2024年7月31日水曜日

PARIS 2024 序盤から熱戦が相次ぐ


パリで行われているオリンピック。早くも熱戦に次ぐ熱戦が展開されています。

7月30日(日本時間)終了時点で、金メダルは日本が7個でトップ。お~、という感じですが、そのうち3個が柔道ですから、驚きは少ないかも。

可能性が高くない中でメダルを獲得したのは、フェンシングの金と馬術の銅。こういう結果は、それぞれの競技人口を増やすことに役立ちそうです。ただ、どちらも始めるにはハードルが高いすもしれません。

スケートボードの男女の活躍はすごかった。実際にスケートボードに乗る人は、その凄さがわかるんでしょうね。若者のパワーは無限大という感じです。

個人的に特に盛り上がったのは、男子体操団体です。エース橋本君を含むチームが金メダルを獲得し、内村航平時代以来の、再び体操界のトップに立ったという感じです。

最終種目の鉄棒で、銀メダルだった中国のミスが無ければ難しかったと思いますが、結果がすべて。落ち着いて完璧な演技を橋本大輝選手を褒めましょう。

それにしても、リアルタイムではテレビ観戦が難しいので、ほとんどは後から見ることになるのはちょっと残念ですね。まぁ、しょうがないけどね・・・

2024年7月30日火曜日

リトル・マエストラ (2012)

「ギャルバサラ(2011)」に次ぐ有村架純主演第2作目で、(おそらく)十代最後の映画。原作はいずみ♡組によるマンガで、監督は雑賀俊郎、脚本は坂口理子です。基本的には予定調和で進むような、起承転結がはっきりしたわかりやすい映画。

石川県の過疎化が進む小さな漁村の話。町には漁師たちを中心とした、お世辞にも上手とは言えないオーケストラがあります。アマチュア・コンクールを目指していましたが、指揮者が急逝したため、指揮者の自慢の孫娘、吉川美咲(有村架純)に急遽代役をお願いすることにしました。

都会からやってきた美咲を迎えに行った第1バイオリンの三村みどり(釈由美子)は、美咲のバリバリのギャル姿に驚きますが、話を聞いた美咲は急遽真面目な女子高生に姿を変え、とりあえずそれらしく振舞うのです。

オケのメンバーには、そろそろ船を出すのも終わりかなと考えているトロンボーンの源次(蟹江恵三)、源次とは喧嘩仲間の岩雄(篠井英介)、岩雄の孫で病気のため好きなバスケットをできないチェロの正也(上遠野太洸)、娘が東京に出て行ってしまうフルートの洋子(筒井真理子)、耳が遠いティンパニーのタツ爺(前田吟)などがいて、それぞれいろいろな想いを背負っていました。

ところが、美咲は実は「天才少女指揮者」ではなく、高校の吹奏楽部の指揮者で、部員との折り合いが悪く嫌われている存在であることがわかってしまい、売り言葉に買い言葉で美咲もメンバーにこんなオケじゃ意味が無いと言ってしまい、オケはバラバラになってしまうのでした。

しかし、タツ爺に演奏するメンバーの事も考えないと音楽は成り立たないんじゃないかと言われ、あらためて楽譜という手紙を一人一人に届けることで、もう一度やり直したいと考えるようになるのです。

でもって、再び一致団結するのですが、大事な時にあーなって、こーなって、そして、感動のフィナーレ・・・という具合で、もう誰もがだいたい想像する通りなんで、ストーリーは問題ないです。可愛い最強の有村架純を楽しめば十分です。

2024年7月29日月曜日

岸辺露伴 ルーヴルへ行く (2023)

露伴と云えば幸田露伴・・・というのは昭和のおじさんの発想。平成・令和世代には露伴と云えばマンガの岸辺露伴らしい。ほとんどマンガというものを読まない自分としては、これが何者なのかまったくわからんちんなので、まずはググってみるしかない。

元々は、荒木飛呂彦によるマンガ、「ジョジョの奇妙な冒険」の登場人物の漫画家が岸辺露伴。さすがにこのタイトルだけは聞いたことがある。この人物をメインにしたスピンオフ作品があるわけで、これらを天下のNHKが2020年から2022年にかけて9編のドラマに仕立て、最後は映画になった。

監督はドラマの演出にも関わったNHKの渡辺一貴、脚本は戦隊物や仮面ライダー物、そしてアニメ版「ジョジョの奇妙な冒険」の小林靖子。主演の露伴を演じるのは高橋一生。原作では一話のみの登場だった、飯豊まりえ演じる泉京花が相棒的な立ち位置で登場します。ドラマ・シリーズから、そこそこストーリーは改変しているにも関わらず、原作ファンからも高評価されているところが興味深い。

何とも神秘的なキャラクターの岸辺露伴の「超能力」と言えるのが、「Heaven's Door」というもので、これまでの人生をすべて文字に起こした本が相手の顔に浮き上がってくる。そして、露伴がそこに何かを書くと相手はその通りになるというもので、映画でも、この能力が大変重要な役割を果たしています。

岸辺露伴は美術品オークションに無名の画家、モリス・ルグラン作の真っ黒な絵が出品されていることを知り、会場へと足を運びます。その絵を競り落として持ち帰ると、オークションで執拗に値をつけてきた二人組の男たちに奪われます。絵の裏側には「ルーヴルで見た黒。後悔」とフランス語で書かれていました。

露伴は、マンガ家としてデヴューする直前に、居候していた祖母の家の下宿人であった奈々瀬(木村文乃)のことが頭によぎるのでした。露伴の描く絵を見た奈々瀬は、江戸時代の画家、山村仁左右衛門が書いた最も黒い絵がルーヴルにあると言っていたのです。しかし、深く悲しみをたたえ、時に激しい感情を隠さない奈々瀬は突然消えてしまったのです。

パリに飛んだ露伴と露伴の担当編集者の泉京花は、早速ルーヴル美術館に足を運び、通訳のエマ、鑑定士の辰巳(安藤政信)らと今は使われていないはずの古い倉庫に向かいます。そして、ついに漆黒の女性の絵を発見するのですが、そこにいる誰もが他人には見えない何かによって襲われていくのでした。

まず、この映画で特徴的なのはテンポ。実にゆったりとしていて、一見、抽象的なイメージ映像みたいなところがたくさんあります。時間の無駄と思えそうな感じですが、この言葉にしない映像表現の使い方が、ストーリーの一翼を担っているわけで、非現実的な展開に「本物らしさ」を加えることに成功しているようです。

また、何かが起こる過程から、起こる瞬間は省いて結果だけをゆっくり見せるのも、神秘性を目立たせて「本物らしさ」を感じさせます。つまり、「本物」を見せたいわけではなく、このストーリーの世界観に共感できるようにしているということ。

ただし、原作なりアニメ版は知らなくてもいいかもしれませんけど、やはりドラマ版は一つでも二つでも見ておいた方が映画に入りやすいのかなというのはある。不親切とまでは言いませんが、独特の世界観なのである程度の予備知識は有るに越したことは無いようです。

2024年7月28日日曜日

北海道ラーメン きむら 初代 @ たまプラーザ


もう、新しい店を開発する元気があまりないので、安定の「初代」です。

いまさら、紹介までもありません。初めて登場したのは2008年のエントリーですから、16年前ということになる。まぁ、年に数回ペースで食べに行く、言ってみればラーメン屋のホームみたいなもの。

今回は辛味噌。これも安定の選択。

最初にはこのメニューについて「見た目以上にしっかりと辛くて合わせ味噌の味もビシっと決まっています」と書いているんですが、今回食べてみて、あまり辛くないと感じたことに気がついた。

そう言えば、この店の激辛扱いの鉄火麺も「さすがに尻込みします」と書いていたくせに、その後数回食べています。

年を取って、舌がバカになってきたのでしょうか。昔よりも辛さに対して耐性ができてきたような感じ・・・少なくとも、味自体が変わったようには思えません。

でも、基本辛さにチャレンジする気はなく、美味しく食べられる範囲での辛さを求めているのは今でも変わらない。そういう意味では、初代の辛味噌は自分の中では定番中の定番ですかね。

2024年7月27日土曜日

PARIS 2024 オリンピック開会式


日本時間で本日午前2時半から、フランスはパリで、オリンピック開会式が行われました。

夜中から、寝ずに見たよという方もいることと思いますが、今回は日本と時間差がほぼ半日あり、当面熱帯夜と睡眠不足のダブルパンチが心配です。

すでに、男女サッカー予選が始まり、男子はパラグアイに快勝、女子はスペインに惜敗という結果が出ていますが、まだまだこれからです。

今回の開会式で、初めてで画期的だったのは、競技場ではなくセーヌ川を中心に式が行われたというところ。選手の入場行進はトラックではなく、100隻近い船でセーヌ川を順番に航行しました。

