2023年7月14日金曜日

グラスホッパー (2015)

伊坂幸太郎のサスペンス小説が原作。監督は瀧本智行、主演は生田斗真というのは「脳男(2013)」のコンビ。タイトルのグラスホッパーはいわゆるバッタのことで、高密度で生息すると群生相と呼ばれるより黒っぽく飛翔能力が高い集団として成長するらしい。

表向きは健康食品会社の社長ですが、違法薬物売買で裏社会で一目置かれる寺原(石橋蓮司)は、息子に命じて薬物中毒者が運転する車をハロウィーンで賑わう渋谷スクランブル交差点に突入させ、多くの一般人を死に至らしめます。あえて取り締まりを強化させ、同業者を窮地に追い込むことが目的でした。

こどもをかばって犠牲者となった百合子(波瑠)のフィアンセ、中学の教師で虫も殺せない鈴木は、「犯人は別にいる。寺原を調べろ」という密告を受け、教師を辞して寺原の会社に入社するのです。街頭で商品の勧誘をする鈴木は、かつての教え子というギャルから声を掛けられ会社に案内します。寺原の部下で冷酷な比与子は、彼女を拉致して薬漬けにするというのでした。

女を寺原の息子に引き渡すためスクランブル交差点で待っていると、鈴木と比与子の目の前で、息子は車の通っている交差点内に押しだされ殺されてしまうのでした。鈴木は「押し屋」と呼ばれる殺し屋(吉岡秀隆)を追跡し、妻(麻生久美子)と二人のこどもがいる普通の家庭の父親であることに驚き、寺原に狙われるから逃げるように話してしまいました。

一方、寺原からの依頼で、多くの邪魔者を催眠能力によって自殺させてきた鯨(浅野忠信)でしたが、いろいろ知り過ぎたことで寺原はナイフの達人である蝉(山田涼介)に殺しを依頼してきます。鯨は死に追いやった人々の幻に付きまとわれ、蝉も生きていることの実感を感じることができないでいました。

寺原のもとに鈴木は復讐のために押し屋を雇ったという密告があり、比与子は鈴木を拘束します。息子の仇を取るため、ついに寺原は堅牢な邸宅から比与子のアジトにやってくるのです。そこへ、寺原と決着をつけるために鯨、その鯨を殺すため蝉も集まってくるのでした。

こうやってストリーをなぞってみると、比較的わかりやすい感じですが、映画の中では、鈴木・鯨・蝉・押し屋のエピソードが入れ代わり立ち代わり出てくるので、やや複雑でわかりにくい構成になっています。

鈴木の復讐をたきつける表に出てこない何かがいることはわかりますが、そこにストーリーを集中させてもよかった。鯨と蝉は、基本的にそれとは別建ての話なので、最後まで鈴木と交わることはありません。そういう意味では、ばらばらの話が最後に一本にまとまるという展開には無理やり感は否めません。

また、ほぼ謎のまま本筋が終了した後に、エピローグとして1年後に裏で動いていたある人物に全部説明させてしまうのは、あまりに安易な感じがします。伏線をすべて回収する必要はないと思っていますが、残された謎を推理できる材料は本編に残してほしいところ。

今回の生田斗真は気弱で正義感が強い「いい人」を演じていますが、急にスーパーマンになれるわけもなく、どちらかというと狂言回しという役どころ。むしろ、二人の殺し屋のそれぞれの葛藤の方が、サスペンス+人間ドラマとしての奥行きがある。

ただし、鯨の催眠術のような超能力はどうもわかりにくいし、安直な感じがします。蝉は比較的キャラクターにインパクトがありますが、これは「アイドル」であることを捨てた山田涼介の怪演の賜物。ある意味、山田の演技を見るだけでも元が取れるくらいの感じです。

