2023年2月14日火曜日

John Eliot Gardiner / Santiago a capella (2004)

クラシック音楽の聴き方としては、実は3種類あると思うんですよね。

まず、楽器の演奏者として、あるいは指揮者としてどのように曲を作り上げるかという・・まぁ、楽しみというよりは責任を伴う勉強みたいなものが一つ目。


自分のような一般人は、作曲者を中心に聴くか、または演奏者を中心に聴くかの二択が残されています。どちらかだけというのは、かなり難しいので、実際はどちらも混在して楽しむのが現実的。

例えば、ベートーヴェンを制覇しようとして、交響曲から協奏曲、室内楽、独奏楽器と幅を広げていくわけですが、そうなるといつの間にか違う演奏者のものと聴き比べたくなってくる。

クラシックなんて楽譜通りに演奏するんだから誰がやっても同じ、と昔の自分は思っていましたはこれが間違い。独奏はもとより、オーケストラでも指揮者の考え方によって、けっこう同じ曲でも聴いた印象は変わってくるものです。

そうこうしていると、気に入った演奏家というのが見つかって来るもので、今度はその演奏家のいろいろなものを聴きたくなってくるのは当然ということになります。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集を出したピアニストは一体何人いるんでしょうか。ちょっと考えれば、名演と呼ばれるものだけでも軽く20人くらいは挙げられますが、今でも毎年数セットは増えているように思いますので、100じゃきかないかもしれません。

それはそれとして、ジョン・エリオット・ガーディナーは大好きな指揮者。自分にとってはオーケストラの面白さを再認識させてくれた恩人みたいな人ですが、本来はバロック初期の偉人、モンテヴェルディの「聖母マリアの夕べの祈り」を歌いたくて、モンテヴェルディ合唱団を結成したのが始まり。

だったら、伴奏も自前でしようというわけで、古楽系の草分けであるEnglish Baloque Soloistsを結成。さらにベルリオーズの「幻想交響曲」を演奏したくてOrchestre Révolutionnaire et Romantiquemも結成しました。バロックから古典、さらにロマン派にまでレパートリーを延ばしてくれたおかげで、ガーディナーのCDを追っかけていると、驚くほど多種多様な音楽を聴くことができます。

2000年に1年かけてJ.S.バッハの教会カンタータ、約200曲を教会暦に沿って演奏し続けるという大偉業を達成し、従来の仕事に一区切りつけたガーディナーと手兵のモンテヴェルディ合唱団のメンバーは、キリスト教の巡礼の旅に出発しました。

敬虔なキリスト教徒は、フランスをスタートしてスペインの聖地サンチャゴ・デ・コンポステラへと巡礼する伝統があるそうです。日本で言えば四国八十八か所のお遍路さんみたいと思えばわかりやすい。

彼らは、途中で立ち寄った教会や修道院で、16~17世紀の多くの古いメロディを収集しました。それらをまとめたア・カペラのアルバムがこれ。もう一枚、「Pilgrimage to Santiago (2005)」というアルバムもあり、巡礼の旅の成果がこの2枚に凝縮しています。

古い宗教曲というとグレゴリオ聖歌のような単旋律のお経みたいなものを想像しがちですが、ここに収められた曲はいずれもカラフルで、美しい物ばかりです。宗教という型にはめ込まれていない、民衆のための本来の音楽の原点のようなものなのかもしれません。

心が現れるような清らかさがあり、最近の言葉で言えば「究極の癒し」の音楽とでも言えそうです。珈琲をゆっくりすすりながら、静かに気持ちを落ち着けるひと時にぴったりの音楽だと思います。

2023年2月13日月曜日

味噌を作ってみる 8 新シリーズ開始


去年の5月に仕込んだ自家製味噌は、多少のトラブルはあったものの、初めてにしてはほぼ順調に「味噌」になりました。

冷蔵庫に入れれば発酵は止まりますが、そのまま室温で保存しさらなる熟成中です。写真の左が、約8か月経過した最初の味噌ですが、さらに色が濃くなっているようです。

ちょこちょこ料理にも使用していますが、まろやかな味わいでなかなか優れものだと自負しています。何しろ、米麹、大豆、塩以外の保存料とか着色料とかよけいなものは入っていない、まさに無添加というのが嬉しい。