また、それらの光景は川沿いで無料で観客が見れたというのも、金の問題が取り沙汰されやすいオリンピックとしては英断だろうと思います。また、選手登場とフランスらしいアーティスティックなパフォーマンスが並行して行われたのも珍しい。

ただし、間延びした感はあって、まとまった「ショー」としての面白さはかなり減ってしまった感じ。さらにあいにくの天気で、事前にアナウンスがあった「夕日とのコラボ」が実現しなかったのも残念でした。

日本は、開幕直前の体操女子の問題で水を差された感がありますが、国を代表してオリンピックに参加するからには、それぞれが自分の持てる力をすべて発揮してもらいたいものです。そして、それに結果が伴えば言うことなしですね。


2024年7月26日金曜日

コクヨ GLOO


マツコ・デラックスの番組で紹介された、最新の革新的文房具をもう一つ。

今度はのり。

スティックタイプの固形のりを使うことが多いのですが、領収書とかをチャッチャと貼りまくるときは、実は液体のりの方が意外と使いやすいものです。

ところが、液体のりは水っぽいので、貼るものがしわしわになったり、はみ出ると乾くのに時間がかかる。

そこを解決したのがコクヨのGLOO (グルー)です。

何か糖分が入って、紙にしみ込みにくいためしわしわになりにくいらしい。貼った時に明らかにきれいです。

そして、塗り面が四角というのも、ありそうでなかった。今までのはどれも〇ですから、しっかり角まで塗りにくく、場合によってははみ出てしまいやすかった。

これはなかなかの一品です。

2024年7月25日木曜日

重版出来! (2016)

これも野木亜紀子脚本によるテレビ・ドラマ。2011年に第22回フジテレビヤングシナリオ大賞で脚本家デヴューして以来の東京ドラマアウォード2016 脚本賞を受賞した作品。2016年4月期に全10話で放送されました。演出は「ビリギャル」、「罪の声」の土井裕泰や以後盟友となる塚原あや子らが担当しています。

原作は松田奈緒子のマンガで、マンガ週刊誌編集部を舞台に出版業界の実態をコミカルに描いたもの。黒木華はテレビ・ドラマ初主演です。

そもそもこのタイトルは何? というところから始まりますが「じゅうばん」って本を増刷することだと思うんですが、「でき」っと続くと意味がよくわからない。ドラマを見ればすぐわかるんですが、まず、「じゅうばん」ではなくて「じゅうはん」。そして「でき」ではなくて「しゅったい」と読むんだそうです。本が売れて増刷できるという意味で、出版社の最大に嬉しいことで、これを目標に皆が頑張って仕事をするわけです。

けがで柔道を引退した黒澤心(黒木華)は、マンガで何度も勇気づけられたことから大手出版社、興都館に就職し、業界2位のコミック誌、週刊バイブス編集部に配属されます。編集長はタイガース狂の和田(松重豊)、心の指導にあたる冷静な副編集長の五百旗頭(オダギリジョー)、編集部員には、漫画家は使い捨てという安井昇(安田顕)、一途に漫画家を応援する菊地文則(永岡佑)、威勢が良い壬生平太(荒川良々)が揃っています。営業部部長は岡英二(生瀬勝久)、そして心に感化され営業の仕事に開眼する小泉純(坂口健太郎)などがいて、超ポジティブな心の周囲には様々な出来事が絶えません。

マンガ界の重鎮、三蔵山(小日向文世)のスランプの原因を発見し立ち直らせたり、辛い過去をひきづる新人マンガ家の中田(永山絢斗)がデヴューできるように走り回ったり、今は自暴自棄な生活を送るかつての人気マンガ家の娘にマンガの素晴らしさを伝えたりと、とにかく心は忙しい。

このドラマの面白さは、主人公は心で、実に気持の良い周りを元気にするキャラクターが痛快というところ。コメディなんですが、やはり無理に笑わせようとするのではなく、心の言葉や行動が、無理なく可笑しさを作り出すところが素晴らしい。そして、それらにほとんど無駄な時間を費やしていない。必要最低限、ドラマを前に進めるための情報をしっかり描き出しているのです。

そして、もう一つのポイントは、登場する主だった人々のそれぞれにしっかりエピソードを割り振って、物語の中で無駄なキャラクターがいないというのもすごいことです。興都館の社長(高田純次)が何故質素な生活にこだわっているのか、安井が何故マンガ家に厳しい態度を取るのか、小泉がなんでやる気がない「ユーレイ」社員になったのか、三蔵山の万年スタッフの沼田(ムロツヨシ)が何故独り立ちできないのかなど、それぞれが端的に深く描かれます。

連続テレビドラマの場合は、いくら演出が素晴らしくても、やはり脚本家の技量がかなり大きく関与すると思います。最初からゴールをしっかりと考えていないと、途中で無駄な部分ばかりが目立ってしまいます。野木亜紀子の脚本が注目されるのは、おそらく全体の構成力が際立っていて、ストーリーが破綻せずにキャラクターを丁寧に描いているところにあるように感じました。

2024年7月24日水曜日

夏休み


あっ、夏休みなんですね。

気がつけば、7月も下旬。早い物です。

朝、近くの公園に人がわんさか集まっていて、それもこどもたちが中心。なるほど、ラジオ体操だな、夏休みに入ったんだと気がつきます。

自分が小学生の時は・・・あったのかもしれませんけど、少なくとも地域の自治会主体のこのような集まりは無かったように思います。

スタンプを集めるんでしょうけど、それが楽しみな子はどんだけいるのか・・・

そんなことより、毎日ダラダラしやすい長期の休みですから、生活のリズムを作ると言うことが大事。

ラジオ体操もしっかりすれば、とても体に良いことなんで、がんばって出きるだけ参加することは意義がありますね。

2024年7月23日火曜日

フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話 (2018)

脚本家、野木亜紀子がNHKでの初仕事になったスペシャル・ドラマ。ネット社会で真偽も確認されないような、まことしやかな話が毎日のように拡散する時代をテーマにした、他人事で片付けられないようなストーリー。

大手の新聞社からネット・メディア「イーストポスト」に出向中の東雲樹(北川景子)は、ネットの「鶴亀食品の人気インスタント麺に青虫が混入していた」という猿滑(光石研)のツイートに注目します。

このツイートは瞬く間に拡散し、鶴亀食品は一気に業績が悪化。似たような異物混入を報告するブログがいくつも登場し、東雲はそもそもがフェイク・ニュースだという記事をかきます。

今度は東雲が多くの誹謗中傷を受けることになり、いい加減な噂がネットの中で広がり続けます。東雲は新聞記者時代に、経産省官僚の最上(杉本哲太)の不正を取材し、セクハラをされた際に得意のテコンドーで最上に怪我をさせた過去がありました。調べていくと、収益目的で猿滑のツイートに便乗するブログを書いた者やインチキのニュースサイトに誘導する者などがみつかります。

新聞社の同僚だった西(永山絢斗)からの情報もあり、これらの情報操作を画策しているのは、県知事選に立候補している最上の疑いが浮上します。東雲はさらに深く真実を探し求めて、取材を続けるのでした。

ネット社会の怖さを描いたものとしては、2012年の「白ゆき姫殺人事件」(原作は湊かなえの2011年の小説)が先駆的作品として思い出されます。野木作品では、憶測が事実のように拡散していく怖さだけでなく、どうやってフェイクが作られていくか、そしてどうやって対処すれば良いのかという点を深く掘り下げようとしています。

ただ、その結論は一度ネットに上がった話題は永遠にネットの中を漂い続けるということ、そして人々が自らの正義だとバラバラに主張することが、まるで善も悪も無い、まるで「戦争」のようなものという悲しい現実です。人々がそこまでおかしなことにならないと信じたいところはありますが、多少なりとも「かもしれない」と思わせるところが脚本の妙味です。

ネットの中で検索だけでニュースを作り、いかに閲覧者数を稼ぐかだけが評価の対象となっているネット・メディアの実態と、北川景子のいかにも仕事のできる美人という外見も合わさって、実際に取材して真実を探りたい東雲が一人浮いてしまっている状況が過不足なく描かれています。

自分のちょっとした「つぶやき」から、社会的地位、家庭すら失う猿滑、あるいはネットで様々に誹謗される東雲の人間性などは基本的に救済されることがありません。しかし、少しだけ東雲に同調していくイーストポストの仲間を通じて、一縷の望みを託せる「メディアの良心」がわずかに垣間見えるのは見ていて助かります。

テーマがテーマだけに、野木作品の持ち味の一つである出過ぎないユーモアは封印されていますが、自身のオリジナル作品として勝負していける脚本家であることを再認識できる作品です。

2024年7月22日月曜日

カラオケ行こ! (2024)

