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2024年1月10日水曜日

PHEVへの道 12 プリウスの歴史


プリウスはラテン語の「~に先駆けて」という意味で、トヨタは様々な思いを込めて革新的な車の名称として使っています。P、R、I、U、Sの5文字は「Presence、存在」、「Radical、革命的」、「Ideal、理想」、「Unity、調和」、「Sophisticate、洗練」というコンセプトの頭文字です。

内燃機関(エンジン)と電動機関(モーター)の両方を搭載した世界初の量産型ハイブリッド車であり、自動車業界が地球環境に目を向け、一般人にもその意識を植え付けたきっかけとなるものとして今後も歴史上に名を残すものと思われます。

90年代になって、トヨタの会社の中では未来志向の地球環境を配慮した車の開発が始まり、1995年の東京モーターショーでそのプロトタイプが初めて公開されました。そして1997年12月、「21世紀に間に合いました」というキャッチフレーズのもとハイブリッド専用車初代プリウス(10系)が発売されます。

10系は4ドア・セダン・タイプで、エンジンの排気量は1500cc、モーターと合わせた総馬力は100PS程度でした。二つの駆動方法を併せ持つTHS(Toyota Hybrid System)は、当時1桁が当たり前だったガソリン燃費を最大28km/Lという驚異的な数字に押し上げました。もっとも、これはその頃標準だった10・15モードと呼ばれる計測法によるもので、実燃費はその6割程度です。

ただ、この革新的な車に飛びつく人は多くはありませんでした。性能としてより小型車とあまり変わらないこと、THSが信頼できるものか判断がつかないこと、そして何よりも同じ車格の中で3~4割高であることなどが理由としてあげられます。

2003年9月、フル・モデル・チェンジにより二代目となる20系が発売されました。一番大きな変化はセダンからハッチバック・スタイルになり全体のサイズも大きくなったこと。システムはTHS-IIに進化し、エンジンは1500ccで同じですが、エンジン・モーター共にパワーアップし10・15モード燃費は35.4km/Lに向上しました。

THS-IIは大小さまざまな規格が登場し、既存の車種にも応用が始まります。また20系から、初期の運転支援装備が搭載されました。いろいろなグレードを用意して様々な人にアピールしたせいか、20系は大ヒットし一躍人々の注目を集めることになりました。特に、環境問題にポジティブであることをアピールしたい企業やハリウッド・セレブらが率先して使用したところが大きい。

2009年5月、人々の期待の中3代目(30系)が登場します。4ドア・ハッチバックは踏襲したものの、デザイン面でシャープになり人気に火がつくことになります。国内販売台数のトップに長期間君臨し、名実ともに「国民車」の地位を獲得しました。珍しいこととして、20系も商用車として2012年まで併売されました。

進化したTHS-IIではエンジンは1800ccと強化され、総合馬力も150PSに引き上げられました。また2009年12月には初めて電池容量を増やし充電を可能としたプラクイン・ハイブリッド車(プリウスPHV)を発売しました。ハイブリッド車は排気量増加にもかかわらず10・15モード燃費は38.0km/L、PHVは10・15モード燃費57km/L・EV最大航続距離23.4kmを実現しています。

また2011年にはワゴンタイプに拡大したプリウスα(40系プリウス)、コンパクトにしたプリウスC(発売名称はアクア)にシリーズを拡大。これまでニッケル水素電池を搭載していましたが、αには初めてより小型化したリチウムイオン電池を搭載し実用的な7人乗りも実現しています。

2015年12月、大きな期待を背負って4代目プリウス(50系)が登場しました。初めていろいろな車へ共通に利用することができるTNGA(Toyota New Global Architecture)というフラットフォームが導入され、生産コスト低減に成功しました。4WDの選択が可能になり、インテリアに豪華な仕様も加わりました。

エンジン1800cc、総合馬力160PSで、走行性能はあまり変わりはありませんが、より実走行に近いとされるJC08モード燃費が40.8km/Lに達しました。2017年2月にPHVタイプが発売され、ハイブリッドとはっきり区別できるエクステリアが用いられました。電池容量も増えEV最大航続距離は68.2kmに延びました。

しかし、他社からも続々とエコカーが発売され、既存のトヨタ車にも続々とハイブリッド・システムが搭載され選択肢が増えたこと、さらにデザインに対する不評がかなり大きく、販売台数は伸び悩みました。トヨタ社内でも、ハイブリッド車を世の中に広めるというプリウスの役割は終わったという意見が多くなり、豊田章男社長(現・会長)も「プリウスはタクシー専用車でいいんじゃないか」と述べるようになります。

しかし開発陣は「ちょっと待て」と違う意見をあげます。確かにハイブリッド車を普及させる目的はもう達成していて、ファミリーカーとして定着したプリウスは魅力を半減したことは間違いない。だったら、もう一度運転したくなる車、かっこよくて買いたくなる車として再生したいという思いから「Hybrid Reborn」というコンセプトを掲げ、5代目となる60系の開発が始まりました。

2023年1月、登場した新生プリウスは世の中をあっと驚かせます。60系の話はこの記事シリーズでさんざん書いているので省略しますが、最終的に2023年の日本カー・オブ・ザ・イヤー、そして先頃発表された北米カー・オブ・ザ・イヤーに輝いたことがすべてを語っていると思います。