韓国映画「ブラインド」を日本でリメイクした作品。中国でもリメイクされており、評価が高かったことがわかります。映像制作で有名なROBOTに所属している森淳一が監督し、「るろうに剣心」などに携わった藤井清美が脚本を担当しました。
警察学校を優秀な成績で卒業したばかりの浜中なつめ(吉岡里帆)は、交通事故を起こし同乗していた弟を死なせてしまい、自分も失明してしまいました。それから3年たち、いまだ精神的に立ち直れない毎日を送っていました。
ある日、盲導犬のパルを連れて歩いていると、そばをスケートボートに乗った人物が通り過ぎ、ちょっと先で走ってきた車と接触してしまいます。なつめが駆けつけると、スケートボードの人物はすでにいなくて、止まっていた車の中から「助けて」という若い女性の声を聞くのでしたが、車は走り去ってしまいます。
なつめは警察に事故があったこと、少女が拉致されていたかもしれないと申し出ます。話を聞いた木村(田口トモロヲ)と吉野(大倉孝二)の二人の刑事は、行方不明者届に該当するような少女がいないことや、なつめが視覚障害者であることから、最初はあまり本気にしませんでした。
また、スケートボードの人物も、高校生の国崎春馬(高杉真宙)と特定できましたが、彼は車の中に少女は見ていないと証言するのです。しかし、木村はなつめの視覚以外の聴覚・嗅覚などが正確であることを知ると、捜査を始めるのでした。また春馬も、なつめの熱意に負けて協力するようになるのです。
なつめと春馬が高校生のSNSなどを利用して情報を集めると、車にいた少女は母親からネグレクトされ、風俗に落ちたレイであることがわかりました。彼女の友人らに話を聞くと、救いのQ様と呼ばれる男が浮かび、何人かが連れ出されているらしい。
しかし、春馬は何者かに車で襲われます。木村らは襲った車の持ち主を特定し住居に向かうと、当人は薬物中毒死しており、敷地内からは4人の少女の惨殺遺体が発見されるのでした。被疑者死亡で幕引きにしようとする警察でしたが、それぞれの遺体からは、耳、鼻、口、手が斬り落とされていたのです。
木村は15年前に起こった猟奇的な事件と酷似していることに気がつきます。なつめも、切り落とされた部位が法華経に由来する六根清浄に関係していると考え、成就するためにはまだ眼と頭が残っていることから、まだ事件は終わっていないと考えるのでした。
発端を目撃したのは、視覚障害により実際に物が見えない女性と、物事に無関心で見ようとしない高校生。被害者たちの周囲も、少女がいてもいなくても気にしない大人ばかりです。その中で、些細な異変から絶対に少女を救い出そうと決意するなつめは、これを解決することで自分の過去と決別し前向きになれると考えているのです。
吉岡里帆は、正直、あまり女優としての認知度が自分の中では高くないのですが、少なくともここではなかなかの好演をしています。過去の重たい出来事を抱え、春馬に死んだ弟を重ねる、その上に目が見えないというたいへん難易度の高い役柄を無難にこなしています。ただ、視覚障害者としてはちょっと甘いところがあるように見えるのはしょうがないところでしょうか。
犯人捜しそのものは主題ではありません。どんどん事件が大きくなっていき、犯人がわかってから、なつめと犯人の対決は展開としては見事。ついつい引き込まれて見入ってしまうスリルがいっぱいです。