自動車は高価で機能性・安全性が重視される製品ですから、一度失った信頼を回復させるのは並大抵のことではありません。巨人トヨタでさえも、グループ会社の不祥事が度々発生しています。
世間を揺るがした大事件は2000年のこと。国の監査によって三菱自動車工業の大規模なリコール隠しが判明しただけにとどまらず、2004年にもさらなるリコール隠しが発覚し、消費者の信頼は地に落ちました。しかし三菱グルーブの支援で倒産はまぬがれ、様々な企業努力によって2007年に黒字化したというもの。
しかし、2012年にエンジン不具合の不適切対応、2016年に燃費試験不正、2018年に外国人技能実習生の不正就業などの問題が続発しており、三菱自動車には企業風土として根本的な問題が潜んでいるような疑惑が払拭できません。
とは言っても、現実にそれなりに良い車を作り続けていることは否定しません。実際、今の時点でPHEVを買いたいと思ったら、国内PHEV販売台数で第1位がアウトランダー、第2位がエクリプスクロスですから、三菱を検討対象からはずすわけにはいきません。
アウトランダーは車種としては2005年からある比較的古い物ですが、PHEVが登場したのは2012年。量産型としてはプリウスに次ぐ2車種目で、SUVタイプとしては国内初です。毎月千台前後はコンスタントに販売され、2023年は年間で13395台になっています。2020年11月にガソリン車が生産終了及び2021年10月にPHEVのフルモデルチェンジを行い、現在はすべてがPHEVモデルとなっている点が注目されます。
PHEVでは人気のSUVタイプで競合車種が無かったことが人気の理由としてあげられますが、2022年にはトヨタから人気のハリヤー及びRAV4のPHEV、2021年にはレクサスからNX及びRX、さらに2023年はクラウンRSという強敵が登場しています。しかし、ある程度は三菱の優位性が続くと思われる要因は価格。500~600万円という他車よりも低い車両価格なので、唯一ライバルになりそうなのはRAV4だけ。
まずアウトランダーの諸元をチェック。大きさは、全長・全幅・全高が4710・1860・1740mm、ホイールベースは2705mm、車体重量は2010kgです。一番気になるのは燃費と電費。WLTCモードでアウトランダーは燃費は16.6km/Lで、電費は227Wh/kmです。搭載電池容量は20kWhで、1回の満充電でEV走行できる距離は87kmとなっています。
続いてRAV4の諸元を見てみましょう。全長・全幅・全高が4610・1865・1690mm、ホイールベースは2690mm、車体重量は1920kgです。WLTCモードでRAV4は燃費は22.2km/Lで、電費は155Wh/kmです。搭載電池容量は18.1kWhで、1回の満充電でEV走行できる距離は95kmとなっています。
RAV4の方が、ほんの気持ちだけ小ぶりですが、大きさとしてはほとんど同じと考えて良さそうです。しかし、燃費・電費共にトヨタの圧勝で、ここに技術力の差があることは認めざるをえない。エンジンやモーター性能の差も当然あるかもしれませんが、車体重量約100kgの違いが大きい。電池容量を増やしていますが、EV走行距離でもトヨタに負けています。つまり購入後のコストパフォーマンスはRAV4に軍配が上がります。
走りの具合はどうかというと、アウトランダーは2.4LのDOHC16バルブ4気筒エンジンで、最高出力は98/5000(kW/rpm)、最大トルクは195/4300(Nm/rpm)で、タンク容量は56L。モーターは前輪・後輪別々にあり、前/後で最大出力は85/100kW、最大トルクは255/195Nmとなっています。
RAV4は、2.5Lの直列4気筒エンジンで、最高出力は130/6000(kW/rpm)、最大トルクは219/3600(Nm/rpm)で、タンク容量は55L。こちらもモーターは前輪・後輪別々にあり、前/後で最大出力は134/40kW、最大トルクは270/121Nmとなっています。
簡単に言えばエンジンはトヨタ、モーターは三菱の勝ち。特に四駆としてオフロードを楽しみたい場合は、後輪のパワーアップを図ったアウトランダーの方が力強い印象です。しかしオンロードではアウトランダーに勝ち目はありません。ガソリン満タン・満充電で走れる距離は、アウトランダーは1025km、RAV4は1316Kmでかなり差が開きました。
安全装備や運転支援、そして室内の快適装備については、圧倒的にRAV4が優れています。アウトランダーはオプションでも選択できない機能がRAV4には多数あるので、ますます価格差を考慮しての選択ということになりそうです。外見だけならアウトランダーの方が好みかなと思いますけど、まぁ、トヨタ信者の言うことですから、三菱が大好きな方は軽く流してください。