映画、テレビドラマの製作は、プロデューサーに決定権があり、実際のところアカデミー賞の作品賞はプロデューサーに与えられるものと言われています。ただ、どのように場面を構築していくかは監督、あるいは演出家の腕次第。現実的には、それぞれが監督の作品であることは間違いない。

良質な作品を作るためには、脚本もかなり重要な位置を占めています。原作がある場合、それを3次元の世界で、しかも一定の制約の中で、ストーリーとして成立させるのは脚本家の手腕にかかっている。

最近、原作の実写化における改変について議論を呼んでいるわけですが、世界観が変わりすぎて批判されることもあるし、原作を知っていても新しい楽しみを得られると評価される場合もあり、意見は様々です。どちらの場合でも、原作者との緊密な連携があれば、トラブルは少ないはず。しかし、ヒットすれば何をしても良いというような、実写制作側の「おごり」のようなものが感じられるのは残念なところです。

野木亜紀子は作家性の強い脚本家として、注目すべき人だと思います。2010年にオリジナルの「さよならロビンソンクルーソー」で第22回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞しデヴューし、2012年には「ラッキーセブン(フジテレビ)」の半分以上の脚本を任され、松本潤、瑛太、松嶋菜々子、大泉洋、角野卓造などのそうそうたるメンツを見事に動かしました。

そして「空飛ぶ広報室(2013 TBS)」、「掟上今日子の備忘録(2015 日テレ)」、「逃げるは恥だが役に立つ(2016 TBS)」、「獣になれない私たち(2018 日テレ)」と新垣結衣の主演ドラマを連続4作担当しました。また「アンナチュラル(2018 TBS)」、「MIU404 (2020 TBS)」などのヒット作も手掛けています。特に「アンナチュラル」以後は、すべてテレビでは原作も自ら手掛けるオリジナル作品だけというのが特筆すべきポイントです。

映画でも「図書館戦争(2013~15)」の全シリーズを皮切りに、「アイアムヒーロー(2016)」、「罪の声(2020)」などの話題作を担当しました。そして、もうじき、「アンナチュラル」と「MIU404」の世界観をクロスオーバーさせた「ラストマイル」の公開が迫っています。

目下のところ、野木亜紀子脚本の最新作はこの映画です。原作は和山やまのマンガで、監督は山下敦弘。

森丘中学の合唱部の部長をしている岡聡実(斎藤潤)は、合唱コンクールの帰りに突然祭林組若頭補佐の成田狂児(綾野剛)に「カラオケに行こう」と呼び止められます。組長の誕生日に行われる恒例のカラオケ大会で、一番下手な者が組長自ら下手糞な刺青をされてしまうので、歌い方を教えろということでした。X JAPANの「紅」を熱唱する狂児は、お世辞にもうまいとは言えない。

なりゆきで付き合うことになってしまった聡実でしたが、変声期を迎えて担当のボーイ・ソプラノがきつくなっており悩んでいたのです。秋の合唱大会の当日が祭林組のカラオケ大会でした。バスでいつものカラオケ店の前を通りかかった聡実は、店の前に潰れた狂児の車と力なく救急車に運ばれる男性を目撃してしまうのでした。

野木亜紀子の脚本がどんな特徴があるのかを論じるだけの知見は持ち合わせていませんが、どの作品でも言えることは登場人物のキャラクターが立っているなと感じます。この映画でも変声期を迎えた思春期のビミョーな時期の中学生、通すべき筋は通しカラオケに真剣に取り組もうとするヤクザという、対照的な二人なのにしだいに「ともだち」になっていく過程に無理を感じません。

内容だけ聞けばコメディなんですが、無理に笑いを取るようなユーモアはほとんどなく、自然な彼らの行動がじわっと可笑しさを出しているあたりは好感が持てるところ。聡実の本音の部分も、映画独自の「映画を見る部」というものを設定して、その中で垣間見えるというのもなかなか良いアイデアでした。

いずれにしても、過ぎ去っていく時代、それは変声期を迎えた中学生であったり、古いタタイプのヤクザであったりするわけですが、それらの哀愁みたいなものをうまく映像の中に表現した作品であろうと思いました。

2024年7月21日日曜日

ORENZ


そもそも文房具の基本中の基本は紙と筆記具だと思うんです。鉛筆があるから、消しゴムや筆箱に価値があるわけですし、紙があるからハサミやのりが必要になる。ところが、世の中のデジタル化の中で、紙と筆記具は急速に使用頻度が減少しています。

本屋さんが減っているというのはしばしば話題になりますが、文房具屋さんも見かけなくなってきました。ところが、逆にアナログなものに新鮮な楽しみを発見する若者が増えているというのも事実で、我々昭和人の常識を覆すような画期的な文房具も増えています。

そんなわけで、マツコ・デラックスの番組で紹介された文房具を、さっそく買ってみました。

一言で云えば「シャーペン」なんですが、シャープペンシルは削らずに書き続けられる鉛筆として、たぶん自分が小学生高学年ごろから一般に普及したと思います。ある意味、革命的に「書く」という行為が楽になった。

ただし、芯が細いので、ちょっと力を入れると芯がポキポキ折れてしまう。ついつい、カチカチとノックし過ぎるのもダメ。そこで、最近画期的な製品がぺんてるから登場していました。

その名は「ORENZ(オレンズ)」です。芯が「折れんず」というわかりやすいネーミングの是非はともかく、セールスポイントは芯が折れないというもの。

ノックは1回。芯がカバーと一緒に出てきて、書いて芯が擦り減るのに合わせて、カバーがスライドしていくことで邪魔をしないというもの。

芯を強力に保護できるので、0.2mmという信じられない細さの製品もラインナップされています。あまりの人気で入手困難になっている。今回は在庫があった0.5mmを手に入れましたが、一番馴染みのある太さなので、字を書くという目的では書き味は何の問題もありません。

確かに1回のノックで芯がカバーごと出てきて、普通に書く分には通常の数倍は書き続けられる印象です。シャーペンを使う時のストレスがかなり軽減されることは間違いなく、なかなか面白い製品です。

2024年7月20日土曜日

グッドモーニングショー (2016)

おそらく、おそらくですよ、各テレビ局が放送し続ける朝のワイドショーの実態をかなり暴露するような内輪ネタ映画・・・ですけど、それなりに楽しめるところはさすが。何しろ、脚本・監督が「踊る大捜査線」シリーズを作った君塚良一です。業界の事は一から百まで、いや万までよ~く知り尽くしています。

朝のワイドショー担当するメイン・キャスターは澄田真吾(中井貴一)、サブに入る女子アナは小川圭子(長澤まさみ)と新人の三木沙也(志田未来)。プロデューサーの石山聡(時任三郎)は、マンネリで人心一新が検討されていることを澄田に伝えます。

この日、いつものように午前3時に起床した澄田は、いきなり息子からできちゃった結婚すると告げられ、出社すると勘違い女子の圭子に私たちが付き合っていることを放送中にカミングアウトすると言われ、報道部からは低俗なワイドショーと嫌味を言われる。

それでも、いつも通り8時になると番組をスタート。いつもと同じと思いきや、突然入ってきた「立てこもり事件」の速報。テレビ局から近い場所で、猟銃を持った男が人質を取って立てこもったのです。しかも、犯人の要求は、何と澄田を連れてこいというものでした。

視聴率のためなら何でもしなきゃいけない澄田は、しかたがなく現場に急行し、隠しカメラ・隠しマイクをしたためて警察に守られて店に入るのでした。犯人の西谷颯太(濱田岳)は、澄田にワイドショーが散々嘘をまき散らしてきたことを土下座して謝罪しろというのです。

前半、生放送のテレビ番組が作られる仕組みの一端が事細かに見せられるのは、楽屋を除くような新鮮さがあり、本物を見たことが無くてもなるほどと納得できます。後半の犯人説得は、さすがにそんなこと警察がさせるわけがない。

でも、怒涛の勢いで番組が進行するのと同じで、映画を見ている側もそれが嘘だろうとか考える暇がありません。一気に押し切ってしまう、企画力の勝利ということでしょうか。こういう真面目そうなキャスターの役には、中井貴一はぴったりというところ。直接ストーリーに関わるわけではありませんが、長澤まさみのいかにも「女子アナ」風のキャンキャンした雰囲気が良いアクセントになっています。

特別に世間に訴える内容があるとは言えませんが、ワイドショーの功罪をうまくまとめ上げているところが見どころというところでしょうか。

2024年7月19日金曜日

梅雨明け


関東地方が、昨日梅雨が明けたようです。

去年は7月22日で平年より3日遅れ・・・ということは今年はちょっと早かったということになるんでしょうかね。

ドバーっと雨が降った時もありますが、空梅雨とまではいかないにしても、トータルとしてはあまり雨が降った印象がありません。

うちは、雨漏りの影響で扉の一つが閉めにくくなる(!!)ので、毎年の梅雨時は困るんです。ところが、今年はあまりそのような事態は経験しなかったので、少なくともぶっ続けで雨が降ることはなかったことは間違いありません。

