2008年5月24日土曜日

国際医療派遣チーム

先日の中国の震災で、日本からも医療チームが派遣され、もっと震災地に近いところで活動したいという希望にもかかわらず、比較的離れた病院での活動しかさせてもらえない、というような報道がありました。

逆の立場で考えてみるとどうでしょうか。都筑区で震災が起きて、大量の怪我人が出て、その現場というのは、とにかく修羅場のようになっていることでしょう。てきぱきとケガの状態を判断して、あっちでできることはあっち。ここでしなくてはならないことはここ。即座に判断して行動しなければなりません。地元のことがわかっていることも大切。

そこへ言葉の通じない外国人が入ってきたらどうでしょう。右往左往です。いちいち外国人に、日本語の意味を説明しているヒマなんてありません。

横浜近辺の多くの医者は可能な限り最前線でがんばって、手薄になってしまう後方病院を外国からの助っ人が固めてくれる方が、時間的にも余裕があり実際的な感じがします。

残念ながら、自分は今までこのような災害に派遣されたことはありません。世の中には様々な災害医療チームがあります。それらの多くはボランティア的な活動をしているわけで、その勇気と行動力には敬意を払うことにやぶさかではありません。

しかし、日本の一般的な医療環境を考えると、このような行動を取ることができる医者は、かなり特殊な環境にいるわけです。

医者が急にいなくなるということは、外来がストップするということです。外来は、まだいいのですが、入院患者さんを担当していたら患者さんはどうなるのでしょうか。手術の予定はどうしましょう。医者の仕事は誰かに代わってもらうことができることもありますが、代わりようがないことも多々あります。

特に手術のように患者さんとの信頼関係に基づいて、医者個人の技術が必要とされる場合には代替はききません。たとえ、代わってもらえても、相手の医者に多大な負担を強いることになります。

以前バイトにいっていた個人病院の院長は、某団体に属していて、時々急にいなくなってしまいます。個人病院ですし、本人の行動は大変立派なのですが、唯一の常勤の医師はそのたびに、残ってすべてを一人でしなければならなくなるため、本当に大変そうでした。また、自分の後輩にもこのような活動に参加したいと希望している者がいましたが、結局あきらめました。

となると、このような活動は通常の医療業務を行っていない特殊な、ほとんどこれを専門にしているような医者しかできないのではないかと思います。さらにいうと、公的に動けるのは国立、あるいは公的機関の病院に勤務している医者に限られるのではないでしょうか。

自分も開業してクリニックをやっていると、ちょっと臨時休診をするだけでも、知らずにおいでになった患者さんがいるのではないか、わざわざ来たのに迷惑をかけてしまったのではないかと考えてしまいます。とてもとても、簡単に休めるものではありません。

今月から都筑区の災害時医療について、実効的な計画を整備していくための会議が始まりました。区役所と消防・警察、大学病院、医師会、薬剤師会、そして地区の代表の方々などが参加して、形式的なことにとらわれず、実際的な検討をしていきます。

とにかく、医師会の防災担当としては、自分の周囲で起きることについては、精一杯準備を重ねていくことに集中したいと思います。