そこで、出来上がりまで半年以上かかりますので、次なる味噌の仕込みに取り掛かりました。

材料、分量、手順などは過去の記事を参照してください。米麹の下処理大豆の下処理なども基本的には一緒です。ただし、熟成開始については、前回はすべてジッパー付きのビニール袋で行い、だいたい食べれそうになってから容器に移したのですが、今回はビニール袋の中で混ぜ合わせた後、すぐに密閉できる容器に仕込んでいます。

この場合、注意が必要なのは一気に詰め込まないこと。手に握れる程度の量を少しずつ詰めて、入れるたびにしっかり押さえつけて空気を抜く必要があります。隙間に空気がたくさん残るとカビの原因になります。

さあ、今回はどうなるでしょうか。順調にいけば秋には食べれる予定です。

2023年2月12日日曜日

C.Maccari & P.Pugliese / Giuliani Rossiniane (2007)

いかにもクラシック音楽通みたいな話ばかりしていても、所詮楽譜をまともに読めるわけではないし、ましてやヴァイオリンやピアノを弾けるわけでも無い。多少は嗜んだと言えるのはギター。とは言え、クラシック・ギターともなると・・・

ドイツがクラシック音楽の中心になってからはないがしろにされてしまった感がありますが、クラシックの世界でもギターは登場するわけで、特にバロック期から古典期のイタリア音楽では普通に使われていたようです。

イタリアのナポリで1781年に生まれたマウロ・ジュリアーニは、クラシック・ギターの巨匠の一人。ギター以外の弦楽器も勉強した後の二十代なかばにウィーンに移り、作曲活動も開始しました。ベートーヴェンにも一目置かれる存在でしたが、40歳頃にローマに移り少しずつイタリアでも知られるようになった1829年、48歳で亡くなっています。

自己のオリジナルによるギター作品だけでなく、他の作曲家の有名曲を基にした変奏曲も多数作り、特に有名なのがロッシーニの歌劇のアリアをふんだんに盛り込んだ「ロッシニアーナ」と呼ばれる一連の幻想曲集です。

自分はオペラはずっと苦手で、ロッシーニの歌劇をほとんど知らないので、原曲がどのように使われているのかわからないのが残念ですが、知らなくても十二分に楽しめる。本来はギター独奏曲ですが、このアルバムでは、クラウディオ・マッカリとパオロ・プリエーゼというコンビによる二重奏で奏でられ、音楽的な厚みが増しているので大変聞きやすい。

例えば、ナポリの港町の夜にバルコニーで、ギター弾きながら物思いに耽っているような映画のシーンを思い浮かべるといいかもしれません。

2023年2月11日土曜日

初雪らしい初雪


天気予報は・・・まぁ、だいたい当たりますが、こと災害につながろうかという天候については、やたらと大袈裟に言うことが増えたような印象があります。

たいしたことは無いと言っていてとんでもないことになると、後で痛烈に批判されるご時世なので、それも危機管理の現れなのかもしれませんが、どうも肩透かしになることが多い。

昨日の天気予報は雪。それも大雪になるかもしれないので、不要不急の外出は控えろ・・・と、テレビで散々伝えていました。

確かに朝から雪。お昼ごろは、けっこうな勢いで降っていましたし、土のところは白くなり出した。先週でしたか、ちらりと埃が舞う程度の雪はありましたが、雪らしい雪ということでは、昨日が横浜の初雪というところ。

でも、次第に雨に変わり、夜にはほぼ雪は溶けている状態で、雪がった痕跡があるかな程度。生活の利便を考えれば、大人としてはよかったと思うところなんですが、何か天気予報に振り回されている感じも無いわけではありません。

もっとも、地域によっては積雪で深刻な被害を受けている所もあるわけですから、天気予報を非難するのは筋が違う。あくまでも可能性の情報として、各自が自分の責任において行動しないといけないというところでしょうか。

2023年2月10日金曜日

Andrew Manze / Tartini Devil's Sonata (1997)

17世紀のヨーロッパの音楽の中心はイタリアであったことは間違いなく、テレマン、ヘンデル、そしてJ.S.バッハらによってドイツ・バロックが隆盛を迎えるのは17世紀末の話。イタリアでは、今でも人気を誇るのはバロック前期ならモンテヴェルディ、バロック後期ならヴィヴァルディ、古典になるとパガニーニとかです。

