日本の国家警察の総本山は警察庁。そのトップに君臨するのは警察庁長官で、内閣総理大臣の承認のもと、国家公安委員会が任命します。警視庁(MPD)は東京都の警察のことで、警視庁のトップの警視総監は、警察庁長官より位は下になります。
警視庁には主として事務作業をする総務部、警務部以外に、実質的な警察活動をする部署が交通部、警備部、地域部、公安部、刑事部、生活安全部、組織犯罪対策部などが設置されています。よくドラマに登場するSATは警備部に所属する特殊急襲部隊です。一方、SITは刑事部捜査第一課に所属する特殊事件捜査係のこと。
公安警察として知られるのは、警察庁警備局公安課と警視庁公安部があります。警察庁警備局公安課は、その前身は戦前・戦中に「特高」として市民に恐れられた、いわゆる秘密警察みたいなもの。公共の安全・秩序を維持することが目的で、主として国家体制を揺るがす可能性がある事案に対処するのが主な活動となっています。その性質上、捜査は秘密裏に行われることがほとんどで、時には「違法」な手段も用いるとも言われています。
例えば「SPEC」は警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係というのが舞台になっていますが、実際には公安第四課までしかないので架空の部署になります。公安機動捜査隊は実際に存在していて、主にテロ事件の初動捜査や特殊な鑑識活動を行う公安部の執行部隊と位置付けられています。
「CRISIS」は、「SP」、「BORDER」に続く金城一紀が自ら原案・脚本を担当したフジテレビの連続ドラマ。初回の冒頭、約20分間の「Episode 0」というべき事件で公安機動捜査隊の目的、登場人物のキャラクターが視覚的に見事に描かれています。
警察庁警備局長の鍛冶大輝(長塚京三)は、通常の方法では対処できないテロ事案に対して公安機動捜査隊を創設しました。新幹線に乗った大臣に対する爆破テロの情報があり、特捜班班長・吉永三成(田中哲司)の指揮でメンバーは新幹線に乗り込みます。
ターゲットの写真を手に入れたサイバー分析担当の大山玲(新木優子)は、すぐに各人の携帯に情報を回します。無口でストイックな田丸三郎(西島秀俊)は、ターゲットを確認し爆弾を確保します。樫井勇輔(野間口徹)は、すぐさま匂いから爆弾の種類を特定し解体しました。
吉永がターゲットを取り調べ、もう一人仲間がいることが判明。大山がターゲットの携帯を解析し、頻繁に連絡を取り合う相手に吉永が電話をかけます。それに反応した人物を確認した稲見朗(小栗旬)は、相手を取り押さえますが持っていた時限爆弾はカウントダウンを始めていました。
新幹線の位置を正確に把握していた稲見は、タイミングを見計らって緊急停車ボタンを押し、川にかかった鉄橋で停車した車両から、犯人と爆弾と共に川に飛び込むのでした。警視庁公安総務課長の青沼祐光(飯田基佑)は、鍛冶に特捜班の行動は規格外だと言いますが、鍛冶は規格外の事件には規格外の彼らが必要なのだと説明して笑うのでした。
この事件を起こしたのは新興宗教集団で、田丸も関係性がある公安から送り込まれた人物とその妻、そして稲見の自衛隊時代の仲間が計画する国家テロとの戦いが全体を貫くテーマとして描かれ、毎回まさに手に汗握る展開となっつて目が離せません。