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2024年1月29日月曜日

PHEVへの道 26 テスラ Model 3の通信簿


磁石の強さを表す磁束密度の単位はテスラ。セルビア系アメリカ人のニコラス・テスラの業績にあやかったもので、そのテスラの名前を会社名にしたのが、現在世界最大の電気自動車メーカーとして名が知られるテスラです。

技術者によって2003年に起業されたテスラに資本提供したのがイーロン・マスクで、マスクは2008年に社長に就任、2009年に自社第1号となる電気自動車ロードスターを発売しました。続いて2012年にModel S、2015年にModel Xを発表。そして2017年、量産型で価格を抑えたModel 3により人気に火が付き、2020年にクロスオーバーのModel Yが登場しています。

現在、日本で見かけることがあるのは、ほとんどがModel 3。もっともRWDタイプのベーシックな状態で、車両価格は561万3千円です。デュアルモーター搭載で、より航続距離を伸ばしたロングレンジ・モデルだと651万9千円。ボディカラーは白以外だと12万6千円~26万9千円が追加されます。

コネクテッド・カーとしてのテスラらしさを享受するためには、さらにフルセルフドライビング・ケイパビリティという追加装備が必要で、これが87万1000円。今のところ国からのCEB補助金が65万円出ますが、実用的に使おうと思うと680万円(消費税込み)くらいはかかることになりそうで、納期は2~4か月後となっています。

これらがテスラのホームページから、まるでAmazonで買い物するかのように「ポチ」っとできてしまうというのが驚きです。メンテナンスもある程度までは、ネットを介した通信で終了してしまうので、問題なく使用する分にはディーラーは必要ないことになります。それを良しとする人がいることは間違いないのですが、ひとたび問題が起こった時の安心という意味では、日本の自動車販売システムとの温度差がトラブルになるケースは少なくないようです。

それはともかく、世界的に代表的な電気自動車であることは間違いないModel 3の性能を見ていきます。

大きさは、全長・全幅・全高は4720・1850・1441mmで、セダンというタイプの自動車としては標準的な大きさで、車体重量はRWDは1765kg、ロングレンジAWDは1828kg。航続距離はRWDは573km、ロングレンジAWDは706km。0-100km/hにかかる時間はRWDが6.1sec、ロングレンジAWDは4.4sec。

公式HPでわかる主な性能はほぼこれだけ。実に控えめで質素・・・と褒めいたいところですが、いくら何でも情報量の少なさはいかがなものかと感じます。日本人が細かいことにこだわり過ぎるのか、アメリカ人がまったく気にしないのか・・・いずれにしても、このあたりも日本で販売が伸びない理由の一つになっていそうな感じ。

オーナー・マニュアルを探してたどって、追加でわかるのは少ないのですが、一つだけ「本当?」と疑いたくなったのが最小回転半径が11.7mという数字。どうやら直径の記載ミスらしく、実際は5.9m。それでもこの大きさの車としては「小回りがきかない」と一般にいわれる数字です。

あとはネットで検索。電池容量は非公表で、RWDについては、電費は123Wh/kmでさすがに優秀で、後輪駆動のモーターは最高出力は208kW、最大トルクは350Nm。急速充電は最大170kWまで可能とされています。ロングレンジAWDでは後輪駆動は同じモーターですが、さらに追加された前輪駆動用モーターは、最高出力158kW、最大トルク240Nmとなっているらしい。

単純に比較できる車があまり無いのですが、ある程度大きさが似ているので、昨年発売されたLexusのUX300eと比べてみたいと思います。

まず価格。Version Cが650万円で、装備を高めたVersion Lが705万円で、性能的にはどちらも変わりありません。大きさは全長・全幅・全高が4495・1840・1540mmで、Model 3よりも縦に短く上に長い。車体重量は1790kgでだいたい同じです。モーターはフロント駆動のみで、最高出力150kW、最大トルク300Nmですので、Model 3よりはかなり抑えめで、電費は141Wh/kmで、航続距離は512kmです。最小回転半径は5.2mで、圧倒的に小回りが利くので、取り回しは良さそう。

テスラは電気自動車の普及を牽引する第一の企業であることは間違いないのですが、心配なのは昨年から風向きが変わってきたこと。まず、販売台数は前年比37%増の180万台にもかかわらず、中国の国を挙げての電気自動車戦略に乗っかったBYD社の猛追を受け抜かれてしまいました(BYDは300万台)。

中国勢に対抗するために、値下げを余儀なくされた結果、ヨーロッパやアメリカのレンタカー会社がテスラ車の売却を始めています。これはレンタカー会社が、新車値下げと高い維持費により中古売却利益を得られなくなるためです。

予想を下回った業績により、今後も企業成長は抑制されるという見方から、年明けにテスラの株価は12%下落しています。これはさらなる値下げで中国勢と対抗することを困難にしますので、どのような魅力的な新しいモデルを投入できるかが重要なポイントになりそうです。

また今季の大寒波により、電気自動車全般に共通の弱点である、走行距離の大幅な減少や充電効率の著しい低下がアメリカでも大きな問題になっています。さらにテスラに固有の問題として、没個性というのもあります。車体がシンプルで、ドライバーが個性を表現できる部分がほとんど無いため、売れれば売れるほど全部同じという潜在的な不満が少しずつ拡大しているのです。

個人的にはトップのイーロン・マスク氏の様々なエキセントリックなエピソードも、日本ではプラスにはなっていないように感じます。安心・安全・安定が求められる自動車という高価な買い物に対して、日本人には不安要素にしかなっていないかもしれません。