2024年7月16日火曜日

キャラクター (2021)

監督は永井聡。原案と脚本は長崎尚志による、いまどき珍しいマンガと関係ないオリジナル作品。主演は飛ぶ鳥を落とす勢いの菅田将暉で、脇を固めるのが小栗旬なんですが、何といってもSEKAI NO OWARIのFukaseが、初演技でサイコパスを演じるのが最大の見物です。

人気マンガ家のアシスタントをしている山城圭吾(菅田将暉)は、作画能力が高いことは誰もが認めるものの、読者を魅了するキャラクターを描けないため、自身が自立することを諦めかけていました。

アシスタントとしての最期の仕事、「幸せそうな家」のスケッチをするため夜の街に出た山城は、クラシック音楽が聞こえてくるモダンな一軒家を見つけます。スケッチをしていると、近所の家から顔を出した人に「音楽がうるさい。止めるように言ってくれ」と頼まれ、家の中に入ってしまいます。

そこで山城はが目撃したのは、食卓を囲むように椅子に縛り付けらた4人家族の惨殺遺体でした。そして、庭から出ていく犯人を目撃しますが、真壁(中村獅童)や清田(小栗旬)ら警察の取り調べでは「誰も見ていない」と証言します。

山城は憑りつかれたように事件をヒントにして、目撃した犯人の姿を主人公にしたマンガ「34(サンジュウシ)」を書き始めます。これが大人気となり、1年後には恋人の河瀨夏美(高畑充希)と結婚してタワーマンションに引っ越していました。

そして山林の中で林道から転げ落ちた車の中で、あらたに4人家族の惨殺遺体が見つかります。清田は事件の様子が「34」で描かれたものと酷似していることに気がつき、山城に話を聞きに来ます。そして、もう一人、両角(Fukase)と名乗る青年も山城に接触してくるのでした。山城は両角を見て凍り付くのでした。

基本的には犯人が分かっているサイコ・スリラーですが、犯行の動機や山城との対決、そして衝撃的な小栗旬の役回りなどの見所満載の映画。とは言っても、2時間程度の映画の中で描くには話の展開が早すぎて、それぞれの人物描写が物足りない。それぞれの「キャラクター」が特徴的なのに、ネタの掛け捨てになっているような印象です。

その結果、誰にも感情移入できないので、映画の世界に没入しにくいところがあるように思いました。ただし、Fukaseの演技そのものは初めてとは思えない注目のものです。直接的な猟奇殺人のシーンはほぼ無いのですが、十分にサイコティックな怖さが伝わってきます。

全体のコンセプトは面白いので、ネット・ドラマで5~6話くらいで、もう少し丁寧に描かれるともっと興味深く仕上がったのではないかと感じます。