2024年1月27日土曜日

PHEVへの道 24 エンジンとモーター


何十年も前に教わった物理学・・・って、とっくに錆びついた知識なんですが、例えば「エネルギー不変の法則」とは、すべてのエネルギーは消えるのではなく別のエネルギーに変化するというもの。

車の内燃機関、つまりエンジンの中で起こっていることは、ガソリンや軽油などの化石燃料を燃焼させてシリンダー内のピストンを動かし、動力を発生させるということなんですが、これは熱エネルギーが運動エネルギーに変化するということ。その結果発生するのが「仕事」という概念で、仕事量と投入された熱エネルギーの比率がエンジンの熱効率と呼ばれます。

エネルギーが不変なら、熱効率は100%になってほしいのですが、現実には50%を超えることはありません。つまり半分の熱エネルギーは別のエネルギーにはなっても、車を動かすことには使われないということ。

これは熱エネルギーが物体の分子を様々な方向へ無秩序に拡散するように動かすためで、一定方向にピストンを動かす分は与えられたエネルギーの半分にも満たないと理解すればよいようです。

一方、HEV、PHEVやBEVで用いられるモーターはどうなんでしょうか。モーターは電磁誘導の力を使って、ステーター(固定子)で発生した磁力でローター(回転子)を回すわけですが、もともと電流は一定の方向に揃って流れています。従って、投入された電気エネルギーは仕事に変換される効率が80%以上という、エンジンからすれば驚くほど高いエネルギー効率が得られます。

エンジンの中でピストンが上下する力が車軸を回転させるわけですが、車軸が動く・・・つまり車が動き出すには一定以上のトルクが必要であり、いきなり動き出すわけではありません。エンジンの規格で「最大トルクは195/4300(Nm/rpm)」などと表記されるのは、回転数4300rpm(回転数/分)で最も強いトルクが発生し、その時の力は195Nm(ニュートン・ルーター)という意味。

アクセル・ペダルを踏み込むと、エンジンへガソリンと空気がが流入・混合して爆発・燃焼により回転数が上がり、一定以上のトルクが発生すると車体が動き出すわけで、当然アクセルを踏むこととスピードが出ることにはタイム・ラグが生じます。

できるだけアクセルとスピードが比例的な関係になるために、停止していてもアイドリングというエンジンをある程度動かしておく仕組みがあるのですが、「無駄なCO2排出を抑制する」という観点で、停車するとアイドリングを停止する仕組みが普通になったことで、タイム・ラグはより顕性化したともいえます。

一方、モーターは与える電力に応じてリニアに回転数が上がる(出力が増加する)ので、少ない回転数でも大きなトルクを生じさせることができ、その力は一定です。ただし、高速回転域になると出力の延びが無くなるため、回転数が高くなってもトルクは減少してしまいます。

つまり、低速域での加速感はモーターがエンジンに勝りますが、高速ではアクセルを踏んでも思ったほど速度は上がりにくいという特性があると理解できます。スピードを上げるために、アクセルを踏んで回転数を上げても、4~5千回転くらいからは出力が伸びません。

加速性の評価として0-100km/hというのがありますが、停止状態から100km/hに達するまでの最速時間を示しています。ガソリン車では一般的には10秒以下ならまぁまぁというところですが、BEVは5秒以下のものがほとんどで、優れた加速性は歴然としています。

しかし最高速度では逆転します。モーターの場合はガソリン車のような変速器は不必要ですが、BEVではある程度のスピードが出せるように何らかの変速器を設けている場合が多く、それでも性能的には最高速度130~140km/hです。ガソリン車では180km/hくらいまでは平気で出る車が多いので、高速域ではBEVは不利と言えます。

PHEVの場合は、ほぼBEVとして走れる街中では、平均30km/h程度の速度で走ることになるので、エネルギー効率的にもきびきびした走りが期待できます。ただし、高速道路などでは、モーターは補助的に使うエンジン主体のHEVとして走行することが理にかなっているということになりそうです。