2023年7月28日金曜日

K2 / 愛と友情のザイル (1991)

逆三角形に突き出たインドの国土の最北部と中国の西方最深部にあるのがカラコルム山脈。その東南に位置し、中国(チベット)とネパールの国境を形成しているのがヒマラヤ山脈です。この地域は、太古の昔、ユーラシア大陸にインド大陸がプレート移動で衝突し盛り上がったために、「世界の屋根」と呼ばれる地球上で最も標高の高い地域となったと言われています。


世界に標高8000mを超える山は14座あり、それらはすべてカラコルム~ヒマラヤ山脈に存在します。一番西から東に名前をあげていくと、

1 ナンガパルバット (8126m)
 初登頂 1953年、登頂者数---人、死亡率20.3%
2 K2 (8611m)
 初登頂 1954年、登頂者数306人、死亡率26.5%
3 ブロードピーク (8047m) K3
 初登頂 1957年、登頂者数---人、死亡率5.2%
4 ガッシャブルムII峰 (8035m) K4
 初登頂 1956年、登頂者数---人、死亡率2.3%
5 ガッシャブルムI峰 (8068m) K5
 初登頂 1958年、登頂者数---人、死亡率8.7%
6 ダウラギリ (8167m)
 初登頂 1960年、登頂者数---人、死亡率15.4%
7 アンナプルナ (8091m)
 初登頂 1950年、登頂者数191人、死亡率31.9%
8 マナスル (8163m)
 初登頂 1956年、登頂者数---人、死亡率9.8%
9 シシャパンマ (8027m)
 初登頂 1964年、登頂者数---人、死亡率8.3%
10 チョオユー (8201m)
 初登頂 1954年、登頂者数3000人以上、死亡率1.4%
11 エベレスト (8848m)
 初登頂 1953年、登頂者数5600人以上、死亡率3.9%
12 ローツェ (8516m) 別名エベレスト南峰
 初登頂 1956年、登頂者数---人、死亡率2.8%
13 マカルー (8463m)
 初登頂 1955年、登頂者数---人、死亡率8.6%
14 カンチェンジュンガ (8586m)
 初登頂 1955年、登頂者数---人、死亡率14.1%

この中で、特に気になるのは、通常の呼び名が無いK2です。Kはイギリス統治時代のインド測量局が19世紀後半につけたカラコルム測量番号というもので、K2は第2号ということ。死亡率ではアンナプルナが上回りますが、K2も登山者の4人に1人が亡くなっており、14座の中でも屈指の難易度を誇ると言えます。

かなり奥地の秘境にあり、パキスタン側からしか登れませんが、それでも急峻な斜面と頻発する雪崩の危険が高く、頂上に立っても下山中に死亡するケースも多い。一度に10人以上の大量遭難も度々起きています。

この映画は、K2を舞台にしているフィクションですが、テーマは性格が対照的な主人公二人の友情であり、あくまでも登山はその背景というところ。監督はフランク・ロッダム、パトリック・マイヤーズの戯曲が原作で、マイヤーズは脚本にも参加しています。

テイラー・ブルックス(マイレル・ビーン)は弁護士で、基本的に好きなことを好きなようにやるタイプ。一方、学者のハロルド・ジェームソン(マット・クレイヴン)は、愛する妻と生まれて間もない息子がいて、家庭を大事にしている。テイラーとハロルドは、登山という共通の目標があり、二人で何度も山に挑戦をする絆で結ばれています。

次の目標に向けて二人がアラスカの岩壁でトレーニングをしていると、登山家として有名なフィリップ・クレイボーン(レイモンド・バリー)らのチームと遭遇。偶然発生した雪崩にクレイボーンのチームは巻き込まれますが、テイラーとハロルドによって、クレイボーン、ダラス(ルカ・バーコヴィッチ)、タカネ(藤岡弘)、ジャッキー(パトリシア・シャーボノー)は助け出されます。

しかし、チームの二人を失ったクレイボーンの目的がK2登頂であることを知ったテイラーは、欠員の補充に自らを売り込み、ハロルドも妻の反対を押し切って参加することになります。しかし、チームとしての和を軽んじるテイラーとダラスは衝突するのでした。

ベース・キャンプからさらに登る途中、クレイボーンは高山病を発症し、しかたがなくジャッキーに連れられてキャンプに戻る。クレイボーンはダラスとダラスが選んだ者に頂上アタックを託すのです。テイラーは自分を連れて行けとダラスに迫りますが、ダラスはタカネを連れて行きました。

残された二人は険悪なムードになる。ハロルドは、自分を置いて一人でダラスについていこうとしたテイラーを非難するのです。そこへ、瀕死のタカネが戻ってきてダラスが死んだと言い残して息を引き取ります。テイラーとハロルドは、あらためて頂上を目指して出発し、山頂に到着することに成功しました。

しかし、下山の途中で天候が悪化してきて、二人は氷壁を滑落してしまい、ハロルドは下肢を骨折して動けなくなってしまうのです。ハロルドは、自分を置いてテイラーだけでも生還してくれと強く頼みます。一度は一人で下山し始めたテイラーでしたが、途中でダラスの遺体を発見し、ダラスのロープや装備品を貰ってハロルドの元に戻るのでした。

この映画の日本での権利はとっくに消滅しているらしく、今では英語版のDVDしか手に入りません。ただ、ネットは便利な物で、映像そのものはストリーミングで見れたりします。また、字幕も英語の物は手に入るので、何とか内容は理解できるというもの。

仮面ライダーの藤岡弘が出てくるのも興味深いのですが、台詞はほとんどありませんし、画面の中心に映るのも最後の死ぬところだけ。すでに「ターミネーター」や「エイリアン2」で人気者だったマイケル・ビーンの、利己的ですが目一杯明るいキャラが目立ちまくっています。