何にしても、これからは灼熱地獄がつづくのかと思うと、それはそれで憂鬱ですね。

2024年7月18日木曜日

劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- (2018)

コード・ブルーというのは、病院内で心肺停止となった人が出た場合に、医療スタッフに知らせるための全館放送のこと。自分が大学病院にいた時は、「CAC、××病棟・・・」というコールでした(Cardic Arrest Call、心停止の呼び出し)。1年目の時、内科病棟でCACがかかり、駆け付けたら一番乗りしてしまいチョー焦ったことがあります。

医療系ドラマは嘘がわかってしまうのであまり見ないのですが、「TOKYO EMR」よりは現実味があり、若い医師たちの成長に主軸があるので、これはけっこう楽しめます。神がった医師が登場する「ドクターX」とか「ブラックペアン」はありえないし、「白い巨塔」のような権威主義に凝り固まったのも嘘臭くてダメ。

2008年から始まったテレビ・ドラマ「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命」は、大変人気を呼び、2009年にスペシャル・ドラマ、2010年に2ndシーズンが放送され、緊急時にヘリで駆け付ける若い救急救命医師たちの成長が描かれました。さらに2017年に彼らの下に新たな若い研修医が配属される3rdシーズンが放送され、その延長として10年間の完結編となる劇場版が2018年に公開されました。シリーズ全体の演出に関わった西浦正記が監督を務め、3rdからスタッフになった安達奈緒子が脚本を担当しています。

ヘリコプターに搭乗して現場に直接医師が出向き、救える命を一人でも増やすというドクターヘリのフライトドクターの認定を取得した藍沢耕作(山下智久)、白石恵(新垣結衣)、緋山美帆子(戸田恵梨香)、藤川一男(浅利陽介)と、1人のフライトナース・冴島はるか(比嘉愛未)は、翔陽大学附属北部病院救命救急センターで苦楽を共にしてきた仲間。彼らの下に配属されたのは、フライトドクター候補生の名取颯馬(有岡大貴)、灰谷俊平(成田凌)、横峯あかり(新木優子)と新人フライトナースの雪村双葉(馬場ふみか)です。

今回のストーリーで扱われる大きな出来事は、成田空港での旅客機着陸失敗による事故と海ほたるへのフェリーの衝突事故。例によって立て続けに大きな事故が起こるのはストーリーを進めるうえでしょうがないのですが、実は間に挟まった雪村とアルコール依存症の母親とのエピソードが重要。これまでにも藍沢や白石の家族との関係が描かれ、彼らが成長する過程で家族との関りも大きなカギになっています。

基本的には、劇場版だけを見ても楽しめるとは思いますが、主要登場人物の動きは、10年かけて積み上げてきた細かいエピソードが様々な形で反映されたもの。はっきり言って、過去のテレビ・シリーズを知っているか知らないかで、映画への没入感はかなり大きな差が出るところ。おそらく制作サイドも、ずっとファンでいてくれた人々へ一定の決着を見せることをものすごく意識したのだろうと思います。

そういう意味で、「映画」としての評価はなかなか難しい。2時間程度の一定の枠内で何らかのドラマを見せるものとしては明らかに不親切で、明らかに大河ドラマの最終回みたいなものになっています。ですから、通常の映画ファンにはあまりお勧めできないかもしれません。映画は山ピーやガッキーのファンという方向けなんですが、もっともそういう方はテレビ・シリーズもずっと見てきたとは思うので、特に問題はないのかもしれません。

2024年7月17日水曜日

パレード (2024)

最近は、映画もネット配信という方法が多くなり、けっこう早くに家で最新映画を楽しむことができます。特にNetflix、HuLu、Amazon Primeなどは比較的良質の作品を配信することが多く、既存の映画会社には無い新しい映画の形を提供しているのは注目すべきところです。

この映画も、そのようなネット配信の最新作の一つ。監督は37歳という若さにもかかわらず、すでに「新聞記者(2019)」で注目される藤井道人。脚本は「百円の恋(2014)」の足立紳です。

津波に呑み込まれ海岸に打ち上げられた美奈子(長澤まさみ)は、離れ離れになった息子を探して瓦礫の山となった街の歩いて救護所にたどりつきますが、誰も自分に関心を持たず、話しかけても返事すらしません。再び街に出ると、一台の車の男性が通りすがりに「大丈夫ですか」と声をかけてくれました。

アキラ(坂口健太郎)と名乗る男性は、街から離れた廃遊園地に美奈子を連れていきますが、そこにはやたらと口数が多いマイケル(リリー・フランキー)、皆の食事の面倒などを見るスナックのママ(寺島しのぶ)、ヤクザのせがれの勝利(横浜流星)、新聞ばかり読んでいる無口な田中(田中哲司)がいました。

かれらの話から、美奈子はすでに死んでいること、現世に強い未練を残した者たちが「あっちの世界」との間でとどまる場所であることが伝えられます。最初は受け入れられない美奈子でしたが、しだいに状況を理解し、息子の安否を調べるようになりました。

ママは自分のこどもたちが無事に大人になるのかを見届けたい、アキラは無骨な父親が自分のことを小説に書くようになったのでその完成を待ちたい、マイケルは別れた恋人にちゃんと謝りたいなどの未練があったのです。そういう思いを持った死者は他の場所にも大勢いて、月に一度全員が街の通りを行進するのが恒例で、そこで会いたかった人を探すのでした。

勝利は組の抗争で死んで、残した恋人がどうなったかが気がかりでした。自分の七回忌の法要を遠くから見つめていた女性を見つけると、彼女が今でも自分の事を忘れずいること、でもその上で新しい幸せを掴もうとしていることがわかり安心します。勝利は田中に「行きましょう」と云います。田中はこの世界の「監視員」で、思いの整理がついた人々を「あっちの世界」に導く係だったのです。

新たにセーラー服の高校生ナナ(森七菜)が仲間に加わります。彼女はいじめを苦にして自殺したのでした。マイケルはみんなに協力してもらい、自分の過去をストーリーにした映画を撮り始めます。そして、美奈子は息子が無事に施設で生活し始めたことを知らされるのでした。

死後の世界を舞台にしたストーリーはたくさんありますが、この世に未練があり成仏できずに「彷徨える幽霊」となった人々を描くというのは新鮮な着眼点かもしれません。生き残っている者にも、死者に対する未練はあるはずで、そういう意味では現世と映画の世界は合わせ鏡のような存在なのかもしれません。

ただし、こっちから向こうには行けるかもしれませんが、向こうからこっちには戻ってこれないというところが決定的な違いです。自分の死を納得できる形にするのは、とても大変なことなんでしょう。特に事故などで突然の死を迎えた方には、並大抵のことではない。この映画では、死んで終わりではなく、死んでから始まるストーリーがあることを教えてくれます。

もちろん、あくまでも生きている人の想像にすぎませんが、誰もそんな世界を生きているうちに知ることはできないのですから、ファンタジーと言ってしまえば確かにその通りです。でも、一欠片のリアルを感じることがあれば、この映画は成功といえるのかもしれません。

注) 2月に公開されたばかりなので、紹介しているBlurayはおそらく中国製で正規品ではありません

2024年7月16日火曜日

キャラクター (2021)

監督は永井聡。原案と脚本は長崎尚志による、いまどき珍しいマンガと関係ないオリジナル作品。主演は飛ぶ鳥を落とす勢いの菅田将暉で、脇を固めるのが小栗旬なんですが、何といってもSEKAI NO OWARIのFukaseが、初演技でサイコパスを演じるのが最大の見物です。

人気マンガ家のアシスタントをしている山城圭吾(菅田将暉)は、作画能力が高いことは誰もが認めるものの、読者を魅了するキャラクターを描けないため、自身が自立することを諦めかけていました。

アシスタントとしての最期の仕事、「幸せそうな家」のスケッチをするため夜の街に出た山城は、クラシック音楽が聞こえてくるモダンな一軒家を見つけます。スケッチをしていると、近所の家から顔を出した人に「音楽がうるさい。止めるように言ってくれ」と頼まれ、家の中に入ってしまいます。

そこで山城はが目撃したのは、食卓を囲むように椅子に縛り付けらた4人家族の惨殺遺体でした。そして、庭から出ていく犯人を目撃しますが、真壁(中村獅童)や清田(小栗旬)ら警察の取り調べでは「誰も見ていない」と証言します。