2023年7月13日木曜日

スーパーセル


この写真がそうなのかは断定はできませんが、ネットで画像検索すると、「スーパーセル」と呼ばれる気象現象が最も似ているように思います。

一昨日の帰り道に北西の空に見つけたもので、今までに見たことが無いような威圧感のある雲の形状は目を引きました。

スーパーセルとは、超巨大な積乱雲の塊のこと。この雲の下では、天気は大荒れで、大雨は言うに及ばず雷・雹・霰、時には竜巻すら起こっているらしい。

とにかく近づかないことが一番です。




2023年7月12日水曜日

芝生用ロボット掃除機


広い家では、ロボット掃除機が活躍する時代です。

うちみたいな、狭くてごちゃごちゃと物が置いてあると、あまり効率的ではないような感じがするので使用感はわかりません。

屋外でも、同じようなロボットがあるのを見つけて、ちょっとびっくり。

場所は芝生。確かにきれいに手入れがされている芝生は、ロボットが活躍するのには向いていますね。写真では、手前の柵にぶつかって向きを変えた所です。

Automower(オートモア)という商品で、スウェーデンの会社が作った物。面白いのは、芝刈りをしてくれるのですが、こまかく粉砕してその場にばらまくことで刈った芝は回収しなくて良いということらしい。

Amazonで、20万円弱で売っていますから、広大な庭のある邸宅にお住まいの方は一考の価値ありかもしれません。

2023年7月11日火曜日

さぁんじゅうはちどお~


いやいや、暑いの何のって・・・

昨日は、朝鮮半島の国境線じゃあるまいし、38度って・・・まじか!! 

これ、Windows付属の天気アプリの表示ですが、どこで測った数字が表示されているんでしょうか。

しかも、体感気温50度超え。

今日も、明日もこんならしいですが、天気予報はかたくなに梅雨明けを宣言しませんね。

いったい、日本はどんなるのやら。

2023年7月10日月曜日

自宅居酒屋 #72 ザーサイ・サラダ 2


搾菜と書くと、もっぱら中華の雰囲気になります。前回、サラダ風に食べるのに中華味にしたんですが、サラダというからには、いかにもサラダらしく食べてみたい。

というわけで、今回はサーサイをもう少しサラダ風にしてみました。

まず、サーサイを千切りにして水でよく洗います。塩漬けになっていて、けっこう辛いので塩分を落とすのが目的。ちょっと食べてみて、うっすら塩気が残っいるかなぁくらいでOKです。

さて、味付け。マヨネーズと和からしです。分量樹お好みです。サーサイを和えたら、少しだけコショウを振って出来上がり。

これも実に美味しい。是非試してみてもらいたい味です。

2023年7月9日日曜日

WOOD JOB ! 神去なあなあ日常 (2014)

このタイトル、何と読む? アルファベットはいいとして、正解は「かみさり なあなあ にちじょう」です。三浦しおん作の小説が原作。「なあなあ」は村の人々の口癖で、「のんびりいこう」とか「いい天気ですね」といった意味らしい。

監督・脚本は矢口史靖。この監督さんは、基本はコメディ路線ですが、実に細かいところまで微に入り細に入りこだわりを持って映画作りをするので、思わず見入ってしまいます。「ハッピーフライト(2008)」でも、普段気に留めない空港の裏方の仕事に注目して、多いに楽しませてくれました。今回、目を付けたのは林業。三重の山林でオール・ロケで作り上げました。

典型的な都会っ子の平野勇気(染谷将太)は、高校を卒業したものの大学は不合格。たまたま目に留まった林業の研修生募集のチラシ・・・に写っている女性が可愛いという理由で応募します。

やって来たのは、携帯の圏外、さらにその奥の山間の小さな神去村。中村林業のエース、飯田予喜(伊藤英明)の家に居候して、予喜の妻、みき(優香)の世話になりながらいろいろ学び始めます。

中村林業は社長の中村清(光石研)、妻の祐子(西田尚美)がいろいろと目をかけてくれるものの、何事もきつい作業ばかりで、勇気は何度も逃げ出しそうになります。しかし、祐子の妹で学校の先生をしている石井直紀(長澤まさみ)がチラシの美人と知って、気になってしょうがない。

少しずつ仕事を覚え、村の人々にも杣人(そまびと、林業を営む人のこと)として認められた勇気は、48年に一度行われる神事に参加することを許されます。そして、1年間の研修期間が終了し、勇気は都会に帰ることになるのですが・・・

