると、犯罪が起こる、警察が捜査を開始する、犯人が判明する、そして最後に大立ち回りがあって謎が解き明かされるみたいないつも同じ流れになってしまいがち。

となると、裏に全体を貫く謎を小出しにしながら、連続ドラマとして成立させた方が面白味があるというものです。とは言っても、以前は地上波テレビ局も予算がたくさんあって、壮大な設定の警察物を作ることができましたが、昨今はなかなか難しそう。制約が少ないNetflixやWOWWOWといった、配信ドラマ勢に良質のドラマをもってかれることが多くなりました。

これは井浦秀夫によるマンガが原作でフジテレビがドラマ化しました。二人の対照的な刑事が主役の、いわゆるバディ物で、いいかげんで違法捜査も厭わない弓神適当 -ゆがみゆきまさ- を浅野忠信、生真面目で正義感が強い羽生虎夫を神木隆之介が演じる凸凹コンビの活躍を描きます。

当然、こういうコンビですから、自然と笑いを誘う要素もありますが、事件の大小はあっても、毎回1話完結で事件を解決して進むのが基本。ただし、回を追うごとに少しづつ明らかになっていくのが、弓神が過去に関わった黒歴史で、全10話の最後の2話は特にこれの解明が中心となっています。

それは「ロイコ事件」と呼ばれているもので、7年前に夫婦が殺害され、犯人とされた小説家の横島(オダギリジョー)が焼身自殺したもの。横道が自分の小説になぞった連続殺人を行ったと言われ、事件を目撃したショックで夫婦の一人娘は記憶喪失となり、失語症になっていました。弓神は、その一人娘、氷川和美(山本美月)をずっと面倒を見ていて、コンピューター操作にたけていることから、しばしばハッキングなどにより弓神の捜査に協力していました。

ある日、横道の別の小説に酷似した殺人事件が発生し、死んだはずの横道が再び小説を現実のものとしようとしているとの疑いが生じます。そして、あらためてロイコ事件の調書を調べると、不自然な点が見つかるのでした。そして、その調書を作成したのは弓神だったのです。

ハードボイルドな浅野忠信が、実に楽しそうにいい加減な人物を演じているのが目新しい。神木隆之介も、まさに刑事然としているのもあまり見ない役柄です。オダギリジョーは、いつもの影があるはまり役。山本美月は声に出すセリフが基本的にありませんので、表情だけの演技というのも面白いところです。

謎の大きさとしては、それほど大々的なものではありませんが、バディ物としてはかなり極端に違うキャラクター設定が、さすがにマンガ原作と思わせ、それなりに興味深く見ることができる作品になっています。