テイラーは、初めはハロルドに「愛は高くつくからいらない(束縛される)」と言い切っていましたが、ハロルドが自分を捨てて助かれと言うと、友を死なせた残りの人生なんて意味が無く、実は自分もハロルドのように愛を手に入れたいということを悟るのです。公開時のキャッチフレーズは「エゴで登り愛で下りる」だったそうで、まさにそういう人間ドラマがうまく積み上げられている感じです。

登山のシーンも、かなり本格的で登山愛好家の人たちからも、高く評価されています。ヒマラヤでのロケが入り、かなり実際に近い映像が素晴らしい。とは言え、さすがにK2に登るわけにはいかないので、雪山のシーンはカナディアン・ロッキーの山中で撮影されています。

2023年7月27日木曜日

エベレスト (2015)

商業登山という言葉があります。正確には公募隊と呼ばれ、各国の登山協会などが適性を考慮して編成する遠征隊と違い、基本的には誰でもお金を出せば応募できるというもの。ベテラン・ガイドによる登山ツアーという色合いが強く、一人ではなかなか準備ができないような高難度の登山でも、時には経験の有無にも関係なく参加することが可能です。


普通の人ではとても払いきれないような高額な費用で、宇宙ロケットや深海探査艇に乗るのも、ある意味性格が似ているところがあります。最近も痛ましい事故がありましたが、普通では見れない光景を見てみたいというのは、大なり小なり誰でも願望としてはもっているものです。

登山に関しては、特に人気なのが世界最高峰のエベレストで、90年代以後、商業登山が急増したため、高地での混雑・渋滞の発生、ゴミ投棄、技量不足などによる様々なトラブルが頻発するようになりました。多くの人に門が開かれた一方で、エベレストではトラブルはすぐに死に直結するだけに、倫理的な問題を含めて議論の的になっています。

エベレストの標高は8848m。8000m以上の高地では、空気中の酸素が地上の1/3となり、普通に人が生存することは不可能で、「デス・ゾーン」と呼ばれています。無酸素登頂に成功する登山家もいますが、一般には酸素ボンベを背負っての登頂が一般的。酸素不足では、軽症では頭痛・疲労・悪心、重症になると肺水腫・脳浮腫を引き起こしただちに下山する必要があります。デス・ゾーンには100体以上の遺体が今でも回収の見込みがないままに放置されており、ある意味登山者のランドマークになっているというのは皮肉なことです。

エヴェレストに登るためには、ネパールか中国のどちらかから入山するわけですが、入山料をそれぞれの政府に払う必要があります。これが百数十万円。ベースキャンプに到着しても、すぐに登るわけではなく、薄い酸素に体を順応させるため試験的な登山を繰り返し、1か月ほどをキャンプで過ごすことになり、この費用が数百万円です。天候の状況によって出発し、第2、第3、第4キャンプを経ていよいよ頂上にアタックとなりますが、もちろん登頂が保証されているわけではありません。

ネパール政府などに払われる公的な費用は公募隊の参加費に含まれ、全部で600~800万円が必要。その他に、個人の装備は高地用の特殊なものが必要となるので、上着、靴、寝袋、テントなど、下手をすると数百万円かかるらしい。一般人でも公募隊に参加してエヴェレストに登れるとは言っても、約1千万円くらいは必要ということ。

エヴェレスト登山史が始まった1922年以降、約100年間で295人が亡くなり、死亡率は3.5%です。ただし商業登山が始まった以降では、死亡率は約1%。登頂成功率は、時代と共に増加し最近では約2/3と言われています。装備品の進歩、登山ルートの開拓・整備などともに、成功率増大に大きく寄与しているのが気象情報の詳細・正確性が格段と改善したことが挙げられます。気象情報が良くなったきっかけの一つになったのが、1996年の商業登山による大量遭難事件と言われています。

1996年5月、ニュージーランドの「アドベンチャー・コンサルタンツ(AC隊、現在でも活動しています)」は公募で集まった人々とエベレスト登頂を目指し、カトマンズに到着します。リーダーのAC隊のガイドはも出産間近の妻を残してきたロブ・ホールで、他にマイク・グルーム、アンディ・ハリス、アン・ドルジェがスタッフとして引率します。顧客は妻の反対を押し切ってやってきたベック・ウェザース、昨年登頂失敗したダグ・ハンセン、取材のために参加したジャーナリストのジョン・クラカワー、7大陸最高峰登頂の最後の仕上げとして参加した難波康子らの8名。

同時に出発を予定してる隊が多すぎるため、ロブ・ホールは、友人のマウンテン・マッドネス隊(MM隊)を率いるスコット・フィッシャーに協力を要請。5月10日、第4キャンプを出発し山頂を目指すも、ダグ・ハンセンは咳き込み遅れ気味で、ベック・ウェザースは視力障碍により途中で動けなくなります。スコット・フィッシャーも、遅れる顧客の世話で疲労がたまり体調を崩していました。

登頂成功後、難波康子はMM隊のガイドと下山、ロブ・ホールはダグ・ハウセンを何とか山頂に導きますが、トラブルの代償は時間の浪費と酸素の枯渇でした。そこに天候が激変しブリザードが発生したため、結果としてホール、ハリス、ハンセン、難波、フィッシャーが死亡します。自力で生還したのはほとんどが途中で断念した者たちで、頂上付近まで到達していた者は、大なり小なり高山病と凍傷により大きなダメージを受けたのでした。