本当に都会のチャラチャラした若者風の勇気が、いろいろなことにめげながらも、あきらめずに成長していくのが、実に楽しい。それをさせたのが、直紀への恋心というのも悪くない。

野生児キャラの予喜、あっけらかんとしたみきも、ぎりぎり実際にいても不思議が無い描き方で、噓臭さを感じさせません。村にとってはヨソモノである勇気に対する、長老たちの反応も当然と言えば当然で無理が無い。

矢口監督は、勇気の成長過程で、携わらなければ知ることが無い林業のいろいろな仕事をつぶさに盛り込んで見せてくれます。本当に大変な仕事でしょうし、危険も伴うわけですから、杣人たちが何かと信仰を持つことも、映像の自然の流れで理解させてくれます。

映画の最大の武器は映像であり、無駄に言葉に頼らずに、林業とは何たるかの一端を的確に伝えることに成功しています。

2023年7月8日土曜日

SUWADAの爪切り


高嶋ちさ子、長嶋一茂、石原良純の三人が言いたい放題で人気のバラエティ、「ざわつく金曜日」で紹介された一品。

新潟県三条市にある諏訪田製作所が作っている、まさに職人芸という感じの爪切りです。

刃が合わさると、まったく隙間が見えないくらいぴったりとします。ニッパータイプで、特に足の爪を切るのは重宝します。

切り具合は、普段使っていた数百円の爪切りとは雲泥の差。切った感触は、実に「柔らかい」というのに驚きます。

確かに値段は高い。しかし、高いのには納得の理由があることが、使ってみるとわかります。


2023年7月7日金曜日

自宅居酒屋 #71 中華くらげ


よくスーパーに売っている味付きくらげなんですが、何か食べるとちゃんとした中華飯店で食べるものと違うと思ったことありませんか。

お店で前菜で出てくるものに比べて、平べったいし食感も違う。何となくベターっとした感じで、残念な気持ちになってしまいます。

そこで・・・ちょっと一手間かけましょう。実に簡単。

お湯を沸かして、さっと茹でるだけです。熱を通すと、身が締まって、まさにあのお店のコリコリ感が出てくるんです。

縮む分、量は減ってしまう感じですが、そのかわり美味しさはパワーアップ。やって損はありません。

もともと味が浸みているので、特に追加の味付けはいりません。この量で2パックで400円弱です。

2023年7月6日木曜日

イヌゴエ (2006)

ペットを飼ってますか? それも犬ですが? 犬好きですか?


だったら、この映画は大好きになれます。監督は横井健司。まぁ、言ってみれば、ハートウォーミング・コメディ。とにかく見てみましょう。

国家試験資格である臭気判定士の芹澤直喜(山本浩司)は、臭いに敏感すぎて恋人にも愛想をつかされてしまいます。企業の芳香剤の新製品「日本海」の判定では、その悪習で気を失ってしまいます。

そんな折、父親が旅行に出るというので、拾ったフレンチ・ブルドッグを勝手に直喜の部屋に置いて行ってしまいます。ところが、何と直喜に犬の心の声が聞こえてしまう。しかも、おっさんの声(遠藤憲一)で関西弁。直喜の言うことは伝わらないようですが、しだいに犬の声に耳を澄ますようになりました。

直喜はキャバリアを連れた音無ちぬ(宮下ともみ)と知り合いますが、ちぬには何か悩みがあるらしい。ところが、急に犬の声が聞こえなくなります。犬の声が聞こえたのは、日本海の匂いが関係あると思った直喜は、ちぬの悩みを知るために日本海に出かけていきます。

すると、ふたたび犬の声が聞こえるようになり、ちぬが離婚してこどもと合えないストレスから飼い犬を虐待していたことに気がつきます。しだいに何かと自信を取り戻してきた直喜でしたが、ホントの飼い主(遠藤憲一)が見つかってしまいます。