山城は憑りつかれたように事件をヒントにして、目撃した犯人の姿を主人公にしたマンガ「34(サンジュウシ)」を書き始めます。これが大人気となり、1年後には恋人の河瀨夏美(高畑充希)と結婚してタワーマンションに引っ越していました。

そして山林の中で林道から転げ落ちた車の中で、あらたに4人家族の惨殺遺体が見つかります。清田は事件の様子が「34」で描かれたものと酷似していることに気がつき、山城に話を聞きに来ます。そして、もう一人、両角(Fukase)と名乗る青年も山城に接触してくるのでした。山城は両角を見て凍り付くのでした。

基本的には犯人が分かっているサイコ・スリラーですが、犯行の動機や山城との対決、そして衝撃的な小栗旬の役回りなどの見所満載の映画。とは言っても、2時間程度の映画の中で描くには話の展開が早すぎて、それぞれの人物描写が物足りない。それぞれの「キャラクター」が特徴的なのに、ネタの掛け捨てになっているような印象です。

その結果、誰にも感情移入できないので、映画の世界に没入しにくいところがあるように思いました。ただし、Fukaseの演技そのものは初めてとは思えない注目のものです。直接的な猟奇殺人のシーンはほぼ無いのですが、十分にサイコティックな怖さが伝わってきます。

全体のコンセプトは面白いので、ネット・ドラマで5~6話くらいで、もう少し丁寧に描かれるともっと興味深く仕上がったのではないかと感じます。

2024年7月15日月曜日

メタモルフォーゼの縁側 (2022)

名子役と言われたけど、大人になっても輝きを失わない俳優は必ずしも多くはありません。2009年デヴュー当時5歳だった芦田愛菜は、つし最近20歳になりました。2011年にドラマ「マルモのおきて」でブレーク。中学生~高校生は学業を優先してメディア露出は少な目でしたが、久しぶりにこの映画で、錆びつかない見事な演技を見せてくれます。

原作は鶴谷香央理の漫画で、監督は「青くて痛くて脆い(2020)」の狩山俊輔、脚本は「ちゅらさん」、「ひよっこ」の岡田惠和。「メタモルフォーゼ」とは「変化」とか「変身」という意味。

高校生の佐山うらら(芦田愛菜)は、いろいろなことを気にするタイプ。自分を表に出すのが不得意で、同級生で幼馴染の河村紡(高橋恭介)が他の女の子と仲良くしていることも気になっている。うららが本屋でバイトをしていると、75歳の市野井雪(宮本信子)が表紙の絵がきれいという理由でBL(ボーイズ・ラブ)コミックを買っていきました。

うららは雪が何度か訪れるうちに会話をするようになり、他のBLコミックを貸してほしいといわれ雪の自宅にも訪問するようになります。二人は年齢を超えてともだちになり、BLの魅力で大いに盛り上がるのです。

マンガを描くことも好きなうららは、自分が描くから二人で同人誌販売会に出ようと雪を誘います。その当日、雪が腰を痛めたため、一人で販売会に行ったうららでしたが、自分の場所を開くことができずにいました。そこへ紡がやって来て、「僕はこの話好きだよ」と言って1冊購入してくれたのです。

雪は知り合いの助けで車でなんとか近くまできたところで、車が故障し立ち往生。そこへ通りかかった販売会帰りの女性が、うららのマンガに興味を示し雪が持っていた一冊を買い取ってくれました。その女性は二人が大好きなマンガの作者であるコメダ優(古川琴音)だったのです。

雪の自宅の縁側で、二人がいろいろと語り合ううちに年齢差を超えた大切な時間を過ごし、まだまだ大人になり切れない不安定な揺れる思いを抱えるうららは、しだい自分の思いを表に出すように変わっていくのです。雪はこどもの頃を思い出し、自分にもまだ挑戦できることが残っていたことに気がつき、それぞれが「メタモルフォーゼ」していく。

大袈裟な波風が立つわけではありませんが、少しずつ汐が満ち引きするような内容で、最後まで飽きずに見ることかできました。BLについては趣味じゃないのでよくわかりませんが、登場する二人にとっても、おそらく遠いところにある存在だと思います。でも、遠いからこそ、未来を見るため、過去を振り返るためのきっかけとして機能したように思います。

2024年7月14日日曜日

そらのレストラン (2019)

大泉洋主演の伊藤亜由美企画・製作の北海道シリーズ第3弾。今作の舞台は、札幌と函館の中間、日本海に面するせたな町で、「海が見える牧場」です。前2作と異なり監督は深川栄洋、脚本は土城温美が担当しています。

設楽亘理(大泉洋)とこと絵(本上まなみ)の夫婦、そして娘の潮莉(庄野凛)の三人は、海が見える牧場を営み、採れた牛乳でチーズを作っていました。

幼馴染でもある近所の農家の富永芳樹(高橋努)、石村甲介(マキタスポーツ)と妻の美智(安藤玉恵)、イカ釣り漁師の野添隆史(石崎ひゅーい)と言った友人たちと毎日を過ごしていました。そこに脱サラで牧羊を始めたばかりの神戸陽太郎(岡田将生)が加わり、より賑やかさが増してきました。

彼らは収穫物を朝市に持っていくと、札幌の有名シェフである朝田一行(眞島秀和)がその美味しさに感動して、皆にそれらを使った創作料理をふるまいました。それぞれが、自分の作ったものには自信がありましたが、さらに美味しくなったことに驚きます。そして、この美味しさをもっと多くの人に知ってもらおうと、一日だけの「レストラン」を開こうということになります。

亘理は父親が亡くなり牧場を継いだ時に、近くのチーズ工房の大谷雄二(小日向文世)にこの牛乳じゃないとチーズが作れないと言われ、出来上がったチーズの美味しさに感動してチーズ作りの教えを請うたのです。以来、大谷を師匠と仰ぎ、度々味見してもらいますが、なかなか理想の味にたどり着けない。大谷の妻、佐弥子(風吹ジュン)はこと絵や美智らとの交流の中で、やさしい祖母のような役割をしていて、まるで仲間全員が一つの家族のようでした。

ある日、亘理は出来上がったチーズを大谷に吟味してもらうため持っていくと、彼は口にする前に「なんでチーズを作っているんだ。お前は・・・」と言いかけて倒れます。そのまま帰らぬ人になってしまい、師を失った亘理は目標を失ったことで牧場もやめると言い出すのです。

仲間たちがそれぞれのやり方で励ます中、佐弥子から贈られた鍵で工房に入った亘理は、たった一つ残っていた初めて牛乳を届けた日に作られたチーズを見つけます。それを食べてみると涙が流れ、亘理はやっと「大谷さんのチーズ」ではなく「自分のチーズ」を作らないといけないことに気がつくのでした。

ファンタジー色が強く、心が現れるようなやさしさが描かれた前2作に比べると、ストーリー性が強調され、起承転結がはっきりした内容になりました。前のふわっとした雰囲気が好きな人にはちょっと現実感が強すぎるかもしれませんが、物語としての面白さは一番かもしれません。

冒頭、吹雪の中、「海の見える牧場」を見たくてやってきたこと絵が初めて亘理と出会うシーンは、いろいろ賛否両論がありそうです。いきなり10年後に三人家族になっているのですから、話が突飛すぎる。ただ、この地で生活する厳しさ、その中で作られる牛乳の良さ、そして亘理とこと絵の人間性みたいなものが端的に伝わるシーンであり、夏の牧場のさわやかな雰囲気をより強調する役割があるように思います。

2024年7月13日土曜日

ぶどうのなみだ (2014)

北海道を愛する伊藤亜由美が企画し、盟友・大泉洋を起用して北海道の魅力を伝える映画の第2弾です。今回も監督と脚本は三島有紀子が担当し、空知でオール・ロケが行われています。

アオ(大泉洋)は、空知で小麦畑で生業とする父親(大杉連)に反発し家を出て、オーケストラ指揮者として名が知られるようになります。父親が亡くなっても葬儀に出席することが無かったアオでしたが、突発性難聴で夢を断念せざるをえなくなりました。小麦畑を継いだ弟のロク(染谷将太)のもとに戻ったアオは、ブドウを植え付けワイン作りを始めますが、なかなか思ったようなワインができません。

ある日、キャンピングカーでやってきたエリカ(安藤裕子)が、ブドウ畑沿いの道路に穴を掘り始めます。アオは勝手なことをするなと怒りますが、ここはあたなの土地じゃないとあしらわれてしまいます。調べに行ったアオの友人たち、しまいにはロクまでも、エリカと宴会を楽しむ始末に、アオは面白くない。

自分を残して出て行った母親との唯一の絆であるアンモナイトの化石を集めるため。エリカは穴を掘っていたのです。アオは一生懸命なエリカの姿に少しずつ心を開き、アオのワインは泥臭いが美味しいと言います。今年の新しい樽を開いたアオは、思い通りにいかないことにイラ立ち、樽を捨て研究の資料などをぶちまけてしまいます。