有名人の影に隠れて、「知られざる作曲家」はいろいろいるわけですが、ヴィバルディとほぼ同世代に修道僧でありヴァイオリンの名手といわれたのがジョゼッペ・タルティーニでした。

タルティーニは1692年にヴェネチアに生まれ、研究熱心な理論派のヴァイオリン奏者でした。作曲家としては、ヴァイオリン曲だけが残されていて、当時の重要な仕事だった教会音楽や歌劇は作っていないようです。ただし、出版された協奏曲は125曲もあるというから驚きです。

中でも、ほとんど知られている唯一の曲が「ヴァイオリン・ソナタ ト短調」で、通称「悪魔のトリル」と呼ばれる曲。原題でも 「Il trillo del diavolo」で、そのまんま。

なんでも、寝ていたタルティーニの夢に悪魔が出てきて、ハッとする素晴らしい旋律を奏でたので、目が覚めたタルティーニはすぐに楽譜に起こしたという逸話が残っています。悪魔のように難しいトリルが出てくるということではありません。

トリルはヴァイオリン奏法のテクニックの一つで、半音または一音上の音を指で細かく混ぜて弾くこと。聞いていると「ティロリロリロ・・・」みたいな感じ。トリルだけに限らず、かなり高度のテクニックを要する難曲と言われていて、基本的にごく軽めの鍵盤楽器伴奏が付くだけで三楽章、約20分という演奏時間ですから、演奏する人はかなり緊張するんでしょうね。

マンゼは、1965年生まれのイギリス人。トレヴァー・ピノックの後釜としてイングリッシュ・コンソートを率いているので、古楽系が好きな人には馴染み深いバロック・ヴァイオリンのベテランです。

このCDのすごいところは、無伴奏というところ。聞く方は、すべてヴァイオリンの音だけに集中することになりますから、これはごまかしがきかないので相当の覚悟と自信があってできることだと思います。

現代女流奏者のトップに君臨するA.S.ムターの録音もありますが、弦楽オケの伴奏がついて主旋律中心の「わかりやすい」演奏になっています。マンゼは、主旋律に装飾音を追加して自分で同時に伴奏もしている雰囲気。オリジナルの指定がどうなっているのかわかりませんけど、その分難易度は格段と上がっている感じです。

2023年2月9日木曜日

Ysaye Quartet / Franck String Quartet (2006)

セザール・フランクは、1822年にベルギー生まれ、13歳以後はパリで過ごした作曲家なので、一般にはフランスの音楽家として認知されています。後年、サン=サンーンス、フォーレらの有名な作曲家と共に国民音楽協会を設立しています。

ドビューシー、ラベルらの印象派と呼ばれる、いかにもフランスらしいクラシック音楽が主流になる前の中心人物の一人と言える存在なんです。

じゃあどんな曲があるのと問われると、たぶんヴァイオリン・ソナタ一択というところ。ヴァイオリン・ソナタ以外には何があるのかと言われても、よほどの愛好家でないと答えられそうもありません。

クラシックのヴァイオリン奏者では、フランクのソナタを弾かないという選択肢は無いかのように多くのCDが発売されています。また、そのままチェロで演奏されるように転調・編曲されたバージョンも普及していて、多くのチェロ奏者も重要なレパートリーと位置付けているようです。

人生の多くをピアニスト、教会オルガニストとして過ごしたフランクが、作曲に本腰を入れたのは中年になってからなので、作品数がそれほど多くはありません。それでも、交響詩、ピアノ独奏曲、オルガン曲、オラトリオなどのある程度の作曲があります。

このアルバムは、CD2枚で残された室内楽作品を「だいたい」網羅したもの。1枚目は弦楽四重奏曲、2枚目はピアノのパスカル・ロジェが加わり、ピアノ五重奏と必殺のヴァイオリン・ソナタという構成です。

もともと鍵盤奏者であるフランクですから、かなり弾きこなすのに技巧を必要とするピアノ曲があるようですが、室内楽の伴奏部分でもピアノ奏者は指の筋トレをしているかのような難易度があるらしい。