はっきり言って、低予算のB級映画・・・なんでしょうけど、だからこそ丁寧な作りで、無駄なはったりもないし、実に気持ちが和らぐ映画です。

犬の声は聞こえますが、あくまでも犬が直接口をパクパクさせて喋るわけではありません。犬の気持ちが伝わる、というところですが、そのくらいにしておくのがファンタジーとしてちょうど良い。

コメディとしても、やり過ぎないのが好感が持てるところです。ほのぼの感の枠内でとどまっているので、安心です。まぁ、名作とまではいかないにしても、少なくとも良作です。このアイデアを流用して、映画は第2弾も作られました。さらに、綾野剛主演でテレビ・ドラマも作られていたりもします。

2023年7月5日水曜日

ファブル 殺さない殺し屋 (2020)

岡田准一主演の痛快アクション映画の第2弾。1作目は2019年に公開されヒットしましたが、この第2作はコロナ禍の影響を受けて公開延期などの不運に見舞われました。南勝久のマンガが原作で、風変わりな殺し屋の活躍という話。

今回の映画も、主要な登場人物は同じキャストで演じています。都市伝説のように噂される伝説の完璧な殺し屋「ファブル(寓話)」は岡田准一で、ボス(佐藤浩市)から1年間大阪で一般人として、仲間の佐藤洋子(木村文乃)を妹として暮らせと命じられ、佐藤明と名乗ります。

明が働く小さなデザイン会社オクトパスの社長は田高田(佐藤二朗)、同僚で美形の清水岬(山本美月)らとの交流の中で、殺し屋として育てられ一般常識の無い二人はいろいろとトラブルを起こすことに・・・

今回の悪人は、表向きはこどもの安全を守るためのNPOを立ち上げている宇津帆(堤真一)で、裏ではさまざまな恐喝を行い、時には相手を殺してしまう。実働を担っているのは鈴木(安藤政信)で、殺し屋としてのプロ意識は高い。宇津帆の部下として裏稼業は知りつつも表向きの仕事を手伝っているのが、両親を強盗に惨殺された佐羽ヒナコ(平手友梨奈)です。

ヒナコは4年前に車に乗っていた売春組織のメンバーを明が殺した際に同乗していて、暴走した車から明に助けられましたが、その時の両足の怪我がもとで車椅子の生活をしていました。公園の鉄棒で立ち上がる練習をしているところを、偶然に通りかかった明に見られ、明からリハビリテーションのアドバイスを受けます。

次のターゲットがたまたま盗撮をしていたオクトパスの社員だったため、宇津帆は明がファブルであることに気が付きます。実は宇津帆は売春組織のリーダーで、殺されたのが弟でした。宇津帆は、ヒナコにも両親殺しの犯人はファブルだと言い協力させます。宇津帆の綿密な計画のもと、明を誘い出し抹殺せんと戦いの火ぶたが切って落とされました。しかし、明はボスとの約束で人を殺してはいけないのです!!

というわけで、今作も監督は江口カンという人。岡田准一のアクションはさらにパワーアップして、CGとかワイヤーアクションとかも使っているんでしょうけど、それ以上に肉体を酷使したスタントは、見事を通り越してあきれるくらい凄い。

時代物、戦記物などとは全く違うとぼけたキャラを、岡田は実に楽し気に、しかも楽々と演じています。一見アクションとは無縁の木村文乃も、前作ほどではありませんが頑張っています。

あまりどうだこうだと言うより、単純にエンタメとして楽しめば良い作品であることは間違いなく、今後も岡田准一には期待したいですね。

2023年7月4日火曜日

散り椿 (2018)

岡田准一の活躍は目を見張るものがあります。2018年は2本の映画が公開されましたが、一つはホラーの「来る」で、もう一つが人情時代劇の本作です。

原作は歴史小説作家の葉室麟で、この映画の完成直後に病没しています。監督は木村大作。黒澤組の撮影監督として活躍し、2009年に「劒岳 点の記」で監督デヴュー。これが監督としては3作目で、当然撮影も担当しています。

京で密かに暮らしている瓜生新兵衛(岡田准一)と篠(麻生久美子)の夫婦でしたが、篠が病気のために亡くなりました。篠は亡くなる前に新兵衛に、故郷の散り椿をもう一度私の代わりに見てほしいと言い遺しました。

