金城一紀は、小説家であり脚本家で、その作品には深く掘り下げられた背景やキャラクター造形があるため、一筋縄ではいかないすごみがあるのです。メディアで最初に注目されたのは行定勲監督・窪塚洋介主演の「GO (2001)」で、自分の出自に関係した在日韓国人の高校生のやり場のない怒りが描かれました。
そして、一般に優れたストーリー・メーカーと認知されたのが、2007年に始まった「SP 警視庁警備部警護課第四係」のシリーズです。過去に犯罪に巻き込まれたことで、危険を察知する異常な感覚を持つようになった主人公を中心として、国家転覆に及ぶ犯罪にまで至る壮大なストーリーが展開されました。
次に着手し原案・脚本を手掛けたのが、テレビ朝日で放送された「BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係」です。ここでも主人公の刑事、石川安吾(小栗旬)は特殊能力を持っています。捜査中に頭部に銃撃された石川は、頭蓋内に残った銃弾により、死者と会話ができるようになってしまいます。
殺人事件が起こると、殺された被害者が現れ、石川に無念を晴らしてくれるよう話しかけてくる。石川は、最初は何かの妄想かと思っていましたが、次第に犯人を検挙するために違法な捜査方法にも手を染めていくのです。
石川とコンビを組む立花(青木崇高)、班長の市倉(遠藤憲一)らは、石川の動きを何とかサポートしながら見守るしかありませんでした。男勝りの検視官の比嘉ミカ(波留)は、医学者にもかかわらず石川の特殊な能力も少しずつ理解し、しだいに脳への負担が増大していくことを危惧するのでした。
連続ドラマの最終回は衝撃的です。殺すためだけにこどもを誘拐した安藤(大森南朋)を、殺されたこどもの助けもあって犯人と断定した石川でしたが、どうしても証拠がつかめない。そんな石川に、安藤は平然と「自分は絶対悪で、中途半端な正義をかざす君は勝てない」というのでした。
ここで、初めてタイトルの意味が明示されます。『border (境界)』とは正義と悪の境界であり、いつでもどちら側にでもなれ、実はその差は意外と少ないということ。安藤に勝つためには、その境界を突破して悪の側に行かない限り無理だと悟った石川はついに・・・
その唐突で衝撃的な終わり方は、連続ドラマとしてはあり得ない。何と、ストーリーの完結が図られるのは連続ドラマから3年後。スペシャル・ドラマ「BORDER ~贖罪」として,真の最終回が放送されるという実に手のこんだ仕掛けがありました。
もう、10年前のドラマですから、ぶっちゃけちゃいます・・・あ~、いや、まだ見てない人がいるかもしれないから、ここでネタバレは恨まれるかも・・・
ともかくもスペシャルは、おそらく連続ドラマから続けて収録されたのではないかと思います。とにかくいろいろあって死んだ安藤が、石川のまわりにまとわりついて、「ようこそ、こっちの世界へ」とかなんとか言っているわけで、善と悪の境界で葛藤を続ける石川の導き出す答えや如何に!! というところなんで、絶対全部見ないと損をします。