ロクは、アオが家を出るきっかけになったアオの音楽のトロフィーを捨てたのは父親ではなく自分であること、そして拾い上げた父親が大事にしまい込んでいたことを話します。やっとアンモナイトを見つけたエリカは、アオに手紙を残して突然いなくなってしまうのです。

最後の最後までまったく笑顔を見せない大泉洋というのは、他には無いかもしれません。いつもの明るいキャラを封印して、シリウスな演技に徹する大泉というのも珍しく、この映画の見所の一つになっています。

ヒロインの安藤裕子は、横浜出身の女優で歌手活動も頑張っています。最初のうちは不思議チャンキャラなんですが、自らの心の傷を癒すために信念を持って行動する女性であることがわかる難しい役どころを好演しています。

前作もそうなんですが、北海道の自然の美しさは目を見張るものがあります。それがこの映画の大元にあることは間違いなく、ファンタジー風のストーリーや登場人物に違和感を感じたとしても、それを積み込んで許容してしまう魅力と言えそうです。

タイトルの「ぶどうのなみだ」は、春になると剪定した枝から水が染み出て活発な命の活動が再開されることを意味しており、登場人物たちの再生をあらわす言葉ということです。

2024年7月12日金曜日

しあわせのパン (2012)

北海道に根を下ろした多くの作品をプロデュースし、北海道出身ののスター大泉洋と度々タッグを組んでいる伊藤亜由美の企画から生まれた、北海道の自然の美しさと厳しさを映画の中に落とし込んだ作品。

北海道、洞爺湖西岸に実在するゴーシュという喫茶店がモデルになっていて、ロケもこの店を中心に行われました。監督・脚本は三島有紀子、原田知世と大泉洋のW主演で、1年近くかけて四季の景色を映しこみました。

水縞尚(大泉洋)とりえ(原田知世)の夫婦は、洞爺湖を望む高台にロッジを経営し、1階のカフェ・マーニには尚が焼くパンとりえが淹れるコーヒーが名物となり、ちょっと変わった常連客がたむろするようになりました。

夏のある日、彼に旅行をドタキャンされた香(森カンナ)がやってきます。たまたまやってきた常連の時生(平岡佑太)にも香は酔った勢いで絡みますが、水縞夫妻のもてなしと時生の優しさによって、しだいに本当の幸せに少し気がつくのでした。

秋のある日、父親(光石研)と暮らす小学生の未久(八木優希)が店にやってきました。未久は一人で過ごす時間ばかりで、父親とも話をする時間がほとんどありません。りえは未久の気持ちを察して、父親と二人の食事をセッティングします。

冬のある日、吹雪の中、坂本夫妻(中村嘉葎雄、渡辺美佐子)がやってきます。二人は生きていく希望を失い、新婚の思い出の地にやってきたのです。尚とりえは、二人の不審な雰囲気を察して、人生に楽しみがあふれていることをあらためて気がついてもらえるよう仕向けるのでした。そして春がやって来るのです・・・

終始、北海道の景色を背景に、水縞夫婦の温かさがゆったりと流れる時間の中に描き出されています。大きな事件が起こるわけではありませんが、見終わって何となく気持ちが優しくなれる気がします。

大泉洋もここではギャグを封印して、素敵な大人を演じているのですが、これはこれで一つのはまり役という感じがします。原田知世は相変わらずの透明感のある美しさで、映画の雰囲気をしっかりと代弁していました。


2024年7月11日木曜日

セブンのおにぎり 43


季節限定のコンセプトおにぎりが登場です。

夏!! っということで、夏祭りの屋台をイメージしたと思われる二品です。

「玉子をのせた そばめし」はそのまんまソース焼きそばを細かくしてご飯と混ぜたもの。具材としては、キャベツ、豚肉、天かすなどが何となく入っています。

一番の売りはタイトルにもある「目玉焼き」風の薄いたまごがのっていること。おにぎりと薄焼き卵の間にはあおさ入りマヨネーズで、焼きそば感をアップさせています。

味は濃い目。いかにもB級グルメのソースの味がたっぷり味わえます。

もう一つは、「こんがり焼いた 焼きコーン」です。醤油をかけて焼いた屋台のとうもろこしをバラバラにして、バター醤油ごはんと混ぜたもの。

こういうトウモロコシが好きなので、登場したのは嬉しいし、当然想像通りの味で文句はありません。

ただ、とうもろこしがバラバラと落ちるので、食べにくいったってありゃしない。思い切り包装を切ってはいけないやつです。食べるときはご注意を。

2024年7月10日水曜日

銀魂2 掟は破るためにこそある (2018)

福田一雄の脚本・監督による人気マンガ「銀魂」の実写化第2弾。

一作目はついやや褒めてしまったのですが、2作目は・・・はっきり言って遊びすぎ。

坂田銀時(小栗旬)、志村新八(菅田将暉)、神楽(橋本環奈)の万事屋三人衆が主役のはずなんですが、ほぼギャグをするための登場で、特に彼らがメインの前半はダラダラと笑えないネタが延々と続く・・・というとこの映画ファンからはお叱りを受けるかもしれませんけど、どう考えても調子に乗って悪乗りしている。

メインのストーリーの本当の主役は真選組。幕府を潰したい高杉晋助(堂本剛)は、真選組副長の土方十四郎(柳楽優弥)の首にヘタレチップを打ち込み、超硬派の土方をいっきにヘタレに変身させて真選組から追い出します。そして、局長近藤勲(中村勘九郎)の信認厚い伊藤鴨太郎(三浦春馬)に、真選組の乗っ取りをさせようとするのです。

鴨太郎は近藤を乗せた列車を、自分の配下だけにして近藤暗殺を企てます。しかし、沖田総悟(吉沢亮)は一人、近藤を守るため奮闘するのです。ヘタレになった土方は最後の真選組としての思いを銀時に託し「真選組を守ってくれ」と頼むのでした。土方をつれて万事屋の三人は、列車に追い付き沖田を援護するのです。

江戸では、高杉の配下、千人斬りの河上万斉(窪田正孝)が将軍(勝地涼)の首を狙って江戸城に攻め込みます。急遽江戸にもどった銀時は万斉と、そして戦いの中でヘタレチップを無効化することができた土方は鴨太郎との決戦に挑むのでした。

福田監督の悪いところがいっぱい詰まった映画・・・と言うと言いすぎかもしれませんが、申し訳ありませんが二度と見ないと思う作品になってしまいました。ただし、唯一見るべきところは、今は亡き三浦春馬の演技。徹頭徹尾ギャグ無しで、孤独な鴨太郎をシリアスに演じていました。

2024年7月9日火曜日

さんじゅうきゅうどぉ~ 2024


先週からだいぶ暑くなってきて、梅雨の湿気でムシムシするわでとにかく不快な日が続きます。

横浜界隈では、去年、38゜突破が7月11日、39゜は7月19日、そして40゜の大台が8月5日というのが自分の記録。

今年は、昨日は朝から30゜近い気温があり午後にはついに39゜まで上がりました。地図で見ると関東から東海地方は真っ赤っかです。

体感温度50゜とか表示されると、もう普通に外を歩ける気温じゃない。

夕立があってちょっと涼しくなった昭和の夏が懐かしい~




2024年7月8日月曜日

銀魂 (2017)

実際、「巨人の星」とか「あしたのジョー」でマンガ歴が停止している自分としては、ほとんどのマンガは未読。ですから、映画で実写化したといっても、元々を知らないのであまり原作との差異は気にならない・・・ってか、気にできない。

21世紀の空知英秋の「銀魂」は、まったくわからない。わからないにも関わらず「SF人情なんちゃって時代劇コメディ」と作者自ら称しているところとキャスティングに興味があって映画ならというわけで見てしまいました。

原作を知らないと、この独特過ぎる世界観はわずかな説明しかないのでかなり理解に苦しむと思いきや、見ているうちに何となくわかってくる仕組みになっていました。監督は例によってバカ騒ぎ大好きなギャグ映画が得意の福田雄一で、当然脚本も監督本人が担当。福田作品らしくくだらないしょーもないギャグ満載なんですが、テンポが良いので見れる作品でした。

未来感のある世界ですが、時代は江戸末期。天人(アマント)と呼ばれる宇宙人の襲来によって、将軍は天人の軍門に下り幕府は傀儡政権になってしまいました。かつて吉田松陽の塾で学んだ坂田銀時(小栗旬)、桂小太郎(岡田将生)、高杉晋助(堂本剛)らは天人に戦いを挑んでいましたが、今では散り散りになり刀も失い隠遁生活を送っていました。町では治安を守るため真選組が組織され、局長の近藤勲(中村勘九郎)、副長の土方十四郎(柳楽優弥)、沖田総悟(吉沢亮)らが幅を利かせていました。