18年前、扇野藩では新兵衛、榊原采女(西島秀俊)、篠の兄である坂下源之進、篠原三右衛門(緒形直人)が若き四天王と呼ばれていました。新兵衛は、采女の養父である勘定方の榊原平蔵が、豪商の田中屋惣兵衛(石橋蓮司)から賄賂を貰っていることを上申したために、藩から逐電せざるを得なくなりました。その後、平蔵が何者かに斬られ、源之進は城代家老の石田玄蕃(奥田英二)の命により事件をおさめるために切腹したのです。

新兵衛は坂下家を訪れ、篠の妹の里見(黒木華)、弟の藤吾(池松壮亮)に篠が亡くなったことを報告します。そこへ田中屋から用心棒の依頼が舞い込む。実は城代家老が、平蔵を通して賄賂を受け取り田中屋へ事業の独占を許していたのです。田中屋は、もしも裏切られたときのために、城代家老からそのことを約束したことが書かれている起請文を受け取っていたのです。

若君が新藩主としてお国入りが近づき、悪事が露見することを怖れた城代家老は、田中屋から起請文を取り返そうとしているため、田中屋は身の危険を感じていたのでした。新兵衛は起請文を預かり、今では側用人として若君からの信頼も篤い采女に渡します。

篠の遺言はもう一つあって、「采女を守ってあげてほしい」というものでした。新兵衛は、かつて篠と采女の間に縁談があったことから、采女に対して嫉妬心をどこかに持っていましたが、采女はきっぱりと断られたことを新兵衛に語り、「後を追って死ぬ気だった新兵衛を生かすため」に口にしたことだと諭すのです。若君が戻り、若君暗殺にも失敗した城代家老は、一刻の猶予もなくなり、ついに起請文を取り返すために、采女らの抹殺を決意するのでした。

基本的には勧善懲悪的なストーリーで、お家騒動としては目新しさはありませんが、そこに妻の遺言で時を経て関わらざるを得なくなった武士を登場させることで、物語の奥行きが深まりました。ただし、登場人物の相関関係が複雑すぎて、整理しきれていない感があります。

岡田准一の殺陣さばきは当然のように決まっています。斬った後に血が噴き出したり、刀にも血が付いているところなどはかなり現実的。昔ながらのチャンバラよりも、巧者の戦闘を強く意識した立ち振る舞いですが、それ以上に、優れた台詞回しの俳優としての素晴らしさがあふれているように思います。

さてさて、問題は木村大作。確かに全編富山でのロケによる映像美は実に素晴らしい。黒澤明が、うまい撮影ができないと「大作を呼べ」と言ったというのも嘘ではありません。ただ、演出が「さぁ、感動しろ」と言わんばかりの古さを感じるというと申し訳ないのですが、ここは泣く場面とかがわかりすぎる。

音楽の使い方も一辺倒で、加古隆の重苦しく切ないメインテーマも、あまりにも頻回に出てくるのがつまらない。しかも、音量が大きめで、せっかくの台詞が聞き取りづらい。悪い映画ではないのですが、そのあたりがちょっと残念。ちなみに斬られる平蔵役は木村大作本人がカメオ出演しています。

2023年7月3日月曜日

来る (2018)

「告白」の中島哲也が監督したホラー映画・・・ということなんですが、原作は澤村伊智の小説で、原作未読の自分としてはかなり混乱してしまいました。

もっとも、原作を知るひとにとっても、(否定的ではなく)何だこれはという感想らしく、凡作・駄作とは言えない凄まじいエネルギーが詰まった怪作という感じ。

出演者がすごい。最初の主役である田原秀樹が妻夫木聡、その妻である香奈が黒木華、そして秀樹の友人、津田大吾は青木崇高。中盤になると主役はオカルト・ライターの野崎和浩が岡田准一、霊媒師、比嘉真琴に小松菜奈、同じく逢坂セツ子に柴田理恵。そしてオオトリの主役が真琴の姉で最強の霊媒師、比嘉琴子となり、演じるのは松たか子で、全体を通して鍵となる田原夫妻のこども知紗は子役の志田愛珠です。