ここでは、弦楽四重奏とピアノ五重奏に注目するわけですが、うーん、正直に言うとあまり面白くない。個人の好き好きなので、ご容赦いただきたいのですが、特徴的な半音階多用によるやや不協和音的な響きが続き、もやもやした印象がずっと続く感じ。

まぁ、コレクターとしては一度は聞いておくべきもので、フランクの曲の中ではヴァイオリン・ソナタが人気を維持できているというのも理解しやすくなるかもしれません。

2023年2月8日水曜日

自宅居酒屋 #55 時にはしくじることもある


居酒屋で出せそうな・・・簡単で手早く、そして肴にもなるレシピをいろいろとやってみているシリーズなんですが、ある意味、冷蔵庫の残り物処理的な面もある。

そろそろ賞味期限切れとか、乾燥したり色が変わってきた野菜とか、捨てることになる前に何とか食べ切ろうという時、そのままじゃイマイチなので、適当に味を付けてみたという感じ。

そんなわけで、時にはこれは無理だったという、どう見てもしくじり例も時にはあるんです。まぁ、こういうのも反面教師みたいなところなんで、反省し今後にいかしていくことが大切です。

今回紹介するしくじりは、ごはんのお供の定番、「瓶詰めエノキ」を使った和え物。そろそろ賞味期限が近づいてきたので何とかしようと思い立ち、大根・キュウリの千切りと和えてみました。

う~ん、う~ん、う~ん・・・ごはんとならちょうど良いはずのエノキですが、こうやって食べると・・・甘すぎる。塩味も強いので、野菜がすぐにしなしなになってしまい、何かフニャフニャした食感です。

酒のお供としては、好き好きはあるというものの、うちでは却下のメニューとなりました。

2023年2月7日火曜日

自宅居酒屋 #54 菜の花辛子和え


最近は生産者の努力で一年中流通する食材が増えて、「旬」の食べ物が減った感じですが、春が近くなるとスーパーに並ぶ「菜の花」は、基本的にこの時期だけのもの。

食によって季節を感じるというのは、昔は当たり前のことでした。これも日本人の感性を育てた大事な要素ですから、季節感を意識することは悪い事ではありません。

菜の花は、食べ方の定番は辛子醤油で和えるというもの。茹でる、和えるという2ステップでできるので、ほとんどレシピらしいレシピも無いくらい簡単。

そこらの原っぱに生えているものと、食用にするものは多少違うようですが、基本的には若い花芽が出てきたころを摘み取って食べる。そもそも菜の花の「菜」は食用という意味。

ビタミン豊富な黄緑色野菜の一つとしてもポイントが高く、抗酸化作用のβカロテンの含有量も抜群に多いので、この時期に一度や二度は食べておきたいものです。



2023年2月6日月曜日

Antje Weithaas / Bruch Complete Violin Concertos (2013-15)

音楽界には、一つだけある大ヒット曲だけで一生活躍しているような、いわゆる「一発屋」と呼ばれる人たちがいますが、クラシック音楽の作曲家にも似たような存在があったりします。

例えば、ハッチャトリアン。必ず小学校の音楽の授業とかで「剣の舞」を聞かされたと思いますが、何だかテンポの速い威勢の良い曲で妙に耳に残る。でもハッチャトリアンって、それ以上知っている人はまずいない。ロシアの人で、1903年生まれで亡くなったのも1978年ですからけっこう最近の人。

イギリスのホルスト(1874年~1934年)はどうでしょうか。はっきり言って、組曲「惑星」、それもその中の「木星(ジュピター)」しか知られていません。クラシック好きでも、その他の作品を一つでも知っていたら拍手喝采物です。

マックス・ブルッフも、そんな一曲だけが有名な作曲家の一人。何故か、「ヴァイオリン協奏曲第1番」だけは、演奏しないヴァイオリン奏者を見つけることは至難の業と言えるくらい、必殺の有名曲です。

ブルッフは1938年、ケルン生まれのドイツの人。同時代人にはブラームスがいて、当時のドイツの音楽界は、はワーグナー派とブラームス派に分かれてかなり敵対していたらしい。ブルッフは、終生、ブラームスを兄貴分として敬愛していました。