本作は、この遭難事件をできるだけ事実に基づいて映画として組み立てた物。公開当時、流行った3D仕様で作られ、その臨場感はかなりあったと評判です。アメリカとイギリスの合作で、監督はバルタザール・コルマウクルという人。映画ですから、それなりにドラマチックな脚色はあるとは思いますが、結末の悲劇がわかっているストーリーですから、話の展開よりも、それぞれが何故山に登るのか、そしてエヴェレストが本来人を受け入れる場所では無いことを伝えようとしている映画です。

主な出演者は、ジェイソン・クラーク(ホール役)、ジョシュ・ブローリン(ウェザース役、父親はジェームズ・ブローリン)、エミリー・ワトソン(ベース・キャンプ・マネージャー役)、森尚子(難波役)、ジェイク・ギレンホール(フィッシャー役)、キーラ・ナイトレイ(ホールの妻役)などです。ハリウッド映画としては、決定的な人気俳優がいないのは寂しいところですが、ほぼノンフィクションということを考えると許せるところ。

ロケはエベレストはもちろん、イタリアの高地(標高5000m)で行われ、その映像美はただものではない。しかし、さすがにヘリコプターも到達できない山頂のシーンなどは、セットを組んでのCG合成です。それでも、本当にその場にいるかのような臨場感はなかなかのもの。

ただし、山に魅せられた人々の業みたいなものの一端が垣間見えるところは評価できますが、主役は人間を寄せ付けたくないと思っているエベレストなので、人間ドラマとしては今一つ弱い感じはします。とはいえ、エベレストという最も神の領域に近い場所を知るための映画としては、十分に評価できる作品だと感じました。

2023年7月26日水曜日

アイガー・サンクション (1975)

アイガー北壁を舞台にした、クリント・イーストウッドのスパイ・アクション映画。最近レヴューしていますが、アイガーについてちょっと知識を仕入れたので再度登場。

もともとは、イーストウッドの「師匠」であるドン・シーゲルに監督を依頼したものの断られ、イーストウッドが自ら監督することになったらしい。サンクション(sanction)は「制裁」という意味で、ここでは「殺し」のこと。

美術を教える大学教授、ジョナサン・ヘムロック(クリント・イーストウッド)は、かつてアメリカの諜報機関の殺し屋として働いていました。チューリッヒで、旧友のアンリが敵から殺されマイクロ・フィルムを奪われたため、ボスは再びヘムロックを担ぎ出すため美人のジェマイマ(ヴォネッタ・マギー)を使い罠にかけます。

アンリを殺害した相手は、アイガー北壁登山チームの中にいるらしいことはわかっていますが、誰なのかは特定できないでいました。これまでに2度北壁に挑戦し失敗しているヘムロックは、昔の登山仲間、ベン・ボウマン(ジョージ・ケネディ)の再開し登山のための訓練を依頼します。

北壁登攀チームは、隊長を志願する自信家のフレイタッグ(ライナー・ショーン)、山の事しか頭にないアンドレ・マイヤー(マイケル・グリム)、そして若い妻の気を惹くために登山を続けるジャン=ポール・モンテーニュ(ジャン=ピエール・ベルナルド)、そしてベンも基地の世話役として現地に入ります。

北壁登攀は順調に進んでいるように見え、ヘムロックも3人との会話から手がかりを探ろうとします。麓のホテルではジェマイマも見守っていましたが、ボスの連絡係からこの作戦が偽物であることを知らされます。ボスは偽の情報を敵に渡すため、アンリを殺されるように仕向け、情報が本物だと信じさせるためにヘムロックに架空の犯人を追わせていたのでした。

先に上ることしか頭にないフレイタッグの足元から、岩が崩れ落石が発生。運悪くモンテーニュを直撃し、モンテーニュは死亡します。こうなると登攀を中止するしかなく、経験があるヘムロックが呆然とするだけのフレイタッグに代わって指揮を執ることになりました。

しかし、天候が急速に悪化し、岩壁が氷に覆われ下山も難航。マイヤーが滑落し、ザイルに引っ張られてモンテーニュの遺体とフレイタッグも滑落していくのでした。ヘムロックも落ちますが、かろうじて寸前に打ち込んだピトンにかけたザイルによって宙吊りとなってしまいます。

最初に見たのはテレビの洋画劇場で、10代の頃。登山の様子を麓のホテルから望遠鏡で見れるというのが何か不可解でした。さらに、登山鉄道の坑道の開いたところにイーストウッドがぶら下がっているというのも、難攻不落の山に挑むという雰囲気にそぐわない感じがして不思議でした。

しかし、アイガーという山の特徴を調べてみると、なるほどと納得です。普通は登山家は登攀途中を仲間以外に見られることはないわけで、あくまでも登頂は自分のため。ところが、アイガー北壁は、困難が伴うだけでなく、ずっと第三者に見られているという「劇場型」の登山というところが特異的だということ。

この映画の北壁挑戦は、1936年の北壁での悲劇をかなり参考にしていることに気がつきました。上るのが4人で、一人が落石で怪我をして動けなくなる。3人が滑落し、1人がロープで宙吊りになってしまう。そして坑道から救助しようとするなど、まさに史実をなぞるかのようです。

この映画では、当然CGが使われる時代よりも前ですから、クライミング・シーンは俳優が実際に行っています。しかも、イーストウッドの顔が識別できない部分はわずかで、おそらくほぼ全てを自らやっていると思われます。ほとんどが、実際のアイガーで撮影されたということで、相当大変なことになったようです。

ただし、映画としては諜報機関の設定もこども騙しみたいな嘘っぽいところがあるし、あらすじに紹介しませんでしたが、旧敵メロー(ジャック・キャシディ)との絡みも何だか意味不明みたいなところがあって、どうも脚本がこなれているとは言い難いところがあります。どやら原作者が脚本チームに入っているので、そこに問題があるのかもしれません。