あらすじが超難解で、現実・回想・幻想が入り乱れてとても簡単に整理できそうもない。原作が三部構成で、第1章「訪問者」は秀樹、第2章「所有者」は香奈、そして第3章「部外者」は野崎の視点でそれぞれ一人称で語られる構成だそうで、映画もある程度準拠しているようです。

序盤は、秀樹が実家にフィアンセの香奈を連れていくところから始まります。実家のある田舎では、得体のしれない怪奇現象があり、こどもが行方不明になる事件が起こっていました。秀樹もこどもの時に、親しい女の子が姿を消したことを経験していました。そして、その後二人の新婚生活、そして知紗が生まれて秀樹が「イクメンパパ」となって幸せな日常が描かれます。

しかし、秀樹の周りに少しずつ怪奇現象が起こり始め、津田の知り合いの野崎に相談。野崎はセツ子を紹介しますが、「あれ」の襲撃によりセツ子は右腕を失います。続いて、野崎はパンク系ファッションの霊能力者、真琴を連れてきますが、彼女の手に負えるようなものではなく、姉の琴子からの電話の指示で秀樹は部屋中に対策を施しますが、「あれ」の襲撃によって命を落としました。

中盤になると、ひとり親になった香奈がメイン。香奈はイクメン気取りの秀樹に愛想をつかし、何かと知紗にイライラをぶつけるようになっていましたので、秀樹が死んだことは悲しくはなかったのです。知紗を心配して訪れた真琴に、その子はあなたにあげるといい津田との逢瀬を楽しむようになっていました。

野崎もその後を心配しますが、香奈にはうまくあしらわれてしまう。野崎は過去に恋人に堕胎をさせたことが、心に重くのしかかっていました。そして、真琴も知紗も「あれ」に連れ去られてしまい、何もかもが負の回転のなかで、香奈も「あれ」の襲撃により絶命します。

そしていよいよ終盤です。あまりに強大で邪悪な「あれ」と対決するため、琴子は全国から多くの霊媒師を集めますが、集結する前に「あれ」に襲われてしまう者もいました。琴子は秀樹の住んでいたマンションの前に除霊儀式のための祭殿を作り、「あれ」を呼び込んだのちに一気に勝負かけるのでした。

原作では「あれ」については「ぼぎわん」と呼ばれ、ある程度の説明はされているのですが、映画ではほとんど触れていません。2時間ちょっとの映画の中におさめるために、意図的に省いて、原作者の狙いである襲って来る物の怖さより、襲われる側の恐怖に注力したものと思われます。

また、秀樹、香奈、知紗、野崎らを中心に、襲わける側の二面性を浮き上がらせているのも特徴的。ある時は正義のように見えても、別の角度から見ると悪であったりすることで、人間そのものの「怖さ」も見えてきます。しかも、それぞれの登場人物の背景を描き切らないために、恐怖が増大し、また感情移入もしにくくしている。

そのため、芸術性において高評価する一方で、娯楽映画なのにわけがわからないと映画の評価は二分されてしまいます。自分は中間。あと少しの納得感が見終わった時に欲しい気がしました。

2023年7月2日日曜日

太陽を盗んだ男 (1979)

もう40年以上昔の映画で、当時浪人生だったのでリアルタイムに劇場で見てはいませんが、その頃の若者にはかなり話題となった映画。何しろ、当時ソロ歌手として人気絶頂だったジュリーこと沢田研二が原爆を作る犯罪者になるというのですから、ファンならずとも注目せざるをえないというものです。

それにしても、冒頭の旧日本兵に扮した老人が天皇に合わせろというところからして、いきなりメディアのタブーを打ち破るような内容に驚きます。ましてや、日本人にとって特別にセンシティブな原子爆弾や放射能被爆にまで突っ込んでくるというのは、作り手の相当な意気込みが感じられます。