銀時は町で何でも引き受ける万事屋を商売にして、元剣術道場の跡取りで弱虫の志村新八(菅田将暉)、宇宙最強の夜兎族の少女である神楽(橋本環奈)らと生活していました。銀時は刀鍛冶の村田鉄也(安田顕)から連絡を受け、盗まれた亡き父の打った名刀「紅桜」を探すよう依頼されます。そのころ江戸の町に辻斬りが出没し、銀時の昔馴染みの桂が斬られます。

桂を斬ったのが紅桜を手にした岡田似蔵(新井浩文)であることがわかり、銀時は仁蔵と戦うのですが、紅桜の強大な妖力の前に重傷を負ってしまいます。桂の匂いをペットの巨大犬・定春に追わせた神楽は停泊中の巨大戦艦にたどり着きますが、そこは悪徳商人の武市変平太(佐藤二朗)と部下の二丁拳銃使いの来島また子(菜々緒)、そして彼らを操り江戸の町を破壊することを企む高杉晋助らのアジトだったのです。

紅桜は村田自身が打ったもので、斬れば斬るほど相手のデータを蓄積して強大化し、持つ者すら取り込んでしまう刀でした。似蔵はもはや刀と一体化した化け物と化していたのです。神楽は捕まり、助けに乗り込んだ新八も捕らえられピンチとなりますが、事件の真相にたどり着いた真選組が乗り込んできます。そして、まだ傷が癒えない銀時も決戦を挑んでくるのでした。

原作を知っている人からは、かなりマンガに近い見た目の登場人物、そしてセリフや行動も原作を損ねないので、なかなか評判は良いらしい。アクション・シーンはまずまず頑張った。CGは合格最低ラインはクリア。笑わせる部分としんみりさせる部分のバランスが丁度よいので、ギャグはやりすぎ感はあるものの作品としてはまとまった出来になっています。

2024年7月7日日曜日

キューティハニー (2004)

もともと永井豪のマンガが原作。永井豪と言えば、「ハレンチ学園」で純粋な心を持つ我々小学生にHな気持ちを植え付け、「マジンガーZ」で勇気を鼓舞したわけです。その両者を合わせたような、ちよっとエロい美少女キャラが悪者に立ち向かうというのが「キューティハニー」です。

2004年に実写映画化されたわけですが、何と監督が「エヴァンゲリオン」の庵野秀明。アニメの主題歌を今風にリメイクして歌った倖田來未も人気となり、話題性は十分でした・・・が、さすがにはっちゃけたノリについていける観客は多くはなかったようで、興行的には失敗し制作会社は倒産しています。

悪の組織、シスター・ジル(篠井英介)が率いるパンサークロー。その四天王がブラック・クロー(及川光博)、ゴールド・クロー(片桐はいり)、コバルト・クロー(小日向しえ)、スカーレット・クロー(新谷真弓)の四人です。彼らは、貴金属を大量に強奪、若い女性を大勢誘拐し、そして宇津木博士(京本政樹)を拉致しました。

宇津木博士の姪、如月ハニー(佐藤江梨子)は叔父様を救うべく、大量のおにぎりを食べてエネルギーを蓄えると愛の戦士キューティ・ハニーに変身し、博士を救出します。それを見ていた警視庁の秋夏子警部(市川実日子)は、ハニーの謎を探るべく追跡し、新聞記者の早見清児(村上淳)はパンサークローの情報と引き換えにハニーに密着取材を申し出ます。

実はハニーの父、如月博士はパンクローの手によって殺されていたのです。清児は
ハニーに、その力は復讐のためにあるわけではないと話しますが、次々と襲い掛かるパンサークローにハニーの心は燃えていたのです。

・・・って、まぁ、ストーリー的にはよくある「戦隊物」的な展開で、当然正義は勝つわけですが、主人公が最後に愛の力を使うと言うのが多少違うかもしれません(微々たるものですけど)。

実写化にあたっては、マンガ的になるようにコマ撮りした絵をつなげるパラパラ漫画みたいな手法が多用されていて、監督の工夫と褒めたいところですが、アクションとしては嘘くささが目立ってしまい、サトエリのファンという方以外にはあまり響かないように思います。

やはりこの手のマンガの実写化というのは、原作に寄せすぎればつまらないし、かといって離れすぎても嘘っぽさが際立つと言う、映画人泣かせというところのようです。にもかかわらず、2007年にはテレビドラマ版(原幹恵主演)が作られ、2016年には再度映画化(西内まりや主演)されているというのは、一定のコアなファンがいるということでしょうか。

2024年7月6日土曜日

新解釈・三國志 (2020)

ギャグ映画が大得意の福田雄一が監督・脚本した、本当にギャグとしか言いようがないショーモナイ作品です。基本的に大泉洋の素を、そのまま役に当てはめたというだけあって、最初から最後まで主役がぼやきまくるという不思議な映画です。

当然、内容は中国の後漢から三国時代の、各地で多くの人材が名を上げていた時代の歴史書「三國志」を基にしたものですが、勇猛果敢なはずの登場人物をかなりその場しのぎのいい加減な人物として描いているので、いくら「新解釈」とは言え、よくも中国から猛反発を食らわなかったなと思います。

とは言え、いずれにしてもくだらいギャグ満載で、あまりにもドタバタが過ぎてしまったため、有名俳優が大勢出演しているにも関わらず、やはり高い評価は得られていません。基本的にはマニアックな福田ファンとかコアな大泉ファン以外には、ほぼ不要な作品と言えると思います。

蜀を率いる劉備(大泉洋)は超めんどくさがりなのに、部下の関羽(橋本さとし)と張飛(高橋努)から祭り上げられて仕方がなく将軍になっちゃった。一番強い部下は常にかっこつける趙雲(岩田剛典)で、時代考証的絶世の美女である貂蝉(渡辺直美)を、後漢を牛耳っていた暴君、董卓(佐藤二朗)のもとに送り込み、部下の呂布(城田優)を手玉に取って董卓を殺させます。

劉備は軍司として諸葛孔明(ムロツヨシ)を招き入れますが、孔明も劉備に劣らずいい加減な男。劣勢の呉の孫権(岡田健史)と手を組んで、北方で力を強大化している魏の曹操(小栗旬)と対決するように進言します。

長江の赤壁で相対する曹操軍と劉備・孫権連合軍。曹操軍は合戦前の酒盛りで裸踊りで楽しんだため、多くの兵がお腹をこわし疫病が蔓延してしまいます。劉備は疫病のところなんかに行きたくないと撤退してしまうのです。

孔明だけが残り、ずっと向かい風でしたがもう直追い風になるタイミングで火を放てば勝てると言い張るのでしたが、呉の周瑜(賀来賢人)は信用しません。実は孔明の考える作戦は、すべて妻の黄夫人(橋本環奈)の手ほどきによるものだったのです。

他に磯村勇斗、山本美月、山田孝之、西田敏行なども登場しますが、びっくりするチョイ役で広瀬すずまで出演しているのは驚きました。

2024年7月5日金曜日

らんま1/2 (2011)

「うる星やつら」や「犬夜叉」と共に高橋留美子の代表作であるマンガが原作です。最強の男を目指す早乙女乱馬は、水がかかると女になってしまうという特異体質で、女の子としてはけっこう強い天道あかねとともにさまざまにトラブルを巻き起こしつつ成長していくというシリーズ。

最近新たなアニメ・シリーズ製作がニュースになり、再び話題になっています。過去に実写化されたのは一度だけで、日本テレビが2011年に2時間枠のスペシャル・ドラマ(正味95分)として放送しました。劇場用映画ではありませんが、原作を知らなくてもわかりやすい作りで評判は悪くありませんでした。

天道早雲(生瀬勝久)の天道道場を受け継ぐ使命を持つのは、早雲の三女、女子高生の天道あかね(新垣結衣)。何事にものんびりとした長女、かすみ(長谷川京子)、キャバレーで働くお金に目が無い次女、なびき(西山茉希)と暮らしています。

そこへ、早雲の旧友、長い修行生活を送っていた早乙女玄馬(古田新太)が息子の乱馬(賀来賢人)を連れて現れます。二人は修行中に呪われた泉に落ちたことで、水を浴びると乱馬は女(夏菜)に、玄馬はパンダになってしまうという特異体質になっていました。元の姿に戻るにはお湯をかぶらないといけないのです。その呪いを消し去り男に戻るためには和風男溺泉を浴びる必要があり、天道早雲が泉の在りかを知っているために戻ってきたのです。