前半がベンのもとでのトレーニング、後半がアイガー北壁挑戦とはっきり分割されますが、スパイ・アクションとしては、パーティに敵がいてこそスリルが生まれるのに、映画を見ている側にはあっさりと敵が混ざっていないことをばらしてしまうので、単なる登山映画になってしまったのは残念。

イーストウッドの熱烈なファン(自分みたいな)には、それなりに見所があるし、この映画しか見られないイーストウッドを楽しめるというところですが、普通の映画好きにはあまりお勧めできないかもしれません。

2023年7月25日火曜日

アイガー北壁 (2008)

登山家が目指す山々はいろいろありますが、スイスのアイガーもその一つ。標高は3970mですが、有名にしたのはその北側の切り立つ1800mの断崖絶壁です。雪と氷に覆われた北壁の登攀は困難を極め、1934年以来多くの挑戦を拒み、多くの死者を出しています。近年は、登山道具の進歩もあり、3時間以内での登攀成功者も出現していますが、戦前は半日以上かかるのが当たり前と考えられていました。

アイガーの山中には、20世紀初頭に建設されたユングフラウ鉄道のトンネルが貫通しています。トンネルの途中、アイガーヴァント駅では絶壁の中ほどに位置した展望所が設けられています。また、トンネル内の掘削した土砂を捨てるための横坑道が壁面に開通しています。またアイガーの特殊なところは、麓の村から北壁全体が一望にできるところで、登山者がいるとホテルは見物客で溢れかえるのです。

この映画は、1936年に実際に起こった悲劇をもとに作られたドイツ映画です。監督はフィリップ・シュテルツルという人で、詳細は不明。しかし、山岳映画としては、登山をする人だけでなく映画好きにも大変高い評価を受けています。

1934年、ベックとレーヴィンガーが初挑戦で、二人とも滑落死。1935年、メーリンガーとゼドゥルマイヤーが凍死。そして、ヒットラー率いるナチス・ドイツは国威高揚のため1936年のベルリン・オリンピックで、北壁初登頂成功者に金メダルを送ることにします。

1936年7月、ドイツのトニー・クルツ(ベンノ・フユルマン)とアンドレアス、ヒンターシュトイサー(フロリアン・ルーカス)、そしてオーストリアのエドゥアルド・ライナー(ゲオルク・フリードリヒ)、ヴィリー・アンゲラー(ジーモン・シュヴァルツ)は、それぞれ麓の町で登攀準備を開始します。トニーとアンドレアスとは幼馴染のルイーゼ・フェルトナー(ヨハンナ・ヴォカレク)は新聞記者として、その場に取材に訪れていました。

7月18日未明、これまでの登山の記録を詳細に書き溜めたノートをルイーゼに託し、トニーとアンドレアスは月明かりを頼りに登攀を開始しました。気がついたオーストリア隊の二人も後を追いかけます。しかし、間隔をあけていなかったオーストリアのヴィリーは落石で負傷してしまいました。

半ばを過ぎた頃には日が暮れ、彼らはビバーク(野営)します。翌朝、再び登攀を再開しますがガスが深く視界は不良。麓からも、彼らを確認することはできません。途中から協力して登攀していた4人でしたが、ケガの影響でヴィリーは次第に動けなくなり3300m地点で再びビバークせざるを得なくなります。

そして、彼らは登攀を断念し下山を開始しますが、天候が悪化し、動けないヴィリーを連れての下山ははかどるはずもなく、3100m地点で3回目のビバーク。そして7月21日、一向に回復しない吹雪の中、彼らを落石まじりの雪崩が襲い、エドゥアルドは即死、アンドレアスとヴィリーは宙づりになってしまいます。そして、アンドレアスはトニーを助けるために自らザイルを切りヴィリー共々落ちて行ってしまうのでした。

もちろん、結末はすでに史実としてはっきりしていて、アイガー登攀史上最悪の悲劇として名を残しています。北壁からの初登頂は1938年に成功したというテキストが表示されて、映画はエンドロールとなります。

ハッピーエンドではなく、重苦しい余韻を残しますが、危険を承知で山に挑戦する人々をダイレクトに表現していて、何か圧倒的な熱量を感じることが出来る映画です。

21世紀のドイツの映画は、過去の失敗を正当化したり華美な脚色することなく、しっかり事実を伝えようとする姿勢があるように思いますし、この映画もそのような作品と言えそうです。

2023年7月24日月曜日

山 (1956)

タイトルは、そのものずばり「The Mountain」です。監督は「ケイン号の叛乱(1954)」のエドワード・ドミトリク。たぶん小学生の時にテレビの洋画劇場で見て、映画のジャンルとして山岳物が好きになった最初の作品です。

山の麓の村で牧畜をしている中年のザガリー(スペンサー・トレイシー)は、山の唯一の単独登頂を成し遂げた山岳ガイドでしたが、10年前に案内していた登山客が墜落死してから、「山から嫌われた」という理由で山に入ることを辞めてしまいました。ザガリーが親代わりに育てた歳の離れた弟のクリス(ロバート・ワグナー)は、血気盛んな若者で貧乏が嫌で兄と対立します。

冬が近い時期、山の頂上にインドからの旅客機が墜落します。当局は、早速救援隊を組織して、地形的に登りやすい北側から山に入りますが、案内をしていたザガリーの友人が事故で亡くなり、登頂を断念しました。

クリスは乗客の金品を手に入れればこんな暮らしから離れられると考え、雪の少ない南側岩壁から山に入ると言います。当然、ザガリーは大反対しますが、単独でも行くと言い張る山に未熟なクリスに押し切られてしまうのでした。