非常に魅力的なメロディを生み出す人で、ところどころに印象的なフレーズが散りばめられ、ムードだけに流されないところが良いと思います。以前にも室内楽で取り上げていますが、あまり知られていないのが残念な作曲家です。

ヴァイオリン協奏曲も「第1番」と言うくらいですから、実際2番、3番がある。やたらの「Complete Edition」とかばかり作っているレコード会社なんだから、1番出すなら全部で企画しそうなものですが、たいてい他の作曲家のヴァイオリン協奏曲との抱き合わせのアルバムばかりが登場しています。たぶん、今までに全部録音しているのはイ・ムジチ合奏団で有名なアッカルドだけじゃないかと思います。

となると、そういう仕事はマイナーなレーベルに期待。室内楽も出していたドイツのCPOレコードは、そういう期待に応えてくれるので要チェックです。サンチェ・ヴァイトハースという女性奏者がCD3枚で、協奏曲および関連作品を取りまとめてくれました。

しかも、最初に登場したのが1番じゃなくて2番というのも勝負かけている感じです。そのかわり、一緒に収録されているのは多少知られている「スコットランド幻想曲」ですから、ブルッフに興味がある者には嬉しい。

オーケストラも北ドイツ放送フィル、通称NDRで手堅い布陣です。指揮者のヘルマン・ボイマーは、元々アバド時代のベルリンフィルでバストロンボーンを吹いていた人。バラバラに順次発売されたものが、まとまった物が安く手に入ります。

第2番は、叙情的な1番と比べると迫力があって劇的な雰囲気。「ツィゴイネルワイゼン」の作曲者として有名なサラサーテのために作られ、独奏サラサーテ、指揮ブルッフで初演されています。第3番になるとオーケストレーションがさらにしっかりしてきます。いずれも第1番の影に隠れてしまっているのがもったいない。

ブルッフは、交響曲や合唱曲も作っていて、全体の曲数はそれほど多くはありませんから、是非「Bruch Complete Edition」を作ってもらいたものです。

2023年2月5日日曜日

N.Lahusen & R.Zubovas / Čiurlionis Complete Piano Works (1999-2008)

ヨーロッパ大陸の北部にはバルト海があり、外海の北海からの入口が大小の島々からなるデンマークです。北側はスカンジナビア半島で、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド。南側はドイツ、ポーランド、東のどん詰まりはロシアが囲んでいます。そして、ポーランドとドイツの間に挟まれた3つの国があり、バルト三国と呼びます。

バトル三国は、北からエストニア、ラトビア、リトアニアで、地政学的に不安定な緊張を強いられてきた歴史があります。音楽の世界では、現代で有名な作曲家アルヴォ・ペルト、指揮者ネーメ・ヤルヴィ、その子であるパーヴォ・ヤルヴィはエストニア出身。

リトアニア出身の作曲家で、知る人ぞ知るという存在が、ミカロユス・チュルリョーニス(1875~1911)です。普通のクラシック音楽愛好家は、たぶん手を出すことは無いくらいマイナー。

自分は以前にピアノ曲を漁っていた時に、たまたま知ってCDを買いましたが、興味深かったのは音楽ではなく絵画。音楽以上に有名なのが、300点ほど残されている何とも言えない不思議な景色・・・幻想的と一言で片づけられない、病的なものすら感じられる絵画です。リトアニア文化史の中では最重要人物なのですが、日本では1992年に初めて展覧会が開かれて紹介されました。

もともとロシアの影響下にあった時代に音楽家を目指し、ワルシャワ、ライプツィヒで学びましたが、20代なかばに美術学校に入りリトアニアの民族文化の保存に力を入れるようになります。しかし、徐々に精神異常が始まり療養所に収容され、36歳で短い生涯を終えました。

管弦楽曲、室内楽曲はそれぞれ数曲ありますが、残された楽曲のほとんどはピアノ独奏曲です。廉価版で何でもありで有名なNAXOSレーベルにもCDはありますが、自分が購入したのはCelestial Harmoniesという、アメリカの変わり種専門みたいなマイナー・レーベルの物。
1999年から2008年にかけて断続的に二人のピアニストによって網羅された、CD5枚からなる「ピアノ独奏曲全集」なんですが、今はAmazonではバラ売りしか見つかりません。