日本の高度経済成長のピークで、かなりやりたい放題できた時代ということも言えますし、逆にそのころ広がり始めた「しらけ世代」の無気力感に痛烈なパンチを繰り出した作品。むしろ、今の時代では絶対に作れない映画でしょうし、ある意味カルト的な作品と言えます。

萩原健一・桃井かおり出演、神代辰巳監督の「青春の蹉跌(1974)」では脚本を担当した長谷川和彦が監督。助監督の一人には相米慎二がいました。脚本は「蜘蛛女のキス(1985)」のレナード・シュレイダー。

中学の理科を教える、城戸誠(沢田研二)は、授業中でもフーセンガムを噛み、教師なのに遅刻する無気力な教師でした。生徒を引率しての原子力発電所の社会科見学の帰りのバスが、旧日本兵の身なりをした老人にジャックされます。老人は機関銃や手榴弾などで武装して、皇居に行き天皇に合わせろと要求してくるのでしたが、山下警部(菅原文太)の活躍で犯人を取り押さえます。

城戸はこの件があってから、授業でも原子爆弾の作り方ばかりを講義するようになり、ついに茨城県東海村の原子力発電所に侵入し、液体プルトニウムを強奪するのです。自分のアパートに、さまざまな道具をそろえ、多くの行程を経て、ついに金属プルトニウムの生成に成功し、まずはその削りカスを用いた原子爆弾を国会議事堂内に仕掛けます。

警視庁に電話した城戸は、山下を交渉相手に指名し、爆弾の存在を伝えます。警察が回収すると、間違いなく爆弾の機能を有していて、削りカスではない本物であれば、東京に壊滅的被害が生じることが判明しました。

城戸は、世界に8つの原爆保有国があるので自分は9番と名乗り、日頃から不満だった野球のナイター中継を時間に囚われず最後まで中継するように要求します。すると政府からの要請によって、中継が終わることなく試合終了まで放送されたのです。

城戸は、次の要求が思いつかず、ラジオのDJ沢井零子(池上季実子)の番組に電話するとも「俺は原爆を持っているが、リスナーにそうなら何をしたいか聞いてくれ」と頼むのでした。城戸はその回答の中から、1973年に中止になったローリング・ストーンズの日本公演の実現を山下に伝えるのです。

そして第3の要求は5億円。城戸は山下らを喫茶店に釘付けにして、デパートの屋上から様子を観察していました。しかし、指示のためにかけた電話が逆探知され、デパートは警察によって封鎖されてしまいます。しかも、城戸の体には異変が始まっていました。髪の毛が抜けるようになり、歯肉出血もあり、明らかに放射能被爆の症状です。

しかたがなく、原爆が山下のいる喫茶店にあることを教え、時限装置の解除法を教えるかわりに封鎖を解かせます。大混乱の中を逃げ延びた城戸に、零子が協力して、警察から原爆を奪い返しますが、車での逃走中、カーチェイスの果てに零子は「生きてね」と言い残して事故死。

そして、ローリング・ストーンズの日本公演・・・もちろん、警察が仕組んだ偽コンサートの当日、城戸は原爆の時限装置をあらためて作動させながら、武道館で山下警部に声をかけるのでした。

昭和40年代の、特に渋谷を中心とした街並みが懐かしい。流れる音楽も、聞き覚えがあるものばかり。ド派手なカーチェイスは、「西部警察」を彷彿とさせます。ナイター中継でも王貞治のホームランをはじめ、懐かしい選手の名前が登場するのも嬉しい所。ローリング・ストーンズの日本公演も、実際に直前になってメンバーの麻薬使用歴が問題になりビザが取り消され中止になったのも、当時の若者には衝撃的なニュースでした。

沢田研二は撮影時30歳で、人気の頂点にいた時期。それが物事に無関心な若者の典型像を、今の目で見ても新鮮で見事に演じているのは驚異的です。菅原文太も任侠物からトラック野郎にイメージチェンジした時期。助演ではありますが、ここでも泥臭い熱血漢の刑事を演じて存在感を放っています。

皇居前のバスジャックのシーンや、国会議事堂に沢田が入るシーンは無許可でのゲリラ撮影だったそうで、今では到底考えられません。映画屋にとっては、やる気があれば何でもできた良い時代の名残りというところでしょうか。