二人はそそり立つ絶壁を必死に登っていきますが、クリスはあまりの困難さに音を上げてしまいます。しかし、ザガリーはいつのまにか、忘れていた山を制覇することに夢中になっていました。ついに事故機を発見したクリスは夢中になって金品を漁り、ザガリーはその姿を呆然と見ているしかありませんでした。

しかし、誰もいないと思われていた生存者を発見します。ザガリーは生存者を連れて帰ることにしますが、悪行が知られることを怖れるクリスは生存者の首を絞めようとします。ザガリーはクリスを殴り倒し、生存者を即席のソリに載せて下山を始めました。

途中でクレパスの雪橋で、ザガリーに追いついたクリスは、ザガリーが止めるのを聞かずに渡り始め、崩れた雪橋と共に深いクレパスに落下してしまいます。村にたどり着いたザガリーは、自分が金に目が眩み弟を無理やり連れていったが、弟は死んだと必死に説明するのです。しかし、誰もザガリーの嘘を信じることはありませんでした。

この映画にはモデルとなった実話があります、1950年、インド航空の旅客機が、アルプスのモンブランに墜落し48名が亡くなった事故があり、2013年に付近の氷河から大量を宝飾品が発見されたというニュースがありました。事故を基にフランスのアンリ・トロワイヤが著した小説をヒントにしています。

50年代の登山ですから、今から考えるとロープ、ピトン(岩の割れ目に打ち込む道具)、カラビナ、ピッケル程度の道具しか使わず絶壁を上るというのは無謀に思えるのはしょうがない。それでも、スタントが入っているとは思いますが、クライミングはなかなか見応えがあります。セットでの撮影もあるとは思いますが、遠景で雲が流れていること、明らかな合成っぽさが感じられないことからも、それなりの岩壁で撮影されているものと思います。

名優スペンサー・トレイシーは、50代半ばでクライマーとしては多少無理な設定のように思いますが、勤勉実直なザガリーという人物としてはまさに的を得たキャスティング。どんなに悪い事を企む弟でも家族として守り切ろうとし、登り始めれば山男としての本能が目覚める男は、トレイシーの持つ雰囲気があってこそ伝わって来るというものです。

ロバート・ワグナーの出世作であるテレビ・シリーズ「スパイのライセンス」は1968~1970年(日本では1969~1971年)ですから、この映画ではまだまだ駆け出しの20代半ば。イケメンの優男ですが、金が欲しくて仕方がない、無理やり登り始めますがあまりの辛さに下山したくなるというどうしようもない男を演じます。

映画の中で背景に見える山々は、モンブランも含まれるシャモニーの景観。明確にはなっていませんが、アルプスが舞台ということ。おそらく、これが当時なリアルな登山であったのかと思わせますし、登山家の心情も見えてくる秀作です。

2023年7月23日日曜日

梅雨明け


昨日、気象庁が関東地方の梅雨明けを発表しました。

平年より3日遅いのだそうで、今年の梅雨は長かった・・・・って、確かに今週は数回、わずかな降雨がありましたが、それぞれがかなり狭い範囲に限定した短時間のものでしたからね。

ほぼ、この2週間は雨らしい雨はありません。横浜の降水量を調べてみると、5月の合計が220.5mm、6月だと333.0mmだったのに対して、7月は昨日までで31.0mmしかありません。

雨が降る降らないに限れば、実質的に7月12日前後の梅雨明けと言ってかまわない状況だと思いますし、そのあたりから体温を上回る熱波が始まっています。となると、平年よりも1週間くらい早い梅雨明けというのが、感覚的には納得できる。

そもそも、梅雨明けの基準は何?

梅雨明けは、曇りや雨の多い時期から、晴れが多い時期への「移り変わり期間(5日間)」の中間の日としているらしい。今年は雨が降りそう、梅雨前線がまだあるということで、ずるずるとここまで延びたようです。

まあ、どうでもいいですが、こどもたちは夏休みが始まりました。すでに各地で、痛ましい水難事故が多発していますし、熱中症のニュースも連日耳にしますので、くれぐれも安心・安全に夏を楽しみましょう。

2023年7月22日土曜日

北海道ラーメン きむら 初代 @ たまプラーザ


ラーメンと言えば、ここ。いつもの初代に、昨年末以来に訪問。

今回、気がついたのは、今まで現金券売機だったのが、クレジットや各種カード払いが可能なシステムが導入されていたこと。時代ですねえ~

それはさておき、この店は売りは「味噌」で、一番のお勧めは辛味噌なんですが、辛いと言っても、普通の味噌ラーメンに最初から七味を入れておいてくれたくらいで、こどもでも平気な程度。

前回は、表面が真っ赤に染まる激辛の鉄火麺に挑戦。何とか美味しさを保ちつつ汗だくになる辛さなので、激辛好きの人からすれば、ほんの序の口かもしれません。でも、ここで止めている節度を評価したい。

今回は、担々麺。あれっ、担々麺はいつからあったんだろう。最近追加されたのかもしれません。担々麺も好きですから、気がつけば食べないわけにいきません。

トッピングは定番。挽肉そぼろ、青梗菜、長ネギ、メンマ。見た目は特徴的な感じはしません。色はやや赤い濃い目かな。

まずスープを一口。濃いめの色の正体は、どうゆやら味噌らしい。イメージしていた担々麺より、明らかに味噌味感があります。さすがは初代。

そこへ芝麻醤が、かなり多めに入っている感じ。スープのドロっとした感じはトップクラスではないかと思います。

辛さはけっこう強い。担々麺としては、こちらもトップクラス。辛味噌よりも辛く、鉄火麺ほどではないにしても、それに迫る辛さかもしれません。

・・・と書いていたら、6年前にすでに食べていたのに気がつきました。何ともお恥ずかしいしだいです。まぁ、その時も高評価なので良しとします。

2023年7月21日金曜日

自宅居酒屋 #73 チキンシュニッツェル


正しくはチキンシュニッツェル風なんですが、鶏ムネ肉を薄く延ばして焼くだけなんで、火の通りも早くすぐ食べれるのが嬉しい。

チキンシュニッツェルはドイツの定番。最初にムネ肉を、包丁を水平に入れて半分開きます。そしたら、後は棒とかで叩いて出来るだけ薄く延ばします。割れないように注意しながら、瓶でやってもできます。

