本筋の歌についてはどうか? はっきり云って、中居よりはうまいが、わざとらしい歌い方はいまだに素人的だ。演技は、吾郎ちゃんとどっこいどっこい。もちろん、演技派大俳優に比べれば、まだまだ。踊りは吾郎ちゃんに勝つが、東ほどではない。バラエティでは慎悟に負けるかもしれない。韓国語は草薙クンの方がうまい。TOKIOの連中より楽器演奏は下手。きっと車やバイクの運転は、森君の方がうまいだろう。伸長はカッコマンとしてはぎりぎりだろう。
であるが、総合ぶっちぎりの人気なのだ。それは、しゃべり方、身振り手振り、服の着こなしなど、本人から漂ってくるものが引き付けるのだと思う。まさに"Kimura Brand"と呼べるものが出来上がったからなのだ。
デヴューの頃は、ジャニーズのかわいらしい少年の一人にすぎず、ただの「きむらたくや」だった。SMAPに編制('88)されてもしばらくは「その中の一人」だったし、最初に注目されたドラマ出演「あすなろ白書('93)」でも、同じ。
そして、やっとのこと「青いイナヅマ('96)」のヒットが、SMAPの人気に火をつけた。なんと22枚目のシングルである。同じ年にSMAP×SMAPの放送も開始され、ドラマでは「ロング・バケーション」に出演し、一気に頂点にかけあがる。まさに人生の転機、ターニング・ポイント。
ロンバケの瀬名は、そういう意味で"Kimura Brand"の出発点。木村にとって、無理なく入っていける役柄だったのか、最初から木村をイメージしてキャラが作られたかはわからないが、とにかくひた向きな青年像を作り上げた脚本の北川悦吏子の力が大きい。何かをしてあげたいという母性本能をくすぐるような部分と、しっかりとした決断力を持った男らしさが共存していた。今でも木村は瀬名を演じているのかもしれない。その後の木村の役柄は大同小異であり、すでに完成したと言ってもいいのでないか。
問題は、ここからである。"Kimura Brand"が完成し、若者の続きであった木村拓哉も30代後半に入ってきた。このまま40代を迎えてはいけない。本人も、そんなことはとっくにわかっているのだろう。
今年の映画「HERO」は"Kimura Brand"の総集編にして完結編にすべきであろう。英語の台詞の映画に出演する予定があるということで、少しずつ変わり始めていく兆しなのかもしれない。