演奏者はCD3枚分がドイツのNikolaus Lahusen、残りがリトアニアのRokas Zubovasという人。いくつかアルバムを出しているようですが、情報量が少ないのであまりよくわかりません。

さて内容は・・・絵画と同じで何とも不思議な世界。はっきり言えば、たまにハッとするフレーズが無いわけではないのですが、それほど名曲として人に推奨するような物ではないという印象。全部で184トラックが収録されていますが、いずれも2分程度で短く、習作の域を脱するものはごくわずかだと思います。

いきなり、対位法でまるでJ.S.バッハのようなフーガで始まりますが、続くのがプレリュード、マズルカ、ノクターン、ワルツと来るのでショパンを意識している感じ。少なくともスラブ系の曲調はほとんど無さそう。

そうかと思うと、おそらく後年の作品は無調だったり、不協和音が入ってきたり、いかにも時代の音楽風になって来るのですがどれもが単調。唯一の大曲と言えるのが4楽章からなるピアノ・ソナタ。これも、ほぼショパン風と言えそう。一部の現代音楽風のものを除けば、耳障りは無い。まぁ、普通にBGMとして流しておくのには差支えはなさそうです。

さんざん文句ばかり言っているようですが、当然ながら一定水準以上、少なくとも他人が弾いてみようと思える物であることは間違いないし、こうやって実演してみるだけの価値はある音楽だろうと思います。ただ、普通の愛好家は知らなくても何も問題はありません。

2023年2月4日土曜日

立春


春が立つと書いて「立春」。

昼と夜の時間的な長さが同じという一瞬を迎えたことになります。天学的な事象で考えれば、ここから春になるわけですが、旧暦の暦だと、この時期に年が変わり新年となる(中国なら春節)。

季節が分かれるタイミングを節分と呼び、昨日が節分でしたが、いつの頃からか「恵方巻」を食べるというのが流行りだしました。

恵方巻は、縁起の良さそうな具材を詰め込んだ太巻きのことですが、そもそも恵方って・・・

まぁ、民間占い総集編みたいな陰陽道(おんみょうどう)で決まるもので、その年の縁起の良い方角の事。仏教は直接には関係ないわけで、信じる信じないは個人の自由です。

今年は南南西が恵方だったそうで、その方角を向いて黙って太巻きを食べた人がたくさんいたことでしょう。

食べても食べなくても、誰にも平等に春はやって来ます。とは言え、まだまだ寒い時期ですから、体調を崩さぬように注意しましょう。

2023年2月3日金曜日

自宅居酒屋 #53 長芋梅和え


材料さえあれば5分でできる、混ぜるだけの簡単レシピです。

長芋の食べ方をいろいろ考えていたんですが、やはりそのまま生で食べれる利点を使わない手はありません。

長芋は、食べたいだけ5mm程度の厚みで、太さによって1/2あるいは1/4に切るだけです。

さて、味付けも簡単。

梅干しです。種を取り除いたら、できるだけ細かく切って、ペーストにします。これをほぐすのにも白出汁を少々。量は、味を見て適当にでOK。

梅がほぐれたら、長芋を入れて和える。そして大葉のみじん切りを好きなだけ一緒ににすれば出来上がり。

いやぁ~、簡単でしょ!! でも、めっちゃ、旨い。

すぐ作ってみてほしいです。

2023年2月2日木曜日

Ronald Brautigam / Kraus Piano Works (2003)

ノルウェー、デンマーク、フィンランドときて、北欧4国の最後に残ったのはスウェーデン。スウェーデンと聞いて、真っ先に思い出す作曲家と言えば・・・ビョルン・ウルヴァース、というのは冗談(ABBAのメンバーです)。自分的には、歌手ですが、アンネ・ゾフィー・フォン・オッターの出身地というのがポイント。

スウェーデンにはBIS Recordsというクラシック・レーベルがあって、特に日本人アーティストも比較的たくさんアルバムを作っているのでなじみ深い。特に鈴木雅明のカンタータ全集などを手掛けているし、ピアニストでも小川典子なども活躍しています。当然、北欧物はこのレーベルを外すわけにはいかない。