現代でも、映画にかかわる人々にも影響を与え続け、自分に影響を与えた作品として必ず登場することが多い。それだけ、時代の雰囲気を凝縮させたエンターテイメントとして、記憶されるべき作品と言えそうです。


2023年7月1日土曜日

脳男 (2013)

首藤瓜於による小説が原作で、映画では登場人物の設定などに変更が加えられています。監督は瀧本智行で、日活創立100周年記念として制作されました。


猟奇的な殺人と無差別爆弾事件が連続で発生し、精神科医の鶯谷真梨子(松雪泰子)も乗り損ねたバスが発車直後に爆発するのを目撃します。被害者はいずれも舌を切り取られ、体に爆弾をセットされていました。茶屋刑事(江口洋介)は爆弾の残骸から特殊な工具が使われていたことを突き止め、購入者の中からアジトと思われる倉庫に向かいました。

すると、中から言い争うような声が聞こえ、直後に爆発が起こります。茶屋が踏み込むと、鈴木一郎と名乗る男(生田斗真)が一人だけ残っていて、一味の一人として拘束します。茶屋はあまりに無表情で人間らしい感情を表に出さない男に驚き、真梨子に男の精神鑑定を依頼します。


アジトを爆破して逃亡した真の事件の犯人は、サイコパスの緑川紀子(二階堂ふみ)と彼女を敬愛する水沢ゆりあ(太田莉菜)で、二人は男の正体を探るため真梨子の周囲に盗聴器を仕掛けます。

真梨子は男が過去に症例報告された患者と似ているため、報告者である藍沢(石橋蓮司)に会いに行きます。藍沢は以前運営していた自閉症児童施設にいた入陶大威(いりすたけきみ)の話をします。大威は両親をひき逃げで失い入所しましたが、自発的な行動をまったくせず、しかし、一度見た物や読んだ事は完璧に記憶する特殊なこどもでした。富豪の祖父、 倫行はあらゆる殺人に関する知識を教え込み、悪い人間を殺すように教育したのでした。

茶屋は鈴木一郎が入陶大威であることを確信し、犯人を殺すためにアジトにいたものと確信します。そして病院から警察署へ移送する途中で、緑川と水沢の襲撃され、混乱の中で水沢は射殺されたものの、緑川と大威は逃亡してしまいます。

1週間後、鈴木一郎を呼び出し殺すために、緑川は真梨子を人質に病院に立てこもります。緑川は、エアシューターで病院のいたるところに爆弾を繰り爆発させるなか、ついに鈴木一郎が病院に姿を現すのでした。

感情が無い人間はおそらく存在しないと思いますし、鈴木一郎の場合も後天的に感覚的に心を閉ざしてしまったものだと思います。であるならば、どこかで何かのきっかけがあれば、再度心を開く、つまり感情を呼び戻すことは可能なのかもしれません。実際、映画でも真梨子は何とかそうなるように努力するわけです。

原作に無い設定として、真梨子は以前弟が猟奇殺人の犠牲になっていて、その犯人のカウンセリングを直接行うという厳しい背景があります。だからこそ、鈴木一郎を何とか人間として立ち直らせるために深入りする状況に説得力が生じているように思います。

生田斗真は、痛みを感じない感情を見せることが無い「脳男」を演じるにあたって、かなりハードなトレーニングをこなし、監督らとも本能にすら左右されない人間についてディスカッションを繰り返したそうです。その成果が合ってか、脳男が実在するならそうだろうと思わせる迫真のキャラクターを作り上げたように思います。

ある意味同類ともいえる緑川役の二階堂ふみも、ダイエットして眉を剃り凶暴なサイコキラーを熱演しています。松雪泰子、江口洋介も狂気に翻弄される様子は、落ち着いてみていられます。

とにかく登場人物の一人一人が、強烈な個性を放つ作品。ものすごい負のエネルギーのせいで、見終わってもハッピーな気分にはなれませんが、ある種のカタルシスを感じる不思議な作品です。