今日はリウマチ薬副作用報道に関係した1日となってしまいました。
GoogleのニュースRSS配信で「リウマチ」をキーワードにして、いつもチェックしていますが、それほど面白い話はありませんでした。しかし、昨日は違いました(ニュースの内容は昨日のブログを参照してください)。
夕方、ニュースをチェックしていたところ、おっとびっくり。2003年に現在最も使われている抗リウマチ薬でも、同じような報道があり、その時はリウマチセンターにいましたから、個人で対応する必要はあまりなかったのですが、今は違います。自分が院長で、責任者である以上、なんらかのアナウンスは必要なわけですから、さっそくブログとクリニックHPへの書き込みを行いました。
自分としては、十分に説明をした上で薬を導入したつもりですが、心配する患者さんが出るのは当然ですし、ましてや自分が会っていない家族の方はびっくりして当たり前です。
今日はたまたまその薬を使用している3人の患者さんが受診しましたが、だれもあわてていませんでした。もう一度、注意点などを説明してあらためて薬を処方しました。また、その薬を使っていない別の2人の患者さんも、ニュースは知っていましたが、あわてる様子はなく、あらためてリウマチの患者さんの冷静な対応には脱帽する次第です。
朝のうちに販売元の会社が資料を届けてくれました。昼には、製造元の会社が担当者の方が営業所の所長を伴ってやってきました。あいかわらず、素早い対応だと感心します。今回の報道が出る前に、すべてのデータをHPにアップして、誰でも閲覧できるようにしたそうです。情報の隠ぺいがかえって混乱を招くことを、よく承知しているようです。
資料によると、この薬を使用中で死亡した患者さん全例について報告したところ、その数字だけを取り上げたのがA紙とT紙。Y紙は、副作用報告を管理している医薬品機構により関連ありとされた16例についての報道という具合にわかれたようです。副作用は疑いが生じた場合に100%否定することはできません。しかし、今回の死亡例79例の中には、自殺や脳出血、あるいは心筋梗塞などの普通は副作用とは考えにくいものも多数含まれており、まだまだ検討が必要なようです。
しかし、確かに薬によって無くなった方が最低でも16名、おそらくはそれ以上いるということは事実であるわけです。女子医大リウマチセンターの山中寿教授による資料によると、リウマチは一般より死亡率の高い疾患であり、標準化死亡率比(SMR)は2.26(Wolfe,1994)で、2倍以上の確率で死亡することになります。2005年のWolfeの報告では、最新の薬を使わない患者の死亡率を1とすると、最新薬を使うと0.69~0.84、ステロイドは1.63と増加、2006年のBurmesterの報告では、最新薬でのSMR=0.64です。センターの調査では、全体で死亡率は0.0076/人年ですが、今回の報道された薬の場合死亡率は0.00564/人年と推定されます。つまり、十分にbenefitがあるということです。
ただし、このbenefitを導き出せるかどうかは、使う側がしっかりとした管理をするかどうかにかかっているのだと思います。