ただ、残念なことにスウェーデンの作曲家となると、よく知られた人はあまりいない。ニールセン、シベリウスらと近い時代には、ヴィルヘルム・ステーンハンマル、クット・アッテルベリという人が見つかりますが聞いたことが無い。

そこで、時代を遡って、古典派の頃。1756年、ドイツで生まれたヨーゼフ・マルティン・クラウスは、25歳の時にストックホルムの宮廷音楽家となり、多くの音楽を生み出しましたが、36歳の若さで病没。一般には、生まれた年も同じで「スウェーデンのモーツァルト」と呼ばれる存在です。実際に、モーツァルトとも面識があったようです。

当然、近世の北欧の作曲家と違い古典派らしい曲調が多いのですが、圧倒的に長調の軽快さが売りのモーツァルトと違って、やや短調の曲が多く音楽的な独特の響きが感じられるかもしれません。

ロナルド・ブラウティハムはオランダ出身ですが、現代のクラシック音楽界ではフォルテピアノ奏者として外せない存在です。フォルテピアノは、今のピアノの原型で、主として古典派の時代に使われた鍵盤楽器。一度この音にはまると、煌びやかで元気いっぱいの現代ピアノの音でモーツァルトやベートーヴェンを聞く気になりません。

当然、クラウスもフォルテピアノを使い、フォルテピアノを想定した作曲をしたはずですから、ここで聞ける音楽は250年前のスウェーデン王宮で鳴り響いていただろう音ということになります。

2023年2月1日水曜日

Simon Rattle / Sibelius Complete Symphonies (2015)

グリーク、ニールセンときて、もう一人忘れてはいけない北欧の有名な作曲家がいます。それがフィンランドのジャン・シベリウスで、1865年生まれ。

何しろ同時代の中では、全集ではCDで70枚を超える作曲量には驚きます。そして、絶えず隣接するロシアの脅威に晒され続けていたフィンランドでは、シベリウスの音楽が大衆の支えとなり、国の英雄として尊敬を集めています。

バイオリン奏者を目指し20歳からベルリンで修業し、作曲活動も本格化します。特にロシアからの独立を目指す愛国心を盛り上げる交響詩「フィンランディア」は代表作になりました。

そして、7つある交響曲は、今でも重要なコンサート・プログラムとして人気を誇っていますが、最後の第7番(1924年)を発表した数年後からは、まったくと言っていいほど活動を停止してしまいます。

1904年にヘルシンキ郊外のヤルヴェンバーに建てた自宅にこもり、公の場にもほとんど姿を見せませんでした。1957年に91歳で死去するまでの約30年間は、「ヤルヴェンバーの沈黙」と呼ばれています。本人もまったく語っておらず、作曲の筆をおいてしまった理由はわかりませんが、病的なものだけで説明しきれない何かがあると考えられています。

クラウディオ・アバドの後を継いで、2002年から2018年まで名門ベルリン・フィルハーモニーの首席指揮者兼芸術監督を務めたサイモン・ラトルは、1980年代にも当時の手兵国のバーミンガム市交響楽団と共にシベリウスの交響曲全集を完成させています。

ラトルは、2015年に再び集中的にシベリウスを取り上げ、二度目の全集を完成させ、ベルリンフィルのオリジナル・レーベルからの全集としてはベートヴェン、シューマンに続く物になります。

自分で買ったのは、CD 3枚に加えて、Blurauy 2枚に収録された全曲のライブ映像を含むセットです。これは、アバドのマーラーで経験したことですが、あまり馴染みがなかったクラッシでは、その中に入り込めるかどうかは映像の有る無しは大いに影響します。

シベリウスの交響曲は、もやもやした霧の中の音楽のような印象を持っていたので、音だけでは聞きこなすのは苦しいと思いました。でも、やはり映像付きは正解。めくるめく音の重なりがどのように構成されているのかは、ビデオでオーケストラ全体を見ながらだとわかりやすい。

ラトルは「マーラーは、人間と自然、とりわけ本人がテーマ。しかしシベリウスでは、人がそこにいるとは感じられない」と語っていますが、確かにそう感じます。少しずつ変化していく心地良いハーモニーとリズムが積み重なり、それは人の生活とは切り離された自然の営みと重なっていく印象です。