今回はちょっと小ぶりのムネ肉でしたが、それでも普通の26cmのフライパンにいっぱいまで広がるくらいになりました。厚さは3~4mmくらいでしょうか。

軽く塩コショウをふったら、全体に小麦粉をまぶす。あとはフライパンで焼くだけ。本格的なシュニッツェルでは、小麦粉を振ったら卵液にくぐらせパン粉をつけて、いわゆるカツレツにするようですが、カロリーが気になるので省略しました。

味付けは各自でいろいろ変えてもOK。醤油、にんにく、生姜などを使って唐揚げ風にするのもありです。

両面が焦げれば出来上がりで、両面を数分間焼けばいいのでお待たせしません。

2023年7月20日木曜日

ホワイトアウト (2009)

南極を舞台にして、南極で初めて殺人事件が起こるというサスペンス映画。監督は「ソードフィッシュ」のドミニク・セナ、主演が「アンダーワールド」のケイト・ベッキンセイルですから、けっこう期待してしまいます。

南極にあるアメリカのアムンゼン基地で、保安官として2年間の勤務を終え3日後に帰ることになっていたキャリー・ステッコ(ケイト・ベッキンセイル)は、氷原に変死体を発見します。身分証から、遺体はアメリカの地質学者、ワイズと判明し、状況から殺されたものと考えられました。ワイスらのキャンプは音信不通で、ロシアのヴォストーク基地からワイズと一緒のキャンプにいたムーニーから、「ここに来ればすべてわかる」と連絡が入ります。


パイロットのデルフィ(コロンバス・ショート)と共にヴォストーク基地に到着したステッコは、ムーニーが殺害されるところに居合わせ、犯人から襲われますが、何とか逃げ延びました。翌朝、あらためて現場に行くと、国連の捜査官と名乗るロバート・プライス(ガブリエル・マクト)に出くわします。

ワイズらのキャンプに行くと、大量の爆薬が準備されていて、地質調査と称して何かを捜索していたことがわかります。三人はその場所に行くと、氷の下に50年前のロシアの飛行機の残骸を発見します。中には、数人の遺体があり、何らかの理由で機内で殺し合いになり墜落したものと推定されました。

ワイズは飛行機が運んでいた物を持ち出し、飛行機で戻る途中で飛行機から突き落とされたのです。アムンゼン基地に戻ると、所長は殺人犯がどこかにいる危険を考え、嵐が迫る基地を閉鎖し全員の退去を決めていました。ステッコの左手の指は凍傷で壊死しているため、医師のフューリー(トム・スケリット)によって切断されます。

飛行記録が消去されていた機のパイロットを探していると、パイロットはムーニーを殺しスコッテを襲った男、ラッセルによって殺害されてしまう。輸送機が飛び立ち、ラッセルも小型機で逃亡しようとしていました。スコッテとプライスは猛吹雪の中、ラッセルと格闘となり倒します。基地に残されたのは、スコッテ、プライス、デルフィ、フューリーの4人となり・・・・

極寒の南極・・・撮影はカナダで行われたようですが、かなり厳しい自然環境の中での映像はなかなかのもの。ストーリーとしては、殺人事件を謎を追いかける警察官の話としてはそれほど目新しい物ではありません。

登場人物の深みを出すために、スコッテの過去のトラウマが、何度かフラッシュバックするのですが、作り手の気持ちはわかるのですが、一度で十分という感じがあります。それより、カットされた映像を見ると、何で突然そうなるのという部分がわかるので、多少編集に難があるように思います。

とりあえず、ケイト・ベッキンセイルのファンには楽しめる映画だと思いますが、魔物とかは出てこないのであしからず。

2023年7月19日水曜日

さぁんじゅうきゅうどお~


昨日です。いや、さすがに摂氏39゚cというのは、人間の生息する地域としては限界としか言いようがない。

アメリカのグランドキャニオンじゃ50゚cとか言ってますが、元々人が住んでいる場所じゃない。

鬼のような暑さで、直射日光に当たって外を歩くなんて命知らずとしか思えません。もう、こうなると、40゚cでも不思議じゃない感じです。

それでも、気象庁はかたくなに梅雨明け宣言をしない。確かに東北では豪雨となって、けっこうな被害が出たりしていますから、簡単に梅雨明けとは言えない諸事情があるのだろうことはいたしかたがないと思います。

ですから、勝手に宣言してしまいましょう・・・梅雨はもう1週間前に明けてます!!

