原作は鶴谷香央理の漫画で、監督は「青くて痛くて脆い(2020)」の狩山俊輔、脚本は「ちゅらさん」、「ひよっこ」の岡田惠和。「メタモルフォーゼ」とは「変化」とか「変身」という意味。
高校生の佐山うらら(芦田愛菜)は、いろいろなことを気にするタイプ。自分を表に出すのが不得意で、同級生で幼馴染の河村紡(高橋恭介)が他の女の子と仲良くしていることも気になっている。うららが本屋でバイトをしていると、75歳の市野井雪(宮本信子)が表紙の絵がきれいという理由でBL(ボーイズ・ラブ)コミックを買っていきました。
うららは雪が何度か訪れるうちに会話をするようになり、他のBLコミックを貸してほしいといわれ雪の自宅にも訪問するようになります。二人は年齢を超えてともだちになり、BLの魅力で大いに盛り上がるのです。
マンガを描くことも好きなうららは、自分が描くから二人で同人誌販売会に出ようと雪を誘います。その当日、雪が腰を痛めたため、一人で販売会に行ったうららでしたが、自分の場所を開くことができずにいました。そこへ紡がやって来て、「僕はこの話好きだよ」と言って1冊購入してくれたのです。
雪は知り合いの助けで車でなんとか近くまできたところで、車が故障し立ち往生。そこへ通りかかった販売会帰りの女性が、うららのマンガに興味を示し雪が持っていた一冊を買い取ってくれました。その女性は二人が大好きなマンガの作者であるコメダ優(古川琴音)だったのです。
雪の自宅の縁側で、二人がいろいろと語り合ううちに年齢差を超えた大切な時間を過ごし、まだまだ大人になり切れない不安定な揺れる思いを抱えるうららは、しだい自分の思いを表に出すように変わっていくのです。雪はこどもの頃を思い出し、自分にもまだ挑戦できることが残っていたことに気がつき、それぞれが「メタモルフォーゼ」していく。
大袈裟な波風が立つわけではありませんが、少しずつ汐が満ち引きするような内容で、最後まで飽きずに見ることかできました。BLについては趣味じゃないのでよくわかりませんが、登場する二人にとっても、おそらく遠いところにある存在だと思います。でも、遠いからこそ、未来を見るため、過去を振り返るためのきっかけとして機能したように思います。