医療系ドラマは嘘がわかってしまうのであまり見ないのですが、「TOKYO EMR」よりは現実味があり、若い医師たちの成長に主軸があるので、これはけっこう楽しめます。神がった医師が登場する「ドクターX」とか「ブラックペアン」はありえないし、「白い巨塔」のような権威主義に凝り固まったのも嘘臭くてダメ。
2008年から始まったテレビ・ドラマ「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命」は、大変人気を呼び、2009年にスペシャル・ドラマ、2010年に2ndシーズンが放送され、緊急時にヘリで駆け付ける若い救急救命医師たちの成長が描かれました。さらに2017年に彼らの下に新たな若い研修医が配属される3rdシーズンが放送され、その延長として10年間の完結編となる劇場版が2018年に公開されました。シリーズ全体の演出に関わった西浦正記が監督を務め、3rdからスタッフになった安達奈緒子が脚本を担当しています。
ヘリコプターに搭乗して現場に直接医師が出向き、救える命を一人でも増やすというドクターヘリのフライトドクターの認定を取得した藍沢耕作(山下智久)、白石恵(新垣結衣)、緋山美帆子(戸田恵梨香)、藤川一男(浅利陽介)と、1人のフライトナース・冴島はるか(比嘉愛未)は、翔陽大学附属北部病院救命救急センターで苦楽を共にしてきた仲間。彼らの下に配属されたのは、フライトドクター候補生の名取颯馬(有岡大貴)、灰谷俊平(成田凌)、横峯あかり(新木優子)と新人フライトナースの雪村双葉(馬場ふみか)です。
今回のストーリーで扱われる大きな出来事は、成田空港での旅客機着陸失敗による事故と海ほたるへのフェリーの衝突事故。例によって立て続けに大きな事故が起こるのはストーリーを進めるうえでしょうがないのですが、実は間に挟まった雪村とアルコール依存症の母親とのエピソードが重要。これまでにも藍沢や白石の家族との関係が描かれ、彼らが成長する過程で家族との関りも大きなカギになっています。
基本的には、劇場版だけを見ても楽しめるとは思いますが、主要登場人物の動きは、10年かけて積み上げてきた細かいエピソードが様々な形で反映されたもの。はっきり言って、過去のテレビ・シリーズを知っているか知らないかで、映画への没入感はかなり大きな差が出るところ。おそらく制作サイドも、ずっとファンでいてくれた人々へ一定の決着を見せることをものすごく意識したのだろうと思います。
そういう意味で、「映画」としての評価はなかなか難しい。2時間程度の一定の枠内で何らかのドラマを見せるものとしては明らかに不親切で、明らかに大河ドラマの最終回みたいなものになっています。ですから、通常の映画ファンにはあまりお勧めできないかもしれません。映画は山ピーやガッキーのファンという方向けなんですが、もっともそういう方はテレビ・シリーズもずっと見てきたとは思うので、特に問題はないのかもしれません。