今年の関東地方の梅雨明けは7月10日でどうでしょうか。今後、雨がふったら、それは戻り梅雨ということでいいんじゃないでしょうか。



2023年7月18日火曜日

ホワイトアウト (2000)

雪に閉ざされた、ある意味密室状態の日本最大のダムを舞台にしたクライム・サスペンス。原作は真保裕一、監督は若松節朗。ホワイトアウトとは、吹雪によって周囲の視界が極端に悪くなり、自分の居場所が識別できなくなる状態のこと。

日本最大の貯水量を誇る新潟県奥遠和ダムのスタッフ、富樫輝男(織田裕二)はダムの近くの遭難者の救助に同僚の吉岡和志(石黒賢)と共に向かいます。しかし、猛吹雪の中、ホワイトアウトが発生し吉岡が亡くなりました。

3か月後、吉岡の婚約者、平川千晶(松嶋菜々子)は、吉岡を理解するため奥遠和を訪れますが、そのタイミングでテロリストグループの襲撃を受け、他の運転員らと共に制御室に監禁されてしまいます。テロリストの中心人物は部隊長の宇津木(佐藤浩市)、ブレインの笠原(吹越満)、暴力的な戸塚(橋本さとし)ら。彼らはダムとの交信手段をすべて遮断し、特殊な無線によって50億円を要求してきました。

たまたま外の巡回に出ていた富樫は異変に気付き、ダムに戻りますがテロリストの攻撃に遭い、事態を把握します。吉岡を亡くしたことで、今度は仲間を置いていかないと決意した富樫は、知り尽くした発電所内で密かに戦いを始めるのです。

戦闘訓練を受けたことが無いのに富樫が頑張り過ぎるという批判的な意見も多々あります。映画という限られた時間内で、ヴィジュアルとして富樫の地の利を見せることはそれなりに行われており、映画としての大袈裟感はありつつも必ずしも嘘とまでは言えないところで描いているように思います。

宇津木の仕掛けたトリックは、知った上で見てもちょっとわかりにくい。笠原、戸塚らの会話にヒントがあったりしますが、あまり親切とは言えません。そのあたりも、評価が分かれるポイントになっていそうです。

奥遠和ダムは、原作では奥只見ダムがモデルとなった架空のもの。実際の撮影は黒部ダムが使用され、ロケはかなり過酷だったようです。CMで印象的だった、マシンガンを持つ松嶋菜々子、運転員の高橋一生の若い姿も今となっては見物かもしれません。

2023年7月17日月曜日

バーティカル・リミット (2000)

アメリカ映画らしく、ド派手な山岳アクション映画です。公開当時、テレビで絶壁の大ジャンプのシーンがCMで流れまくったので覚えている人もいるんじゃないかと思います。

主人公は兄と妹。登山中に父親を死なせたトラウマを抱えているという設定。兄のピーター・ギャレット(クリス・オドネル)は、山岳写真家となり登山からは遠ざかり、妹のアニー・ギャレット(ロビン・タニー)は著名な登山家として活躍するようになりました。

アニーは、自分の企業宣伝のためにK2登山を計画したエリオット・ボーン(ビル・パクストン)の隊に参加します。たまたま仲間がケガをしたため、ピーターは彼らのベース・キャンプに退避したため、アニー、ボーン、著名な登山家トム・マクラーレン(ニコラス・リー)らが出発するのを見送るのでした。

しかし、予想と違い天候が急速に悪化したため、トムは下山を進言しますが強引なボーンに押し切ら気てしまいます。仲間が倒れていく中、アニー、ボーン、トムの三人はクレパスに転落し雪崩によって閉じ込められてしまうのでした。

無線で事態を理解したピーターは、パキスタン軍からニトログリセリンを譲り受け、クレパス周囲の雪氷を爆破して取り除くことを考えます。決死の志願者と共に遭難場所に向かいますが、三人が高山病で肺水腫を起こすことから命のタイムリミットは22時間。しかし、普通に登っては間に合わない。

ピーターは、最短ルートを知るベテラン・ガイドのモンゴメリー・ウィック(スコット・グレン)に同行を依頼します。ウィックの妻は、かつてボーンの登頂のガイドをしていて亡くなっていました。途中で、ウィックは妻の凍死体を発見し、ボーンが妻を見捨てたことを確信します。

6人で救助に出発するも道中は難攻し、雪崩やニトログリセリンの暴発によって、ピーター、看護師のモニク・オーバーティン(イザベラ・スコルプコ)、そしてウィックの三人だけが、やっと目標地点に到着したのです。

90年代以降、世界の名峰を制覇するには莫大な費用がかかることから商業登山と呼ばれる、スポンサー付きの挑戦がしばしば行われるようになりました。そのため、十分な登山経験が無くても山に入り、1996年のエヴェレスト大量遭難事故などが引き起こされていたのです。

この映画では、ザイルにぶら下がった状態で全員が墜落死するか、下の者が犠牲になってザイルを切るのかという登山家にとって究極的な状況がテーマとしてあります。また二次遭難によって、さらに多くの犠牲者を出すことを是とするのか非とするのかという問題もある。多くの山岳映画は煮詰めれば、だいたいこのあたりに行き着くと言うことができます。

ただし、ここでは他人を犠牲にして生き残ろうとするボーンという、およそ登山家の風上にも置けない人物と、密かにボーンの本性を暴こうとするウィックという二人をからめることで、サスペンスとしての面白みを強くしている点が特徴的です。

ただし、ニトログリセリンを持ち出すところからして、かなり無謀な展開であることは間違いなく、ロケ主体の本物の臨場感を持った雪山アクション映画として楽しむのが正しいように思います。

2023年7月16日日曜日

クリフハンガー (1993)

クリフハンガーとは連続活劇の最高に盛り上がるシーンのことで、登山では崖にぶら下がった状態を意味する言葉。「ロッキー」と「ランボー」のシリーズが一段落したシルベスター・スタローンが、新境地を目指していろいろ挑戦をしていた時期の作品。

ロッキー山脈の救助隊員であるゲイブ(シルベスター・スタローン)は、遭難した同僚で親友のハル(マイケル・ルーカー)とその恋人の救出に向かうが、恋人を墜落死させてしまい山を去ってしまいました。