早雲はあかねと乱馬を結婚させると勝手に決めていたことで、最初は反発するあかねでしたが、和風男溺泉を巡ってマダム・カマンベール(田山涼成)率いる謎の組織に襲われ、しだいに乱馬と心を通わせるようになります。しかし、ついに泉の鍵を奪われてしまうのでした。カマンベールは、いわゆる「おかま」の組織で、世の中の女をすべて男に変えてしまおうという野望を持っていたのです。

あかねにちょっかいを出す先輩に永山絢斗、天道家を見守る小乃東風に谷原章介などが出演していますが、若い俳優さんたちについてはなかなか初々しい場面がたくさんあって楽しめます。特に女乱馬の夏菜がなかなか頑張っていると思いました。

テレビ用ですから、低予算で特殊効果はかなり貧弱ですが、まぁ、最低限のところは抑えているので、ぎりぎり許せる範囲です。せっかくですから、そのまま劇場版とかも作れば面白かったかもしれませんね。

2024年7月4日木曜日

新紙幣


昨日、日本銀行券・・・つまり、お金ですが、20年ぶりに新デザインに一新されたものが発行されました。

何か、まるでお祭り騒ぎみたいなところがありますが、そんなに先を争ってもいずれありふれた存在になるので、まぁ、そのうち実物を手にするまで待てばいいと思います。

最初にお札を意識したのは「聖徳太子」と「板垣退助」でした。それが福沢諭吉、津田梅子、夏目漱石になり、いつのまにか夏目さんが引退して野口さんに交代。板垣さんと岩倉具視さんはにいたっては完全に消滅してしまいました。

ところが、今回の紙幣の顔なんですが、正直、誰? というのは自分の無知だと言ってしまえばそれまでなんですが、名前を聞けば知っていますが、顔までは記憶になかった。

偉人と呼ばれる人は、誰かの主観的評価。歴史は勝者の記録とも言われていますから、万人に同じような価値があるものではありません。特定の人物を紙幣にデザインすると、必ず賛否入り混じるのは当然です。

いっそのこと、富士山だけとか風光明媚な景色だけでもいいんじゃない、という意見ももっともな気がします。

まぁ、キャッシュレスが進む世の中ですから、紙幣の重みはどんどん減っているので、財布の中での存在感は薄れていますから、どれだけの意味があるのかはよくわかりませんね。


2024年7月3日水曜日

ルパン三世 カリオストロの城 (1979)

もはや、古典的名作と呼べそうなアニメ作品。公開当時から大変人気が高かった作品ですが、今でもとても知られている一番の理由は、東宝でアニメ映画製作に携わっていた宮崎駿の初監督作品ということ。

すでにアニメのテレビ放映が始まっていた時期で、映画版としては第2作となりました。ルパン映画としても宮崎作品としても、今でも高い評価を受けています。ちなみにカリオストロは、18世紀のイタリアの詐欺師の名前。金持ちから得たお金を、庶民にばらまいたことでも有名です。

モナコで国営カジノで、ルパン、次元、五右衛門らが盗み出したのは精巧な偽札でした。かれらは、その出所と思われたカリオストロ公国に向かいます。入国したとたんに、カリオストロ伯爵に結婚を迫られ逃げ出したクラリスと出会います。クラリスは亡き大公の娘で、伯爵は摂政として国をわがものにしていたのです。

伯爵の部下に追われるクラリスを助けるルパンでしたが、崖を転落し気を失っている間にクラリスは連れ去られるのでした。意識を取り戻したルパンは、クラリスが遺していった指輪を見て、昔助けてくれた少女だったことを思い出すのです。ルパンは、仲間と共にクラリスを助けるべくカリオストロの城に向かうのでした。

声優はルパン三世を山田康夫、峰不二子ほ増山江威子、次元大介は小林清志、石川五右衛門は井上真樹夫、銭形幸一は納谷悟朗。声優のレジェンドばかりですが、全員がすでに故人となっていて、これだけでも見る、いや聞く価値がある。クラリスはナウシカの声優も務めた島本須美です。

2024年7月2日火曜日

シティ・ハンター (2024)

人気漫画家の北条司が「キャッツ・アイ」に続いてヒットさせた作品で、連載は1985年に始まったので、もうけっこう古い。実写化は香港、フランスなどで行われていますが、本家日本では初めてで、今や飛ぶ鳥を落とすNETFLIXが製作しました。監督は「キサラギ」の佐藤祐市です。

町の始末屋として、裏社会で活動する冴羽獠(鈴木亮平)は、相棒の元刑事の槇村秀幸(安藤政信)と今日も行方不明の妹を探してほしいという依頼の調査をしていました。見つけ出した捜索対象のコスプレイヤーのくるみ(華村あすか)は、冴羽が驚くような身体能力で逃げ出してしまいます。その頃、街では人並外れて狂暴化した人間による事件が多発し、それらの犯人はその数日後にも死んでしまうのです。

槇村は過去の因縁で狂暴化に関する薬を調査していましたが、狂暴化した人間に殺されてしまいます。種村の妹の香(森田望智)は、冴羽に兄の仇を討ってくれと頼み込みます。はじめは相手にしなかった冴羽でしたが、その熱心さに行動を共にするようになります。

くるみをやっと探し出しますが、彼女はローレ化粧品に拉致され狂暴化薬、エンジェルダストの実験台の一人だったのです。彼らは、エンジェルダストを使用しても死なないくるみの血清か必要だったのです。

ローレを操っているのは国際的犯罪組織ユニオン・テオーベで、冴羽と香はエンジェルダストの実験を行っているローレの地下要塞に乗り込んでいくのでした。

裏社会の情報交換をする女刑事に木村文乃、その上司に杉本哲太、ユニオンの幹部に迫田孝也、裏社会のボスの一人に橋爪功などが登場します。

一番の見所は、カメレオン俳優とも呼ばれる鈴木亮平の見事なまでのはじけっぷりです。鈴木亮平が世に知られるきっかけになった「変態仮面」を彷彿とさせるような、下品なバカ騒ぎっぷりには驚かされます。女と見ればデレデレしっぱなしの冴羽獠のキャラクターがしっかり再現されいました。

かなり知られた漫画で、アニメ化もとっくにされているので、実写化ともなると固定したイメージが出来上がっていますが、おおむねファンからも高評価されているようです。冴羽と香がチームを組むことになるきっかけを描いているので、今後、シリーズ化される可能性に期待です。

注) 4月に公開されたばかりなので、紹介しているBlurayはおそらく中国製で正規品ではありません

2024年7月1日月曜日

ルパン三世 (2014)

世界的にも人気のあるマンガ、モンキー・パンチ作の「ルパン三世」の実写版映画。監督はアクション系が得意の北村龍平で、オリジナル・ストーリーの脚本を担当したのは監督とプロデューサーでもある山本又一朗。

原作を雰囲気を忠実に描き出したアニメが有名だけに、どう作っても実写版ともなれば違和感を持たれるのは承知の上で、世界に通用するように国際色豊かに企画された作品になっている・・・のですが、それが予想通り何ともゴチャゴチャ感満載で、どちらかというと低評価の方が多いことで落ち着いています。

配役はなかなかうまい。ルパン三世の小栗旬、次元大介の玉山鉄二、石川五右衛門の綾野剛にというメイン・キャラは見事にはまっている。これはアニメ・ファンからもある程度は受け入れられそうな感じがします。

浅野忠信の銭形警部も悪くはありませんが、問題は峰不二子の黒木メイサ。ルパンを翻弄する美女という役柄で、おそらくファン一人一人がいろいろなイメージを持っていて、誰が演じても賛同を得られるのは難しそうなところ。黒木メイサでは、グラマラス感とかセクシー感という意味では、やや物足りないというのは、おじさんの感想です。

ルパン、次元、五右衛門、不二子、さらに泥棒仲間が加わって、ルパンらが慕う大泥棒の敵討で、敵の要塞に突入してお宝を奪取するというのがあらすじ。ストーリーがごちゃごちゃしていて、詳しく書き出したらきりが無い展開です。

その中で、いかにもルパンらしいカッコよさとユーモアがてんこ盛りになっているわけですが、ただ国際色を意識し過ぎて大多数の方は前半で寝落ちしてしまうかもしれません。

映画が始まってまず最初のかっこいいシーンはルパンから・・・と思ったら、峰不二子と後は誰?これという連中が登場。どうやら、不二子以外は後からルパン一味に参加するということらしく、銭形もまだルパンとは面識がないらしい。まずはルパンとその仲間が実写だと、こんだけカッコよいというところを見たいと言う出鼻をくじかれる。

そして、外国人俳優多数登場で、台詞が日本語、英語、中国語を中心に飛び交うため、いちいち字幕のお世話にならざるを得ないというところも、入り込みにくくする要因になっている。ルパンでさえ日本語になったり英語になったりなので、大変疲れます。

そんなわけで、役者さんたちはご苦労様でしたが、映画としては???という感じは否めません。