2024年1月5日金曜日

PHEVへの道 8 電気で走ることの問題点


最新の大型ガジェットとしてBEVは、最も興味を引く商品の一つで、新し物好きとしてはいつかに使ってみたい、乗ってみたい車です。しかし、BEVは時期尚早と判断してPHEVを買うことになったというのも、2023年に電気自動車推進の潮目が変わってきたことも少なからず関係しています(もちろん予算も大きい要素)。

これまでヨーロッパを中心にBEV普及がどんどん加速し、アメリカも追従するようになりました。そこへ、中国の急速な進出も手伝い、もうBEVは世界的なトレンドと言っても間違いない・・・と思っていました。

そもそも環境問題に敏感なヨーロッパでは、ずいぶん前から自動車の排出するCO2は地球に重大な影響を及ぼすものの一つとして指摘されていました。そこへ登場したのが日本のトヨタが発売したプリウスでした。「20世紀に間に合いました」というキャッチコピーと共に発売された世界初のモーターを搭載したHEVは、ガソリンを消費するエンジンの仕事量を減らすことからCO2排出量削減に効果があると考えられました。

しかし、ヨーロッパでは、トヨタに追従するのを良しとせず、ガソリンよりも燃費が格段と良い軽油を使用したディーゼル・エンジンへシフトしました。ところが、2015年に大問題が発覚します。フォルクスワーゲン社が性能を良く見せるために、データを改ざんしていたのです。インチキは他社にも波及し、ディーゼルへの信頼は失墜します。

これがヨーロッパを電気に目を向けさせることになり、かなり強引ともいえる優遇政策もあり急激にBEVが普及することになりました。その急先鋒を行くのがノルウエイで、最近まで何と新車販売の80%がBEVを占めています。ところが、そこで大事件が発生しました。それがロシアのウクライナ侵攻です。

安定世界の崩壊により、全世界規模のエネルギー危機を誘発し、電気料金の高騰を招きます。そして、ついに昨年、すべてをBEVにするというヨーロッパの方針から脱落したのがドイツ。ノルウエイでさえ、内部から「石油・ガスを輸出して自分たちだけクリーンというのは都合が良すぎる」というような批判が出で来ています。イギリスもガソリンを使う車の販売を禁止する政策を施行するはずでしたがトーンを下げざるを得ない状況です。中国やアメリカでも昨年後半、急速にBEVの在庫が増加しており問題になっています。

ここにきて急速に評価を爆上げしているのがトヨタ。一般人からすれば、なんでトヨタはBEVを発売しないのか、なんでいつまでも普及の目途が立たない水素エネルギーのことばかりやっていると批判的な目を向けていました(自分もその一人)。豊田章男社長(現・会長)が「トヨタは全部本気」とCMでぶちあげても、全然出てこないじゃないかとという気持ち。

結局、昨年後半からヨーロッパでもトヨタのHEVの販売が伸びていて、BEV一択ではなく、PHEV、HEVなどをいろいろな状況の中でうまく選択していくことが現実的であるという評価に変わったようです。ある意味トヨタの全方位戦略は、初代プリウス発売以来25年間ぶれていないわけで、ほぼエネルギー資源を自給自足できない日本だけでなく、世界でも正解の一つというように考えられるようになったということらしい。

そもそもBEVにはまだまだ未解決の問題が山積していて、ヨーロッパでのBEV推進も見切り発車でした。例えば、そもそも搭載するバッテリーを作るのに、環境負荷として無視できない膨大なCO2が発生するらしい。また、BEVが搭載するバッテーリーの重さが、道路に与える影響も多大であることがわかっています。また長年使用された後、劣化したバッテリーの処分も解決していません。

ユーザー側から見ると、やはり充電のインフラ整備には無関心ではいられません。強力にBEVを推進する中国も、北京・上海のような都会以外は整備はかなり遅れているようです。新車の3%程度しかBEVが売れていない日本はなおさらのことで、自宅での充電ができないと実用的に利用することは困難ですし、電気料金の値上がりも今後気になるところです。

実際にBEVの利用者からしばしば言われるのは、気温の問題。気温が下がれば、エアコンの暖房を利用し、場合によってはシート・ヒーターも使います。電気の消費が格段に増えるわけですが、氷点下では走行可能距離は半分近くになるといわれます。充電についても、より時間がかかり、場合によっては充電不可と言うこともありうるようです。

毎年、雪国で渋滞して立ち往生というニュースがありますが、BEVが真っ先にどうにもならなくなったというのは事実で、下手すれば命に関わることも起こりうる。最終的なレッカー移動もなかなか簡単ではないらしい。他にも、価格が高い、電池が劣化して将来の下取りが期待できないとも言われています。

やはりそう簡単にカーボン・ニュートラルというわけにはいかなそうで、今車を選ぶならHEV、できればPHEVというのが自分の中での正解という結論になりました。