1年後、ゲイブは同僚で恋人だったジェシー(ジャニーン・ターナー)を連れに山に戻った時に、ちょうど遭難救助の要請が入りハルが一人で出動。ジェシーはゲイブにハルを助けてあげて欲しいと説得します。実は大量の紙幣を運ぶ財務省の飛行機をハイジャックした一味が、計画に失敗し飛行機が雪山に不時着、紙幣の入った3つのトランクはあちこちに落下させてしまったのでした。

ハルと合流したゲイブが墜落現場に着くと一味のボス、冷血漢のクアレン(ジョン・リスゴー)はハルを人質にしてゲイブにトランクを取りに行けと命令します。しかし、雪崩によって一つ目のトランクを失い、一味はハルを連れて次の目標に向かいました。

ゲイブは心配して山小屋にやって来たジェシーと合流し、一味とは別のルートで二つ目のトランクにたどり着き、中身が欲しければハルを開放しろとメモを残しました。3っつ目のトランクもゲイブに先に奪われてしまったクアレンは、救助に来たヘリコプターを奪い、連絡のため下山途中のジェシーを拉致するのでした。

と、まぁ、ストーリーはシンプルな、いわゆる山岳アクション物です。ところどころで、明らかにスタローン自ら危険なクライミングをしているシーンがあり、アクションスターとしての面目躍如、と言いたいところなんですが・・・

対決シーンになると、場合によっては明らかなスタジオ撮影ですし、雄大な背景が写らない人物の近接撮影が中心になるので、山岳映画というよりは、都会ではないところでのアクションという感じになってしまうのが惜しい。まぁ、しょうがないと言えばそれまでですけど。

全体のテンポは悪くないので、クライム・サスペンスとしてはまぁまぁの出来。ただ、山の中では、そこを知り尽くす救助隊員の方が圧倒的に有利なのに、始終やや後手に回っている感じがもどかしい。ゲイブのトラウマも、最終的には本筋への影響はあまり感じないので、無くても困らない話のように思います。


2023年7月15日土曜日

エヴェレスト 神々の山嶺 (2016)

山に見せられた登山家の名言として広く知られている「何故登るのか」という問いに対する答えで、「そこに山があるから」というのがあります。これはイギリスの登山家、ジョージ・マロリーの言葉。正確には「そこに(エヴェレストが)あるから」とのことですが、登山家の普遍的な心情を端的に表していることは間違いない。

エヴェレストの初登頂は1953年、イギリス人のエドモンド・ヒラリーによって成し遂げられますが、マロリーは1924年にエヴェレストに挑戦し消息を絶ちました。1999年に75年を経て遺体が発見されましたが、彼が登頂に成功したかはいまだに謎とされています。

さてこの映画は、夢枕獏による小説が原作で、マロリーが所持していたカメラを発端にしていますがフィクションです。監督は平山秀幸、脚本は加藤正人。ネパールでのロケ、特にエヴェレストでのシーンはかなり本格的で、山岳映画ファンには見応えのある作品です。

山岳写真家の深町誠(岡田准一)は、ネパールの首都カトマンズの道具屋でマロリーが所持していたカメラを発見します。それは死んだと思われていた孤高のクライマー、羽生丈二(阿部寛)から盗まれた物でした。日本に戻った深町は、羽生の足跡を調べ、かつて羽生を尊敬し一緒に登攀中に滑落死した岸文太郎(風間俊介)の妹、岸凉子(尾野真千子)を伴って再びネパールに向かいます。

そして、やっと探してあてたのは、死の寸前を助けてくれた現地のシェルパの息子として暮らす羽生でした。羽生は、成し遂げられなかったエヴェレスト南西壁冬期無酸素単独登頂に挑戦しようとしていました。深町は、彼の姿を写真に撮ろうと同行を願い出ます。

深町の何故登るのかという問いに、羽生は「ここに俺がいるから」と答え、ついてくるのは勝手だが、お互いに干渉はしないと言います。しかし、深町が落石で宙づりになると、危険を顧みずに助けてくれるのでした。羽生は、これで岸への借りはチャラだと言います。

さすがに深町には垂直に切り立つ南西壁を上ることはできず、遠方からシャッターを切るのが精一杯でした。しかし、天候が急変し、羽生の姿を見失います。そして羽生はキャンプに戻って来ることはありませんでした。

憔悴して日本に戻った深町は、羽生が山に登る本当の答えを知るために、もう一度エヴェレストに行くことにします。涼子も、そこまで命を賭ける価値があるのか自分の目で見て納得したいと同行することにしました。

そして、シェルパの案内で登山を開始した深町は、シェルパや涼子が天候の悪化のために下山するように無線で連絡するのを無視して登り続けるのです。強風と吹き付ける雪に阻まれ、深町は岩の裂け目に何とか避難するのですが、そこで彼が見つけたものは・・・

山の映画としては、迫力満点です。ただし、人間ドラマとしては、羽生がそこまで山に登る意味が描き切れているとは思えない。当然、写真家の深町が単独でエヴェレストに挑戦しようというのも無理があります。ましてや、ベースキャンプまでですが、普段登山をしていない涼子がついてくるのはさらに理解しにくい。

まぁ、エヴェレストという世界で最も神々に近い場所に憑りつかれた人々の物語としては、一定の評価はされてもいいように思います。ただ、やや無謀すぎる登山は、受け入れにくく、ほとんど岡田准一、阿部寛の頑張っている姿しかない映画です。

マロリーのカメラについては、きっかけに過ぎないので、あまり重きを置く必要はないと思いますが、最後にマロリーの謎みたいなところに一定の解釈を出しているのはサービスのし過ぎかなというところ。

少なくとも登山の好きな方、山岳映画が好きな方は見ておいて損はありません。